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詩小説 『カメレオンが書く時間』 #シロクマ文芸部【点】


 書く時間
 俺は緑色のアプリをタップする。
 
 
 足立あだちくんって優しいよねと評される度に
 少し複雑な気持ちになるのは

 俺が本当は誰のことにも興味がなく
 平穏に物事を進めるために

 相手が喜びそうなことを
 すばやく察知して行動している
 自覚があるからだろう。

 自分がどうかではなく
 どう行動すれば周りの人が
 いかに心地良く過ごせるか。

 それが最優先の俺は
 不穏な空気を感じたら

 カメレオンのように
 いくらだってその人の求める姿になれる。

 そこに俺の意思や意見は
 別に反映されなくても構わない。

 『明日のデートどこ行く?』

 最近 付き合い始めた彼女からの
 メッセージに俺はその女性の好みを
 思い浮かべる。

 かわいい顔して意外と
 呑兵衛のんべえなんだよな。

 だけど、ザ・居酒屋ではなく
 お洒落な雰囲気があるような店の方が
 たぶん好き。
 

 「このバルなんてどう?」


 SNSやTVで話題の店を
 わざわざ記録するようになったのは
 いつからだったか。

 気がついた時にはその人に応じた店が
 すぐ見つかるように事前に準備するのが
 当たり前になっていた。

 『いいじゃん! そこにしよ!』

 メッセージから伝わる好感触に
 ほっと胸を撫で下ろす。

 あとは明日の俺に任せた と
 スタンプを押してアプリを閉じる。


 とりあえず服だけでも決めとくか……

 俺はクローゼットを開くと
 彼女が喜びそうなテイストの
 コーディネートを組み立てた。


 前々回だったかな? みなさんの消えた鍵のお題の作品を読んで、書いてみたいなと思っていたものを紡いでみました。

 つづきはこちらとなります。

そしてみなさんの作品も読みに行きますね💨

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