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『執念第一』 #毎週ショートショートnote【ブラック編】

 駅の構内を歩いていたら「執念第一」という謎の標語が柱や壁にデカデカと貼られていた。

なにそれ、馬鹿馬鹿しい。

そう心の中でぼやいたと同時に黒服の男とぶつかり、腹部に鋭利なものが突き刺さる。患部が焼けるように熱くなり、ドクドクと自分の血液が滴るのを感じながら、私は意識を手放した。

「篠田さん目覚めました?」

そこは病院のベッドの上…ではあったが、天井にまたしても「執念第一」という言葉が掲げられていて痛みよりも薄ら寒さを感じる。

「天井に貼られてるアレって…」
「昨日のニュース見てませんか?」

看護師曰く、昨日政府が自殺予防策として生きる執念を感じられない人を見つけたら致命傷に至らない程度に暴行してもいい、というなんとも恐ろしい政策を発表したらしい。

「篠田さん良かったですね。これで生きる執念が芽生えましたね」

確かにある程度の執念がなければ、人は生きる気力すらなくなる。

しかし今後暴力が横行するであろうこの世界に、私は絶望を覚えた。


 もしも「執念第一」という標語が実際にあったら、と考えて書いた【ブラック編】です。こんな世界には絶対なってほしくないですけどね…

 お気に召した方は良ければ、こちらもどうぞ。ややマイルドです。(主観)

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