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障害者雇用の業務切り出しのスケジュール管理方法をご紹介(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~

はじめに(チームより)

「こどもたちのために、日本を変える。」事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、こども・子育て領域の社会課題解決活動と価値創造を行う国内最大規模のNPOである「認定NPO法人フローレンス(詳しいご紹介はこちら>>)」において、総務関連チームで障害者雇用スタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ハック」をご紹介しています。

フローレンスの障害者雇用についての視察や講演などの問い合わせは、 https://florence.or.jp/contact/ の取材・広報申込みフォームよりご連絡ください。


▼本日のお悩み
「障害者雇用で切り出し業務が増えたのは良かったのですが、1日に複数の作業を行わなければならなくなり、サポート担当が行うスケジューリングに時間がかかるようになりました。スケジュール管理方法や手順を教えてください」

お仕事ハック①スケジュールを午前と午後に分ける

障害者雇用を進める時に他部署からの「業務創出・切り出し」は欠かせません。しかし、他部署から切り出した作業が多くなりすぎて、障害のあるスタッフをサポートする社員のスケジュール管理に労力がかかる、スケジュールが上手く回らなくなるという問題が発生します。

もちろん、障害者雇用のスタッフ自身でスケジュール登録や管理も出来れば問題ないのですが、スケジュール管理が苦手なスタッフには、一定のサポートが必要となります。

フローレンスの障害者雇用チームでも、全社から集めた多種多様な「業務の切り出し」をどうスケジュールに組み込むのか悩んできました。

当初は、最低でも週1度は作業がある仕事が多く、最初は1つの作業毎にスケジュールを登録していました。

例えば、

のように、週に1度、繰り返しのスケジュール登録をしておけば良いのですが、月に1度しか行わない作業や、毎週工程が違う作業が増えてきて、時間調整ややることが複雑化し、1つの業務の仕事の時間を変更すると、他の業務に影響がでるなど、管理が複雑化してきました。

そこで、下記の画像のように、「午前」と「午後」の予定だけを登録し、スケジュールのメモ欄や概要欄に第1週目から4周目にやること、時間帯でやることを細かく書いて一覧化するようにしてみたところ、業務調整がしやすくなりました。

また、下記の画像のように、作業工程やマニュアルが変更になったり、作業日程の変更があったりした場合にも、全てスケジュールに記載することで、常に覚えていなくても、スケジュールを見れば間違わないようになりました。

お仕事ハック②スケジュールを組むこともマニュアル化する

さらに複雑な作業になってくると、イレギュラーで複数日行う業務も発生してきました。

例えば、フローレンスの障害者雇用チームが他部署から切り出している業務で

(1)保育スタッフの腸内細菌検査(検便)を検査会社に送る
(2)(1)の作業日から5営業日後に検査結果の提出管理をする

という作業があります。

「②5営業日後に検査結果の提出管理をする」作業は、①の作業日によって②を行う日が異なってきます。これを、サポート担当者がスケジュール管理をするのは煩雑になるので、作業するスタッフが自分でスケジュール登録をすることにしました。

下の画像のように、①の作業のマニュアルの最後のステップに「上記までの作業が終わったら、スケジュールを登録する」というステップを設けました。

5営業日の数え方や、スケジュールを登録する時間帯もマニュアルに記載し、登録に困らないようにしています。

お仕事ハック③スケジュールを細かく設定する

障害のあるスタッフが、自分のスケジュールも登録できるようになっても「沢山やることがあって、どれが優先かわからない!」となる場合もあるでしょう。

障害があるスタッフの場合、作業を依頼されると、締切日を考えず「優先対応しなきゃ!」と思いがちで、依頼された作業で頭がいっぱいになってしまうことが多いです。

ある障害者雇用のスタッフから「どれが優先順位が高いかわからず、あせってしまう」と相談がありました。

スタッフのスケジュールを見ると、今日の作業として5つの作業予定が登録されており、今日の稼働時間では間に合わない状態でした。

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<本日(7月1日)の作業予定>
1.社内報の校正
2.研修のアンケート作成
3.スタッフ自身の有休申請
4.スタッフ自身の交通費申請
5.本日の定常作業
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そこで、登録されている作業の締切を決めて、細かくスケジュールを設定し直すことにしました。

1.社内報の校正

1週間後(7月8日)までに校正してほしいと依頼があった→
2営業日前(7月4日)までに作業を終えたい→

▼登録するスケジュールは2つ
・校正日を1日+作業予備日を1日(完成していれば提出)→
【7月2日:校正】
【7月3日:校正(予備)or提出】

2.研修のアンケート作成

研修日は1ヶ月後(7月31日)→
3営業日前(7月26日)までに上司のチェックを終えたい→

▼登録するスケジュールは5つ
・上司確認と修正で3日間→
【7月22日:上司確認】
【7月22日:修正】
【23日:上司再確認】 

・アンケート作成日を1日+作業予備日を1日→
【7月18日:作成】
【7月19日:作成(予備)】

3.スタッフ自身の有休申請
10分で作業が終わるので、今日の退勤5分前に行う

4.スタッフ自身の交通費申請
月末にまとめて登録したほうが効率がよいので、第4週の月曜日に繰り返し予定を登録する

5.本日の定常作業
定常業務なので今日行う
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結果的に今日やらなければいけない作業は

<7月1日の作業予定>
【有休申請】
【本日の定常作業】

のみとなり、空いた時間で翌日の作業を前倒しで行う余裕も出ました。
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このように、スケジュールを細かく設定する作業は、朝ではなく夕方に翌日分を行います。
終業時間の15分前に【スケジュールを細かく設定する】というスケジュールを毎日登録しましょう。
スケジュールを細かく設定し直し、頭の中を空っぽにして、翌日は朝から今日やることだけに集中して、スッキリ作業に取り組めます。
スケジュール管理については、以前の記事、優先順位をつけようとしない(クリアファイルと付箋で1分管理をしよう!)と、人の手を借りる(1日6分(朝夕3分)の確認が、あなたとチームを守る)なども参考になりますので、ぜひご覧ください。

最後に

障害者雇用で他事業部からの切り出し作業が増えると、ステップが細かい作業が増え、スケジュール管理が難しくなります。「障害があるからスケジュール管理は難しいだろう」と思わず、障害のある社員も出来る範囲でスケジュール登録が行えるように工夫することで、サポートする側も楽になります。ぜひ、お試しください。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

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ここまでお読みくださりありがとうございます。一つだけお願いをさせてください。
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