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蛙太郎
2021年9月4日 16:17
駅に降り立つ。甲斐性なしを宥める匂いが膜となってへばりつく。おかえりと鳴く湿風も気のせいなのに。歩道橋を駆け上がる。純然たる筋肉が己の所在を叫んでいる。導べを務めたランドセルも気のせいなのに。茂みをかき分ける。一度潜ったトンネルは跨いで越えねばならぬ。凱歌を唱えるリンリン虫も気のせいなのに。ただいまなどは気のせいだ。気のせいではない道程だ。いってきますの原動力は、さよ
2021年9月22日 00:01
熱狂の外側にいたい。傍観と干渉の狭間で、私の炎が保てる位置で。箱入り娘の私の炎、天色に燃える私の心。私の愛する映画を観ても「良かった」なんて言わないで欲しい。ブルーなハートのピエロなら「なるほどね」とだけ残して去るの。我が町にサーカス。夜更けのテントに、火の輪くぐりの虎を見た。秘密の興行、クライマックスは、天色に燃えさかる虎が、私の名前を叫んで散った。スタンディングオベーションだって、私だけな
2021年9月10日 00:33
クーラーが要らなくなったら、夜通し窓を開けておこう。あんまり冷たい冬の空気は、ちょっと刺々しすぎるから、今のうちに取り込むといい。サンダルが頼りなくなったら、厚い靴下を出しておこう。遠く張り詰めた冬の空には、連れて行かれそうになるから、そいつを重しにするといい。カレンダーはもう残り少ないから、誰と居たいか決めておこう。白い息に気付いたとき、一人じゃ消え入りそうだから、冬だねと分かち合