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よいしょ(自選詩)

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2021年9月の記事一覧

詩| 郷愁

詩| 郷愁

駅に降り立つ。
甲斐性なしを宥める匂いが膜となってへばりつく。
おかえりと鳴く湿風も気のせいなのに。

歩道橋を駆け上がる。
純然たる筋肉が己の所在を叫んでいる。
導べを務めたランドセルも気のせいなのに。

茂みをかき分ける。
一度潜ったトンネルは跨いで越えねばならぬ。
凱歌を唱えるリンリン虫も気のせいなのに。

ただいまなどは気のせいだ。
気のせいではない道程だ。
いってきますの原動力は、
さよ

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詩| 熱狂

詩| 熱狂

熱狂の外側にいたい。傍観と干渉の狭間で、私の炎が保てる位置で。箱入り娘の私の炎、天色に燃える私の心。
私の愛する映画を観ても「良かった」なんて言わないで欲しい。ブルーなハートのピエロなら「なるほどね」とだけ残して去るの。
我が町にサーカス。夜更けのテントに、火の輪くぐりの虎を見た。秘密の興行、クライマックスは、天色に燃えさかる虎が、私の名前を叫んで散った。スタンディングオベーションだって、私だけな

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詩| 冬支度

詩| 冬支度

クーラーが要らなくなったら、夜通し窓を開けておこう。
あんまり冷たい冬の空気は、ちょっと刺々しすぎるから、今のうちに取り込むといい。

サンダルが頼りなくなったら、厚い靴下を出しておこう。
遠く張り詰めた冬の空には、連れて行かれそうになるから、そいつを重しにするといい。

カレンダーはもう残り少ないから、誰と居たいか決めておこう。
白い息に気付いたとき、一人じゃ消え入りそうだから、冬だねと分かち合

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