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【超短編】Runner



僕は走り続ける。




もう二時間ほど走り続けている。




こんなに走ったのは何年ぶりだろうか。




僕には走らなければいけない理由があるのだ。




使命とも言えるかもしれない。




それは、婚約者の為だ。




僕が走らなければ、彼女を失ってしまうかもしれない。




愛する人を裏切る訳にはいかない。




僕がやるしかない。




僕がやるしかないのだ。




間に合うのか。




間に合わなかったら?




いや、そんな事、考えちゃいけない。




夕日が沈む方向に向かってひたすらに走る。




走って走って、止まる事も許されず走り続ける。




それにしても、








どうやったら止まるんだ、このランニングマシーン。




機械オンチだからどうにも止められない。




結婚式までに出っ張ったお腹を引っ込めるために来たんだけど、その前に死んでしまう。




目の前の窓、西日が入り過ぎだろ、眩しい。




どうでもいい、誰か止めてくれ。




結婚式に間に合わなくてもいいから。




そうして僕は夕日に向かって、止まる事も許されず走り続けるのだった。








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