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嫌な事ほど恩師となる

人を作るのは学びである。と思う。

いや、遊びじゃないのか?と思われる方もいるかもしれないし、それ以外のものかもしれない。
人生のすべての行動や出来事が学びだろ!という意見もあるだろう。
否定はしないし、できない。

だが、私にとっては、何に学びそして自分の一部としてきたかが、その人柄を決定づけるものだと考える。

じゃあ人間は何から一番学び、その人を形作るものなのかというと...
それは反面教師だと思っている。

人生の中で何千何万という数の人と出会い、話し、様々な感情を持ち、考えが変わったりする。

その中でも、コイツのようにはならない!
アイツとは分かり合えることはない!
と感じた時、人はその人を反面教師にする。

沢山の人と接して行くうちにだんだんその機会が増えていく。そしてその機会で得た教訓がその人柄を作るのだと考える。

私の中でその1人が、私と兄を女手一つで育ててくれた母である。


だからといって私は母と二度と関わらないと思ったこともなければ、嫌いになったこともない。
育てて貰ったことに非常に感謝しているし、生まれてから今の今まで関係が悪くなったこともない。(反抗期の時は除きます)

あくまで母の持っている性質の一つを反面教師としているということだ。


そのキッカケとなった出来事の1つ。

私が中学生の頃、3つ年上の兄は高校生だった。昔からモテないわけではない兄は当時青春を謳歌していたことだろう。男同士の兄弟ということもあってか、そういった(女性関係)の話は全くしていなかったが、その出来事が起きた当時に兄には彼女がいることを私は珍しく知っていた。

ある日、私が帰宅したら兄が母に烈火の如く怒りの咆哮を母に向けていた。家に入った瞬間に兄が母に怒声を浴びせていることがわかった。そしてそれが終わった後もしばらく兄と母のギクシャクした日々が続いたように記憶している。

兄の怒りの原因はこうだ。
兄は彼女へのプレゼントを購入して、自宅の自分の机の上に置いていた。購入してから彼女へ手渡すまでの数日、同じ場所に置いてあった。
そしてそのキレイな包み紙にキレイに包まれて、可愛らしいリボンまで付けられたプレゼントは当然母の目にも入っていた。
明らかに女性へと贈られるのであろうその物体が、自分以外の女性の手に渡ることを母も知っていたらしい。

だが、母はそこでそっとしておくことはせず、兄が出掛けている隙に、プレゼントを開封した。
キレイに巻かれた包み紙を一度剥がしてしまうと元通りにすることはまず出来ない。
帰宅し、誰かがその包み紙を開封した事実を知った兄は母に問い詰めたところ、認めたらしいのだ。

兄は怒り狂った。
私が帰宅するかなり前から母に怒声を浴びせ続けていたらしい。かなり長時間に渡ってそれは続いた。
怒る気持ちは痛い程わかる。当たり前だ。どう考えても100パーセント母が悪いのだ。

ただ、兄の怒りにさらに拍車をかけることになった理由がある。それは母が決して謝らなかったことだ。しかも兄にどんなに怒声を浴びせられても母は「何が悪いのよぉ」といった態度をとり続け、うっすらと笑っていたのだ。
まるで微笑ましい我が子の成長を見れて嬉しいかのように見える。そんな態度と表情を最後まで崩すことはなかった。


兄の怒声をあげた次の日、私は事の真相をすべて知った。私は心底母を軽蔑した。中学生の私にも兄の怒りや絶望がほぼ理解出来た。

兄ほどではないが、似たようなことを母は私にも以前したことがあったのだ。

そう、母はごめんなさいを言えない人だったのだ。
誰に対してもそうではない。むしろ外では普通に謝るべき所は謝ることが出来る普通の人だった。
だが、自分の子供に対してだけは、どんなに自分に非があろうとも謝罪の言葉や態度をむけることはなかった。

私は思ったものだ。ごめんなさいを言えないということはこんなにも人を不快にさせ、傷つけ、人間関係を壊すことになるのかと。

この出来事の後、私はそうはなるまいと強く思った。まさに反面教師である。


その思いは私を人として少しだけ成長させたように思っている。
そう思えるようになったのは大人になってからだったが。


私はたまーにこの出来事を思い出すことがある。
そしてあの時の母の姿を思い出し、こう思うのだ。
ごめんなさいをちゃんと言おう。少しでも自分に非があることをしてしまったなら、真摯な態度と素直な言葉で謝ろうと。

ちゃんとそれが出来ているのかは分からない。知らないうちに誰かを傷つけてしまっていることも生きていれば少なからずあることだろう。

だけど、出来る限り「ごめんなさい」をちゃんと言える人間でありたいのだ。


こうでありたい。こういう人間になろう。と思わせるのは反面教師のおかげなのだろう。



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