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10月27日(金):黒田監督の説く「チャレンジとギャンブルの違い」

JリーグのFC町田ゼルビアがJ1初昇格を決めたことに端を発して、高校サッカーの監督からJリーグの監督に転身して見事な結果を残した黒田監督のことに触れています。

黒田監督の記事などを見聞きした私の印象は論理が明確で、なおかつ話していることの解像度が高く、表現や例えが極めて的確だと思っていたので、昨日からは黒田監督の過去のインタビュー記事を振り返りながら、「負けない組織づくり」や「原理原則の徹底」などの話などをしています。

さて、本日も「GOETHE」のweb版で過去に連載されていた黒田監督のインタビュー記事からピックアップしたものをもう少しばかり。

サッカーはチームスポーツですが、試合の局面を見れば個人対個人の場面もあるし、目まぐるしく攻守が入れ替わる流動的なスポーツゆえに、プレーの選択は選手個々の判断によるところが大きくなります。

そうしたなか、試合で「やるべきことは何なのか、またはやってはいけないことは何なのかを整理し、自分の中でしっかりと判断しながらチームに貢献していくことが重要」だと説かれています。

それと関連して選手個々のプレー選択と密接にかかわる観点として、記事では「チャレンジとギャンブルの違い」について触れた点が印象的でした。

「間違えてほしくないのは『チャレンジ』と『ギャンブル』の大きな違いです。『チャレンジ』というのは非常にポジティブなものであり、失敗しても成功してもその後には必ず得るものがあります。もし失敗した場合でも、チーム全体がその部分を理解し補ってくれるので、次のストーリーをイメージしやすく、またその後の『大きな可能性』に繋がるのです。ギャンブルとは周りとの共有に関係なく、勝手に自分の意思で一か八かの賭けに挑んでしまうことです。結果、周りは事前にリスクマネジメントできず、自滅。それを組織で補うための動力は何倍もかかるのです。たった1人の身勝手な思考や行動で、チームのやるべきことや勝つための方程式を一瞬で破壊してしまうのです。そんな状況では、周りは一切フォローできませんからね。」

「『ギャンブル』には『成功の根拠』がないんです。例えが悪いかもしれませんが、一般的に、パチンコで勝てる保証などありませんが、もし組織の1人が勝手にパチンコをして、その負けた分をチーム全体で『負担してほしい』となれば、他のメンバーは一切認めないでしょう。しかし、メンバーがお金を出し合って、一人に、これで『チャレンジしてきてほしい』となれば、負けたとしても誰もが笑って終わるでしょう。たとえこの二つが同じような行動であっても、これは全く『違う思考』の中に実践されたこととして、組織作りにおいて『格段の差』があることを理解させなければなりません。」

これを受けて「『チャレンジ』と『ギャンブル』、どのように見極めるのでしょうか?」との問いには以下のように続けています。

「『起こった現象』を見て判断する方法しかありません。それは、『プレーの確率』によると思います。そのプレーが『成功』した後に何が得られるか、『失敗』した後に何を失うのか。その確率論から考察すべきだと思います。チーム組織としては、失うものに深くアプローチすべきであって、『マイナス』は悲劇的状況と捉えるべきです。よって、日々のトレーニングからどれだけリアリティを持って向き合えるかどうかが重要なのです。リアリティを持つための訓練は監督やコーチだけでなく、選手が自分たちで常に思考し意識していくことなのです。」

「試合を想定した上で緊張感のある雰囲気を演出するかが大事。緊張感や悲劇感の背景には自分の大切なものや、守るべきものがあります。例えば『大切な家族』や『自分の生活・人生』などがあります。サッカーを職業としている以上、本気で守るものがあり、容易にギャンブルをすることも、許すこともできなくなるはずです。組織というものは常にそんな危機感を煽りながら成長させていくものだと思っています。 そんな意識でサッカーと向き合えば、軽率なプレーは出てこない。だからこそ、トレーニングからすべてを『自分の人生』に置き換えることが重要であり、練習だからといって安易にボールを失ったり、軽率なプレーが許されたり、そんな生ぬるい環境であれば、その人のクオリティは絶対に上がらないし、チャレンジとギャンブルを履き違えてプレーする習慣が抜けないでしょう。決して勝ち続けるチームにはならないのです。」

少し長い引用になってしましましたが、黒田監督の言葉一つひとつに重みがあり、それをそのまま転載するほうが伝わるものが大きいと思ったためです。

先に触れたチャレンジとギャンブルの違いのひとつをとってみても、明確な定義と説明がなされているように、原理原則の裏側には監督の経験から昇華された哲学によって下支えされているのがわかります。

これまで3回にわたって過去のインタビュー記事を引用しながら黒田監督のアプローチに触れてきましたが、私たちのようなビジネスマン、組織のリーダーにとっても、そこから学ぶべきものは多いですね。

来シーズンの町田ゼルビアはチームとして初めてのJ1を戦うことになるので、そのなかでどのようにチームを進化させていくのか、黒田監督の手腕に期待をしつつ、今後もメディア等の記事をフォローしていこうと思います。

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