見出し画像

おいしい魚が食卓に並ぶ「当たり前」の日々を次の世代につなぐ

魚を食べなくなった日本人

今、日本の水産業に元気がない。

日本では魚介類の国内消費量が減り続けている。2016年には魚よりも肉を食べる国民になった。

需要が減れば、供給側も必然的に尻すぼみになる。漁師や生産者は減少し、高齢化が進む。後継者が見つからず事業をたたむことになったケースも枚挙にいとまがない。

食料自給率の低下が未来の飢餓リスクを高める

日本の当面高齢化と人口減少が進む。そこに魚の消費量、養殖事業者の低減が重なり、水産物のマーケットが小さくなっている。これはこれで何とかしないといけないが、実は他にも深刻なことがある。

57%。これは日本の2020年の食用魚介類の自給率だ。日本は食用魚介類のマーケットが小さくなっているだけでなく、その46%を輸入に頼っている。2020年の話だけではない。輸入量の拡大は1990年代から継続している。

ロシアがウクライナに侵攻したとき、穀倉地帯であるウクライナの2022年の小麦の収穫量は前年に比べて4割以上減る見通しとなった。ロシアは世界最大の小麦輸出国で、ウクライナも世界5位の小麦輸出国。小麦が手に入らないことで食料品の価格はインフレを起こした

食料を自給できない。自給できるはずのものすら輸入に頼ってしまう。それが常態化すると、有事においては非常に都合の悪い事実を突きつけられる。自国の国民より他国を優先する国なんてどこにもない。食糧危機になったとき真っ先に困るのは食料自給率の低い国だ。日本はこのままだと他国に生殺与奪の権利を握られてしまう。

日本の魚食文化を守りたい

日本という国がたんぱく質の食料生産率を最も簡単に上げられるものはなにか。おそらく食用魚介類だろう。

日本は約38万ha(世界第61位)と国土は確かに狭い。しかもその国土の約75%が山地ときている。

でも海岸線の長さは約3万kmで世界6位。排他的経済水域と領海を足した面積は447万平方キロメートル。これも世界6位。日本の食用魚介類の自給率は今でこそ6割前後だけど、1964年度では113%。日本周辺の水域は生産量も多く2019 年には 1965 万トンを生産。海生ほ乳類 50 種、海水魚約 3,700 種が生息し、生物多様性も高い。

水産資源がこれだけ豊かなのだから、日本人が豊かな食生活を享受し、たんぱく質をおいしく摂取し続けるには魚をおいしく食べられるようにし続けることが一番簡単で合理的な解決策なんじゃないかと思う。

スーパーや魚屋で新鮮な魚が手に入り、刺身で食べられる。飲食店に行けば季節の旬の魚をリーズナブルに楽しめる。焼いてもいい。煮てもいい。炙ってもいい。旬を感じながら食の豊かさを感じることができる。

そういう何気なく享受している「当たり前」は「当たり前」のことなんかじゃない。この日々が明日も続くとは限らない。その「当たり前」を守りたい。

過剰利用される水産資源

では、どうすれば日本の魚食文化を守れるか。それを考える上で押さえておきたいのが、世界の水産資源の利用状況だ。

中国を中心としたアジア圏、オセアニア圏では人口が増え、経済も発展したことでたんぱく質需要が激増。魚の消費量は世界的に拡大を続けている。日本とは対照的だ。

各国が漁獲量を増やしてきたことで、水産資源の利用状況は2017年には33%が過剰利用の状態になってしまっている。

魚介類消費を支えるにはもう「獲る」漁業だけでは成り立たない。消費量が増加している中国やインドネシアの水産物需要は6~8割が養殖頼みになっている。これは世界で起こっている現象だ。日本も例外ではない。

養殖生産者の力になる

資源は世界的に過剰利用されているのだから、「獲る」漁業から「育てる」漁業に転換するしかないのだが、養殖の生産量は横ばい。生産者の数はむしろ減少している

先ほどのグラフにもあったように水産物需要が旺盛な中国やインドネシアでは大きく養殖生産量も伸びている。

日本人のたんぱく質の摂取方法を考えたとき、水産業はどう考えても構造的に重要だ。そしてそのカギは養殖業にある。

でも、もうその養殖業を支える事業者は日本に1.5万社しかいない。目の前にどれだけ豊かな海が広がっていても、それを生かす人がいなくなれば、資源がないのと一緒だ。この先何もしないと、日本で魚をおいしく食べることはできなくなってしまう。

だから養殖の生産者の人たちと一緒にもう一度日本の水産業に活路を見出す。彼らの頭脳となり、右腕となる商品を作る。

おいしい魚が食卓に並ぶ「当たり前」の日々を次の世代につなぐ
それが僕が作ったAquacraftという会社のミッションだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?