頭の中へ
突然ですが、みなさんは脳をみたことがありますか?そもそも何か事情がないとヒトの臓器を実物で見ることはないと思います。しかし、食材として他の動物の臓器を見ることはあるはずです。例えば、焼肉を食べに行けば、肝臓や胃などの消化器官やハツ(心臓)にお目にかかることもあると思います。魚であれば、フグの白子やカラスミ(ボラの卵巣)といった生殖器官を食材にすることがあります。世界を見れば動物の脳は神経細胞を発達させるための脂肪酸を含むため、食材とされているようですが、日本ではあまり聞きません。しかし、探せばあるもので、今回は近くのスーパーマーケット(ホームセンターのほうがいい?)で手に入れられるものを用いて、脳の観察を紹介します。
今回は、人によってはショックを受ける写真があるので、写真は最後にまとめてのせています。無理して見ないでください。
脳とは
そもそも脳とは神経系の中枢の器官で、私たちの体をコントロールしています。心臓を動かしたり、体温を調節したりと言った生きるために必要なことだけではなく、ものを考えたり覚えたりするのも脳で行っています。また、感覚器官で得られた刺激を再現しているのも脳です。どういうことかというと、私たちが目で見ていると思っている周りの風景も実は脳で再現されています。
その脳は、大脳、中脳、間脳、小脳、延髄に分かれています。それぞれ役割が分かれており、大脳は感覚器官の中枢や思考・記憶、間脳は体温調節などの自律神経の中枢、中脳は眼球運動や瞳孔調節、小脳は平衡感覚の中枢、延髄は呼吸や心拍などの生命維持の中枢です。これらは、脊椎動物では共通しており、動物の種類によって違いはあるものの必ずこの5つからできています。
購入&観察
購入するものはペットショップの犬用の「鶏頭水煮」です。鶏の頭がしっかりと煮込まれているため、頭骨がピンセットでつまむだけで簡単に取り外せます。うまいことやると図1のように脳を剥き出しにすることができます。脳は筋肉ではなく脂肪でできているため、加熱されても固くならず、プルプルなので違いに気づくことができるかと思います(図1)。
その脳を取り出せばよいだけです。鳥類は空を飛ぶため、優れた平衡感覚が必要なため小脳が比較的大きくなっています。また、大脳も脳の体積の大半をしめていることから簡単に観察できますが、内部の中脳や間脳、細い延髄は見えないことがあります(図2)。
また、けっこうはっきりとみえるのが視交叉です。眼球から伸びる視神経は脳につながっているのですが、右目の神経は左脳へ、左目の神経は右脳にのびています。そのため、視神経が交差しているのですが、この交差しているところが視交叉になります(図3)。
半分にしてみた
学校の教科書的には、鶏から取り出した脳をスケッチして、外見からわかることを知れば十分です。しかし、先述したように間脳と中脳は中央部にあるため外見からでは観察できません。そこで、脳を半分にしてみましたが、やはり内部は観察できませんでしたが、脳が2色にわかれているのが観察できました。大脳は、新皮質と辺縁皮質に分かれており、色が異なっています。これは、新皮質には神経細胞が集まっており、辺縁皮質には神経細胞から伸びる軸索とよばれる突起が集まっているためです。今回の観察でも色が分かれているのが観察できました(図4)。
無理はしないで
解剖をするのに何か意味があるのかと言われたら、動物(私たちと同じ脊椎動物)の体を通して自分たちの体の構造を知るところにあります。教科書には管状と書かれている腸も、実際は膜でおおわれてかたまりになっています。動物によっては幽門垂が大きくて未知の臓器があるのかと勘違いしてしまいます。
一方、脳を観察する実験はあまりありないので、この実験はとても貴重です。しかし、いくら教科書ではわからないことがあると言われても、気持ち悪いのを無理してまでやる必要はありません。ただ、こういうものが自分の体の中に入っているということを知ることができればよいと思います。