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悪いことはするもんじゃない

CSI:科学捜査班』はアメリカのテレビドラマシリーズです。アメリカのドラマを見ていていつも思うのが、予算の規模とシリーズの長さが日本のドラマと桁違いということでしょうか?このCSIも2000年から2015年まで放映されています。ドラマの内容は、ネバダ州ラスベガスを舞台に、最新科学を駆使して凶悪犯罪に挑む、ラスベガス警察科学捜査班の活躍を描いた、いわゆる警察の鑑識係のドラマです。もともと、アメリカの警察にはCSIのような部署はなかったらしく、このドラマがもとで科学捜査の部署ができたそうです。

連続ドラマといえば恋愛ものがテーマになりやすいですが、恋愛ものが苦手な私のような方にも、このCSIは楽しめると思います。まあ、科学捜査をするので必ずと言っていいほど自然科学の話がでてくるからでしょうか。「自然科学の勉強にもなるドラマだよ」と言いたいところですが、少し注意が必要です。製作総指揮がジェリー・ブラッカイマーだからか分かりませんが、細かいことを気にしていません。話のテンポはよいのですが、数時間から数週間かかるPCRや成分分析が一瞬で終わっています。また、今から見たら時代遅れ(使われていない)技術もあったりしますが、興味を持つには十分だと思います。物理や化学の基本的な原理をもとにした科学捜査もあるので、悪いことをあばくというネガティブな視点ではあるものの、自然科学が日常生活のなかでどのように働いているかがわかります。また、証拠を積み重ねて事実を突き止めたり、仮説を立証することは科学の研究と同じだと思います。あと、科学の前では嘘はつけないということも実感します。

このシリーズは15年続いただけではなく、マイアミとニューヨークを舞台にしたスピンオフ作品も作られています。ここまで、長く広く作られた理由の1つとして本作の主役的な存在であるチームの主任のギル・グリッソム博士の忖度をしない人柄があると思います。警察のお偉いさん方から圧力をかけられても科学捜査の結果から得られた結論を変えず、自分の部下であるチームを守る理想の上司であり、そうありたいと思わせてくれる人物です。また、犯罪捜査のドラマなので、毎回殺人などの罪を犯した人が登場しますが、罪を犯したことには厳しく対応するのですが、人を否定しません(一部除く)。

例えば、「科学で説明できないことは信じないのだろう」という自称霊能力者には、「原始時代。風が吹いて茂みが揺れたとき、何かいると怖がった者が生き延びて、私たちがいる。」と返答します。
「俺たちのことを気持ち悪いと思っているんだろう」と激昂した同性愛者には、「カキはオスとメスの違いはない。出会って、気に入ったら子孫を残す。生まれた時から性別が決まっているのは私たちだけだ。」と諭しています。正確なセリフではないのですが、だいたいこんなことを言っています。特に、後者のカキの話は生物学に携わるものとしては感銘を受けました。
確かに、私が研究している寄生虫(扁形動物)は原則雌雄同体で、宿主の魚は生まれてから性転換することがあります。受精の瞬間に性別が決まり、一生そのままなのは鳥類や哺乳類くらいで、動物の世界ではほんの最近できた仕組みのでしょう。「同性を好きになるのがおかしい」のではなく、「動物にとっては他の個体を好きになるのがあたりまえ」ということでしょうか?大学生の時に、生物の教師をしていた父に「生物という教科は自分を知ること」と言っていました。生物を勉強することは、自分を知るだけでなく、今話題になっている多様性(違い)を知ることにもなるとギル・グリッソム博士に教えられたような気がします。

長いシリーズのドラマなので一言では魅力を全て語ることはできませんが、1つ注意をしてほしいことがあります。1話がビックリするほど面白くないです。けど、飛ばすと1stシーズンの面白さが半減します。



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