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偶然と必然 第3話 〜彼女はハイネケンを注文する〜

21時20分

駅の改札口を出て、左に曲がる。

通りに沿い、1ブロック歩いた角にその店はある。

『風と共に去りぬ』の大きな看板が目印だ。

1階は同名のカフェで、2階がバーになっている。

君は狭い階段を上り、そっとドアを開ける。

君は今、バーにいる。

どの席に座っているのだろう?

カウンターの席は埋まっている。

よって君は窓側の席に腰掛ける。

君が1人でこの店に来たのは今夜が初めてだ。

いや、君が単独でバーに来ること自体初めてかもしれない。

女性が1人で呑みにいくことは、なかなか勇気がいることだ。

今夜、君は大いなる勇気を出してここに来た。

おめでとう、と言うべきだろう。

でも、君はもう少し勇気を振り絞らなくてはならない。

なぜなら、君はマスターに質問しなくてはならない。

そうしなくては、ここまで来た意味がなくなってしまう。

マスターが注文を取りに近づいてくる。

「いらっしゃい、ご注文は?」

君はハイネケンを注文する。

君は少し緊張する。でも、思い切って訊いてみる。

「すいません、ちょっとお訊きしたいんですけど・・・。あの人・・・、今夜は来るでしょうか?」

マスターは優しく微笑み返す。

「ちょっと待ってね」

マスターは携帯電話を取り出し、電話をかける。

「もしもし・・・」

<続く>

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