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【悲報】さらば、僕が愛したアイス・・・

先日、衝撃的なニュースが舞い込んできた。

なんと東海道新幹線内でのワゴンサービスが2023年10月末日をもって終了。

僕がその一報を聞いた時、脳裏に浮かんだのはあのアイスクリームだ。

通称『シンカンセンスゴイカタイアイス』。

そう、あのスジャータ謹製のアイスクリームのことである。

ドライアイスで極限まで冷やされたカチコチのアイス。下手にスプーンを突き刺そうものなら、プラスチックが折れてしまうほどの強度を誇る。まるで凶器。一体どうやったら、これほどまでカチンコチンにできるのであろうか?

しかしこのアイスは美味いのだ。乳脂肪分が15.5%と非常に高濃度で、北海道産生クリームをふんだんに使用したまさにプレミアムアイス。またアイスの空気含有量を大幅に低くし、その密度を高めることにより硬く、ねっとりした重厚感のある味を生み出している。新幹線という非日常的な空間で食べるからさらに美味い。

僕はこのアイスをこよなく愛してきた。仕事で新大阪駅から東海道新幹線に乗った際(大抵名古屋までだったが)の楽しみは間違いなくこのアイスだった。

そのスゴイカタイアイスが食べられなくなる。

つらい・・・。僕は愛しきアイスを想いサメザメと泣いた。

と、思いきや、駅の自動販売機で発売は継続されるらしい。

早とちりで申し訳ない。とりあえずはホッとしたが自動販売機であのカチコチの硬さは再現できるのだろうか?

僕が最後にこのスゴイカタイアイスを食べたのは2023年の初頭だった。

魔都東京へどうしても行かなくてはならず、決死の覚悟で上京した帰りのことだった。幼少期より大阪原理主義者の祖父による偏見に満ち満ちた教育で育った僕は『東京は世界有数の凶悪犯罪都市』だと信じ込んでいた。よって、まさに九死に一生を得る思いで帰りの新幹線に飛び乗ったのだった。

幸いカツアゲにもスリにも詐欺にもボッタクリにも妖艶な美女の誘惑にも人相の悪い人々にも遭遇することなく、無事帰路につけて僕は心底安堵していた。

新幹線に乗ったら僕のような中年男性はまずビールである。アテにはサンドイッチがよろしい。我が親友N氏は忠実にこのルーティンを守られている(生真面目なやつだ)。

新幹線車中のビールは控えめに言って凄く美味い。できればヱビスビールかプレミアムモルツなどちょっとお高いビールだとなおよろしい。少し贅沢している気分になる。

列車は新横浜駅を過ぎ、僕は食事を終え人心地ついたころ、絶好のタイミングでがあの声が聞こえてきた。

「お弁当にお茶、サンドイッチ、ホットコーヒーはいかがですか〜?』

キタッ❤️

僕は迷わずワゴン販売のお姉さんに声をかけアイスクリームを購入した。

ちなみにお値段は340円。別名『シンカンセンスゴイタカイアイス』だそうだ(確かに高い)。旅中はつい財布の紐が緩くなる。

とは言え早く食べたい!けどめちゃくちゃ固くて食べることができない!!

ではこの鋼鉄の如きカチコチアイスを素早く溶かすにはどうすれば良いだろうか?

  • 手で温める

  • ホットコーヒーを一緒に購入してアイスの上に置く

  • カイロ(冬季限定)で包む

  • 服の下に入れて体温で解凍する

さて僕はどうしたのか?

用意周到な僕は、ワゴン販売で一緒にあるものを購入しておいた。

それは日本が世界に誇る銘ウイスキー『サントリー山崎12年』。

今ではすっかりプレミアム化し入手困難になった『山崎12年』が僕は大好きで、ベストウイスキーの一つであると認識している。末期の水はこれでも良い。何とこれが新幹線車中で購入できるのだ(高いけど)。

要はウイスキーでカチコチアイスを溶かしてしまおうという算段である。おお、これぞまさに『大人のアイス』である!

まずは丁寧に十時に切り込みを入れる。ほんまに硬いのでこれだけでも一苦労である。

しかし手間暇をかけたものは旨いと決まっている。僕はその切れ込みにウイスキーを適量かけ、アイスが溶けるのを今か今かと待つ。至福の時間である。

やがて琥珀色の液体がシロップのように白いアイスに染み込み、ようやく柔らかくなったバニラアイスを口に運ぶ。

「おおぉ」僕は目を閉じ唸ってしまった。

美味い。めっちゃ美味い。最高に美味い。

口の中にアイスのミルクたっぷりの豊潤な甘さと、山崎12年の上質でフルーティーかつ刺激的なウイスキーの味わいが絶妙に混ざり合い見事なハーモニーを奏でる。そのマリアージュに世界は乳白色に包まれ、僕は恍惚の人となった。

ああ、幸せ・・・。

多幸感に包まれながら、僕はやがて東京から生還した安堵感と、何本かの缶ビールとウイスキーによる酔いと、新幹線の揺れの心地良さでぐっすりと眠ってしまった。

次に目が覚めた新大阪駅だった。ここが終点で良かったと何度も思った。

そんなこの世の天国がもう味わえないのだ。

時は流れる。

誰もそれを止めることはできない。

その時の彼方に、シンカンセンスゴイアイスも流され行ってしまったのだ。

さらば、僕が愛したアイスよ。

また一つ、僕にとって大切なものが失われてしまった。

悲しいけど、それが人生なのだ。

That' life.

と渋く文章を締めようとしていたのだが、ふとネットの記事を見ていると新幹線グリーン車ではモバイルオーダーでシンカンセンスゴイカタイアイスも山崎12年も購入できるそうである!

何と!!

「よしっ、次はグリーン車に乗るぞ!!」僕は心にそう誓った。

その為に今日も頑張ろう。嘆き悲しんでいるばかりではなく、明るく希望に満ちた未来も必要だ。

Life goes on!

そう、人生は続くのだから。













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