整理解雇の4要件(Ⅱ) ~正規雇用と非正規雇用~

■正規雇用と非正規雇用の格差

(1)正規雇用
・期間を定めないで雇用する形態。(無期雇用)
 ⇒「正社員」がこれにあたる。
・比較的安定した立場で働ける。
・どんな辞令も受け入れなければならず、転勤される事もある。
・スキルアップを望める。
・ボーナスや退職金が支払われる。
・法律上の保護が強い。
『整理解雇の4要件』もあるため、解雇されにくい。
・企業側は、景気や業績が悪化したり人手が余ったりしても解雇できないので、リスクを背負う事にもなる。

(2)非正規雇用
・期間を定めて雇用する形態。(有期雇用)
 ⇒「パート」「アルバイト(フリーター)」「契約社員」「派遣社員」「嘱託社員」がこれにあたる。
・常に不安定な立場である。
・スキルアップはあまり望めない。(単純労働が多いため)
・ボーナスや退職金が支払われない事がほとんど。
・法律上の保護が弱め。(請負よりはマシ)
・人員の調整弁として利用され、雇い止めに遭いやすい。

こうして見比べてみると、主に「賃金」「雇用保障」「キャリア」という三点での格差が非常に大きい。


■日本型雇用

◎新卒一括採用(新卒至上主義)
企業は、就職活動をしている現役の大学生が大好き。
一度でも第二新卒や非正規に"転落"してしまうと、そこから正社員になる事が困難になるという厳しい現実が待ち受けている。格差社会への第一歩。

◎年功序列型賃金
年齢や勤続年数を重ねる毎に基本給が少しずつ上がっていくシステム。
仕事の出来る出来ないは不問。
人件費の高騰や固定化を招きやすい。

◎終身雇用(長期雇用慣行)
入社してから定年退職するまで会社に正規雇用され続けるシステム。
仕事の出来る出来ないは不問。
仕事の出来ない人ほど不良債権化しやすい。

これらは全て「正規雇用」が前提であり、いずれも世界に類を見ない日本独自の制度である。
日本では、「終身雇用=善、安心」と言われ続け、正規雇用者として同一企業に居続けたほうが生涯賃金も退職金も有利になりやすい仕組みになっている。


■総務省統計局の労働力調査

雇用形態別の人数や割合が公表されている。


2019年12月(Corona直前)の労働力調査は、以下のようになっている。
※Corona後もほぼ同じ割合となっている。


非正規雇用は、雇用者全体の38.2%を占めている。
「もはや非正規は約4割ですよ!」と、顔を真っ赤にして叫んでいる日本共産党ら野党はこの事を指して言っている。

だが、非正規全体で見てみると、一番多いのはパートのおばちゃん……いやっ、お姉様の929万人である。
・非正規全体(2179万人)のうちの42.63%
 ・非正規女性(1493万人)のうちの62.22%

彼女らの大半は「旦那」という纏まった収入源があり、子供もいるので、自分は時短勤務ができて融通の利きやすいパートで十分という考えの人も多いのだろう。いわゆる「◎◎万円の壁」の狭間で働いている人も多いので、給与は高くない。

次いで多いのはアルバイト(フリーター)や契約社員だが、パートのおばちゃんお姉様と比べたらかなり少ない。

そして、いろいろと言われている派遣労働者数は140万人と、パートやフリーターと比べれば圧倒的に少ない。
・雇用者全体(5698万人)のうちの2.46%
 ・非正規全体(2179万人)のうちの6.42%

結局のところ、非正規ガー、パソナガー…と叫んだところで、その多くはパートのおばちゃんお姉様であり、彼女らを除けば、世間が大袈裟に言うほど非正規雇用は多くないのが現実である。


■労働者派遣事業の事業報告の集計結果

厚生労働省サイトにて、各年6月1日時点での状況が公表されている。


「労働者派遣法」第23条で定められた、労働者派遣事業からの事業申告であり、一人の労働者が複数の派遣会社に登録していると、それだけ多くカウントされる事になる。
そこが、一人の労働者からの申告である労働力調査との違いである。

2020年6月1日時点での派遣労働者数は156万5799人であり、
2020年度の派遣労働者数は192万6487人である。

なお、事業報告による派遣労働者数が最も多かったのは2008年の約399万人であり、それまでに減少した事があったシーズンは、2003年(約236万人)→2004年(約227万人)の一度だけ。

リーマンショックが起こった後は、いわゆる「派遣切り」で大幅に減少したが、2012年以降は微増程度に落ち着いている。


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