牛乳乳製品、食肉、および鶏卵をめぐる情勢
牛乳乳製品、食肉、および鶏卵をめぐる情勢(本文7,031文字)
農林水産省畜産局は、畜産品にかかる最新情報を公表しています。その中から、ここでは令和6年9月付にて公表された「牛乳乳製品をめぐる情勢」ならびに「食肉鶏卵をめぐる情勢」の概要をご案内します。
<オーバービュー>
1. 牛乳乳製品をめぐる情勢
生乳生産量は1996年度をピークに減少し、2023年度は前年比2.8%減少した。それに伴い消費も減少傾向で、特にチーズや生クリームの減少が顕著である。
2. 食肉鶏卵をめぐる情勢
食肉鶏卵の消費には増加傾向が見られ、特に外食産業が牛肉、豚肉、鶏肉の需要を押し上げているが、鶏卵は新型コロナや鳥インフルエンザの影響で消費が減少している。
<「牛乳乳製品をめぐる情勢」の内容>
1. 牛乳乳製品の需給動向
1-1. 生産動向
生乳生産量は1996年度をピークに減少傾向にあり、飼養戸数や飼養頭数の減少が影響している。2019年度からは生乳生産量が増加に転じ、2020年度には基盤強化が進んだ。2021年度も都府県と北海道で生乳生産量が増加したが、2022年度からは需給の緩和や生産コストの上昇により再び減少に転じた。2023年度は前年比で2.8%減少し、特に牛乳向けが2.6%、脱脂粉乳・バター向けが4.5%減少した。2024年度は生乳生産抑制の見直しが行われるが、猛暑の影響で受胎率が低下し、前年並みの生産量が見込まれている。
図表1. 生乳生産量の推移
生乳生産量は1996年度をピークに減少し、2023年度は7,324千トンで前年比2.8%減少した。生乳需給の緩和が影響している。
図表2. 生乳仕向割合の推移
生乳の仕向け割合は、脱脂粉乳・バター向けが減少し、チーズ向けも減少傾向にある。2023年度は脱脂粉乳・バター向けが4.5%、チーズ向けが4.8%減少した。
1-2. 牛乳等の生産量
牛乳の生産量は2023年度に前年比2.1%減少し、加工乳や成分調整牛乳も減少傾向にある。2024年度は牛乳が1.2%減少する見込みで、乳飲料は比較的好調に推移していたが、2023年度は1.3%減少した。生乳の需給バランスが崩れ、価格の影響を受けている。
図表3. 牛乳の生産量
牛乳の生産量は2023年度に前年比2.1%減少し、2024年度も減少が見込まれる。特に加工乳や成分調整牛乳も減少傾向にある。乳飲料は比較的好調に推移していたが、2023年度は1.3%減少した。消費者の節約志向が影響している。
1-3. 乳製品の生産量
バターと脱脂粉乳の生産量は2023年度に減少したが、2024年度は生乳生産量の増加に伴い、バターが2.7%、脱脂粉乳が3.3%増加する見込みである。乳製品の生産は生乳の需給に大きく依存しており、需給の変動が直接的な影響を与える。
図表4. 乳製品の生産量
バターと脱脂粉乳の生産量は2023年度に減少したが、2024年度は生乳生産量の増加に伴い、バターが2.7%、脱脂粉乳が3.3%増加する見込みである。
1-4. 消費動向
2023年度の牛乳等の1人当たり消費量は減少しており、特にチーズや生クリームの消費が影響を受けている。チーズの消費は新型コロナウイルスの影響で減少傾向にあり、嗜好品としての位置づけから買い控えが見られる。生クリームの消費も微減しており、全体的に消費者の節約志向が強まっている。
図表5. 牛乳等、チーズ、生クリームの1人当たり消費量の推移(年度別)
牛乳等の1人当たり消費量は減少しており、特にチーズや生クリームの消費が影響を受けている。嗜好品としての位置づけから買い控えが見られる。
2. 酪農経営の動向
2-1. 戸数等の推移
乳用牛飼養戸数は減少傾向が続いており、2024年は前年比5.6%減少する見込みである。飼養頭数は2022年まで増加していたが、2023年以降は生産コストの上昇により減少している。特に小規模農家の経営が厳しくなっており、経営の効率化が求められている。
図表6. 乳用牛飼養戸数の推移
乳用牛飼養戸数は減少傾向が続いており、2024年は前年比5.6%減少する見込みである。特に小規模農家の経営が厳しくなっている。
2-2. 生産コストと所得の推移
生産コストは上昇しており、2022年には大幅に増加した。主産物価格の上昇にもかかわらず、所得は減少している。特に飼料費の高騰が影響を与えており、経営者はコスト管理に苦慮している。所得の減少は、農家の経営に深刻な影響を及ぼしている。
図表7. 生産コストの推移
生産コストは上昇しており、2022年には大幅に増加した。主産物価格の上昇にもかかわらず、所得は減少している。
2-3. 飼養頭数規模別の生産コスト
飼養頭数が増加するにつれ、コストは低下傾向にあるが、飼料費の高騰により影響を受けている。特に大規模農家では、効率的な経営が可能である一方で、小規模農家はコスト増加に苦しんでいる。経営の規模によるコスト差が顕著であり、今後の経営戦略に影響を与える要因となっている。
3. 加工原料乳生産者補給金等
3-1. 加工原料乳保証価格等の推移
加工原料乳の保証価格は新型コロナウイルスの影響で変動しており、2023年には乳価が引き上げられた。保証価格の変動は生産者の経営に直接的な影響を与え、安定した収入を確保するための重要な要素となっている。
図表8. 加工原料乳保証価格の推移
加工原料乳の保証価格は新型コロナウイルスの影響で変動しており、2023年には乳価が引き上げられた。
3-2. 加工原料乳生産者経営安定対策事業
生産者に対する補填金が交付される制度があり、価格が基準を下回った場合に適用される。この制度は、生産者の経営安定に寄与しており、特に価格の変動が大きい時期において重要な役割を果たしている。
図表9. 補填金制度
生産者に対する補填金が交付される制度があり、価格が基準を下回った場合に適用される。この制度は、生産者の経営安定に寄与している。
<「牛乳乳製品をめぐる情勢」のまとめ>
最近の牛乳乳製品をめぐる情勢は、需給動向、生産動向、消費動向、酪農経営の動向、補助金制度など多岐にわたる。生乳生産量は1996年度をピークに減少し、2023年度は前年比で2.8%減少した。牛乳の生産量も減少傾向にあり、2024年度も前年並みの生産が見込まれる。消費動向では、牛乳等の1人当たり消費量が減少しており、特にチーズや生クリームの消費が影響を受けている。酪農経営では、生産コストの上昇が所得に影響を与えており、補助金制度が生産者を支える役割を果たしている。全体として、牛乳乳製品業界は厳しい状況にあるが、今後の動向に注目が必要である。
<「食肉鶏卵をめぐる情勢」の内容>
1. 消費動向
1-1. 食肉の消費量
食肉の消費量は、経済成長や食生活の欧米化に伴い増加している。特に、平成13年度をピークに魚介類の消費が減少し、平成23年度には食肉の消費が魚介類を上回った。令和5年度の牛肉、豚肉、鶏肉の合計消費量は33.6kg/年で、鶏肉が14.4kg、豚肉が13.1kg、牛肉が6.1kgとなっている。
図表1. 食肉の消費量の推移
食肉の消費量は経済成長や食生活の欧米化に伴い増加している。特に魚介類の消費が減少し、食肉が主流となった。令和5年度の合計消費量は33.6kg/年で、鶏肉が最も多い。
1-2. 外食産業の影響
外食産業の売上高は好調で、特にファミリーレストランやファーストフードが肉類の消費を拡大させている。令和2~3年度は新型コロナウイルスの影響で外食需要が減少したが、令和5年度には需要が回復し、売上が前年を上回った。
2. 牛肉
2-1. 消費動向
牛肉の消費量は肉ブームで増加し、平成30年度には回復。しかし、コロナ影響で減少傾向が続き、令和5年度は前年比1.2%減、令和6年度も1.5%減。物価上昇が影響した。
図表2. 牛肉需要の推移
消費量は肉ブームで増加後、コロナ影響で減少傾向となり、令和5年度は前年比1.2%減、令和6年度も1.5%減。物価上昇も影響している。
2-2. 生産動向
生産量は平成23年の震災以降減少傾向にあったが、畜産クラスター事業の取り組み等により回復している。令和6年度は前年同期比で増加している。
2-3. 輸入動向
輸入量は平成28年度以降増加傾向にあり、令和元年度は需要の伸びが一巡したが、令和2年度は新型コロナの影響で減少した。令和5年度は需要低迷や為替、現地相場高等から減少し、全体で前年度比10.8%減となった。
2-4. 卸売価格
牛肉の卸売価格は肉ブームの高まりや生産量の減少を背景に高騰している。令和元年度以降は新型コロナウイルスの影響で価格が低下したが、令和5年度には回復傾向が見られる。
2-5. 肉用子牛価格の動向
肉用子牛価格は新型コロナウイルスの影響で低下したが、令和6年度第1四半期には回復し、保証基準価格を上回る水準で推移している。
3. 豚肉
3-1. 消費動向
豚肉の消費量は、肉ブームの影響で平成27年度以降増加傾向にあり、令和5年度は前年度比0.4%増の1,835千トンとなった。特に、業務用需要が回復し、外食産業の影響を受けている。
図表3. 豚肉需給の推移
豚肉の消費量は増加し、令和5年度は前年度比0.4%増の1,835千トンとなった。生産量は回復傾向にあり、輸入量は減少しているが、外食需要が影響している。
3-2. 生産動向
生産量は平成26年度以降回復傾向にあり、令和6年度は前年同期比0.5%増となった。生産者の健康問題や高齢化が影響しているが、全体的には安定した需要が続いている。
3-3. 輸入動向
輸入量は平成27年度以降増加傾向にあり、令和5年度は前年度比5.2%減の60万9千トンとなった。主にブラジルやEUからの輸入が多い。
3-4. 卸売価格
卸売価格は季節による変動があり、令和5年度は前年同期比1.7%上昇した。生産拡大に伴い、価格は安定している。
4. 鶏肉
4-1. 消費動向
鶏肉の消費量は、健康志向の高まりや低価格志向により増加している。令和6年度は前年同期比4.6%増の1,810千トンとなった。
図表4. 鶏肉需給の推移
鶏肉の消費量は健康志向の高まりにより増加しており、令和6年度は前年同期比4.6%増の1,810千トンとなった。生産量も安定しているが、輸入量は減少している。
4-2. 生産動向
生産量は安定しており、令和6年度は前年同期比0.5%増となった。インテグレーション化が進んでおり、大規模化が進展している。
4-3. 輸入動向
鶏肉の輸入量は、国内の在庫水準によって変動するが、令和5年度は前年度比4.7%減の48万トンとなった。主にタイや中国からの輸入が多い。
4-4. 卸売価格
卸売価格は、令和6年度(4-7月)に前年同期比10.3%減少した。生産拡大に伴う需給緩和が影響している。
5. 鶏卵
5-1. 消費動向
鶏卵の消費量は、令和5年度に257万トンと前年度比3.0%減少した。新型コロナウイルスや鳥インフルエンザの影響が影響している。
図表5. 鶏卵需給の推移
鶏卵の消費量は令和5年度に257万トンと減少した。生産量は248万トンで安定しているが、新型コロナウイルスや鳥インフルエンザの影響が続いている。
5-2. 生産動向
生産量は安定しているが、令和5年度は248万トンと前年度比3.1%減少した。新型コロナウイルスや鳥インフルエンザの影響が続いている。
5-3. 輸入動向
鶏卵の輸入量は国内消費量の4%程度で推移しており、主にオランダ、イタリア、米国から輸入されている。
5-4. 卸売価格
鶏卵の卸売価格は、令和6年度(4-8月)に前年同期比15.3%減少した。生産者経営安定対策事業が発動している。
6. 輸出
6-1. 牛肉
輸出額の推移: 令和4年の牛肉の輸出額は520億円で、前年に比べて減少したが、令和5年は578億円と回復した。特に台湾や香港での需要が増加している。
6-2. 豚肉
輸出額の変化: 令和4年の豚肉の輸出額は23.3億円で前年より減少したが、令和5年は26.7億円と増加した。特に香港での需要が高まっている。
6-3. 鶏肉
輸出実績: 鶏肉の輸出額は令和4年に20億円、令和5年には25.6億円と増加している。特に香港での需要が高まっている。
6-4. 鶏卵
輸出動向: 鶏卵の輸出額は令和4年に85.5億円で過去最高となったが、令和5年は69.9億円と減少した。令和6年は39.4億円で前年同期比7%増となった。
図表6. 食肉の輸出実績
1)牛肉
2)豚肉
3)鶏肉(正肉・加工品・その他)
4)鶏卵(殻付き鶏卵・加工品)
牛肉の輸出額は令和5年に578億円、豚肉は26.7億円、鶏肉は25.6億円と増加している。鶏卵は令和4年に85.5億円で過去最高となったが、令和5年は69.9億円と減少した。
<「食肉鶏卵をめぐる情勢」のまとめ>
近年、日本の食肉および鶏卵市場は、消費動向や生産、輸入、輸出の各側面で変化を遂げている。食肉の消費は増加傾向にあり、特に外食産業の影響で牛肉、豚肉、鶏肉の需要が高まっている。牛肉は供給量が増加し、輸出額も回復しているが、豚肉は香港やシンガポールでの需要が支えとなり、輸出が増加している。鶏肉は健康志向の高まりにより消費が増加し、鶏卵は新型コロナウイルスや鳥インフルエンザの影響で消費が減少した。
輸出に関しては、牛肉、豚肉、鶏肉のいずれも主要な輸出先国での需要が増加しており、特に台湾や香港での外食需要が顕著である。鶏卵は過去最高の輸出額を記録したが、最近は減少傾向にある。全体として、食肉および鶏卵市場は厳しい状況にあるが、今後の動向に注目が必要である。
<畜産品の展望>
牛乳乳製品業界は、需給バランスの悪化や生産コストの上昇が続く中、補助金制度が生産者を支える重要な役割を果たす。今後は、消費者の健康志向や環境意識の高まりに応じた製品開発が求められる。食肉市場では、外食需要の増加が続くと予想されるが、鶏卵の消費回復には時間がかかる可能性がある。輸出市場の拡大が期待される中、特にアジア地域での需要増加に注目が集まる。全体として、両市場ともに厳しい状況が続くが、適応力と革新が鍵となるだろう。
<一次情報>
牛乳乳製品をめぐる情勢
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/index.html#meguji
牛乳乳製品をめぐる情勢(R6年9月)
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/lin/attach/pdf/index-95.pdf
食肉鶏卵をめぐる情勢
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/#meguji
食肉鶏卵をめぐる情勢(令和6年9月)
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/attach/pdf/index-246.pdf
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