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『自分を出せ』と言われても出す自分がないから困ってしまう件

 私は『個性が大事』という時代に育ちました。それは、今のネット社会とはちょっと違う価値観の世界にいたということです。
 最近『個性』という言葉を聞かなくなったなあと思います。みんな同じネットを見て、とにかく『いいね』の数が大事で、つまり『万人受け』を重視してるわけですよね。もちろんニッチな分野もあるけど。

 オラクルカードとかで、
『本当の自分を出しなさい』
 みたいなアドバイスがよく出るんですが、
 そのたびに、

「そんなもんないと思うけどなあ」

 と思ってしまう。

 もちろん、社会で生きてる以上、本音と建前はあります。私は元々だらしない人間なので、スキあらばポテチでも食って昼寝したいタイプですが、もちろん会社では『真面目な会社員』を装ってます。仕事はわりと真剣にやってます。

 でも、いわゆる世の中が
『本当の自分を出せ』
 と言ってくる時、
 それは、素の自分を出せという意味ではなく、

『もっとまともになれ』
『俺の期待する水準になれ』

 という、都合や価値観の押しつけになっていないだろうか、と思ってしまう。

 自己啓発やスピリチュアルで語られるところの『本当の自分』という言葉は、

『夢を叶えた自分』
『社会的に成功した自分』


 という意味で使われていることが多い印象を受けます。いかにも、ダメな自分が『本当の自分』に『覚醒』した瞬間に全てが上手くいくかのような錯覚(以外の何物でもないと思う)を与えそうな表現。

 でも、『本当の自分』って、
 そんなにいいものじゃないと思う。

 臆病で挑戦できない自分。
 人付き合いしたくない自分。
 病気で動けない自分。
 スキあらば昼寝したい自分。

 本当って、そんなもんだと思う。
 だから、本当の自分は成功しない笑 
 そもそも成功を望んでいないかもしれない。
(なんか色々めんどくさそうだと思ってしまう。金持ちには税金の問題がつきまとうし、有名な人には『有名税』って言葉がありますね。ネットの時代は誹謗中傷の時代でもあるし、『目立ちたくないからSNSや動画には出ない』という自由も必要だと思う)。


 本当の自分とは、
 今、この瞬間に生きている自分、
 生身の自分そのものであって、
『将来こうなってたらいいな』
 みたいな未来の妄想ではない。


 まず、今の自分は何者でどんな奴か。
 それがわかっていることが大事なんです。
 今どんな暮らしをしていて、
 何を考えてどんな行動をしているか。
 それこそが『本当の自分』です。

 それがわかってはじめて、
『じゃあ、こんな自分にできることは何かな』
 と、先を考えることができるんです。
 今の自分がわからない人に、
 輝かしい未来なんて来ません。

 
 それと、私には特技というものがなく、好きなものもタロットとアクセサリーくらいしかないので、
『特徴がない人』なんですよね。
 なんにもないオバハンです。

 だから『本当の自分を出して!』
 みたいな言葉で、
 ありもしない特技を求められると、
 本当に困ります。
 だって、ないものは出せないですから。


 ネットの時代は、一芸に秀でている人というか、いわゆる『持ちネタ』を持っている人が圧倒的に強いですね。動画とか見てても特徴のある人のほうがやることが面白いし、当然いいねもたくさんつきます。

 でも、世の中の大半の人は、そんなに特徴も持ちネタもないし、そもそも目立ちたいと思っていないと思うんですよ。

 テレビの時代は『個性』の押し付けが強かったけど、今はそれが、SNSや動画で『自分を発信するべき』という圧力に変わってますね。なまじみんなスマホは持ってて『必要な機械はみんな持ってるんだからできるはずだ』と思われてしまう。
 でも、目立ちたくない人にとっては、
 動画もSNSも苦痛ですよ。
 自分のダンス動画とか自撮りを平気でネットに出せる人が、私には理解できない。危ないと思わないんだろうか。誰が見てるかわからないのに。


『自分らしさ』とか、『本当の自分』とか、
 それは本人が一番良くわかっていて、
 他人の都合のために作るものじゃないし、
 ましてや、
 成功を保証するものでもない。
 

『本当の自分』なんてどこにもない。
 ただ、『今の自分』がここにいるだけ。


 





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