貧困の人は清くけなげでなければならない?そんな訳ねえわ。
先日、テレビで林芙美子の放浪記がとりあげられていました。
解説の方がこんなことを言っていました。
「私達は貧困の人にあるイメージを持っている。けなげだとか、助けたくなるような人であってほしいとか。
でも、当事者(林芙美子)は違う。
彼女の悪そうな行動は、彼女が貧困出身だということを理解して見る必要がある」
正しい言い回しは忘れましたが、そんなことを言っていました。
ちょうど、図書館で借りた『考える快楽』にも、昔のロンドンの貧困について似たようなことが書いてあったのです。
普通の(裕福な)人が貧困の人に勝手に押し付けがちなイメージが昔からあることが、ここに書かれているわけです。
『清貧』という言葉もありますしね。
貧乏と道徳を結びつける考えもありますね。
貧困の人には支援が必要である。
という事実を棚上げにして、
ただ、節約しろ、忍耐しろと言う。
自己責任論ですかね。
しかし、現実には、
社会的に、時代背景的に、
仕事が見つからない、
または、したくてもできない人が、
たくさん存在していて、
(障害者や高齢者は常にそうでしょう)。
貧困の多い地区には犯罪がはびこり、
身の回りを手入れする金銭的余裕もないから、
見た目も地味に、不潔になり、
仕事もないから、
万引きや変な犯罪に走りやすくなる。
生きるために。
最近特殊詐欺に走る人が多いそうですが、
あれは、個人が悪いというよりは、
社会構造の問題じゃないかと、
思うことがあります。
犯罪者が簡単に人を募集できる環境。
正規の仕事が少ないこと。
非正規で働いたところで「生かさず殺さず」の苦しい暮らしを強いられるだけだと、みな知っていますし。
もちろん、特殊詐欺がこれほど話題になってる時に、金目当てだけでやってしまう人はかなり愚かで、考え方に問題があると思います。が、
ネット社会になってから、いや、昔から、
世の中、お金、お金になってしまって、
それと同時並行で、不景気が長く続き、
お金が必要なのに手に入らない、
そういう時代が長かった。
氷河期時代から長く貧困に耐えていた私くらいの非正規世代は、今、歳をとって疲弊しています。体調を崩したり病んだり。自力ではどうにもならなくなっています。
貧困は、つらいだけです。
ほんとに、ただ生きるだけでも、
かなりしんどいです。
非正規、最低賃金の生活は、
今日の食べ物どうしよう、です。
なのに、世の中は、
未だに、
貧困の人は清く正しく美しく、
忍耐すればいいと思っている。
ネットにちょっと「刺し身を買った」とか書くと「そんな贅沢をするな!」と書き込まれる。たとえそれが夕方に半額になったものであっても。
貧困(だと思って見下しているところ)の人が、少しでも金を使うと、まるで自分の金を使われたかのように怒る。
なんなんですかね、あれ。
税金払ってるから?
貧困の人も消費税は払ってるんだよ?
自分の生活費はちゃんと稼いでるよ?
何が不満なの?
自分は恵まれた正社員のくせに。
たまたまいい時代に当たって、
たまたま健康に生まれただけだろうに。
普通の人が貧困の人に持っている勝手なイメージは、金持ちに持っている勝手なイメージより厄介です。
金持ちもいろいろ言われて迷惑でしょうが、
貧困の人はもっと苦痛です。
ただでさえ生活が辛いのに、普通に食品や衣類を買っただけで「そんな贅沢をするな」とか言われたら、生きていけないですよ。
それに、貧困の人だって魂のある人間ですから、趣味や好みや推しがあります。
それを贅沢と言われたら、生きていけません。
この話で思い出したのが、
ある裕福なご老人が、支援が必要な若者の施設を見学した時、
「金髪の子は支援したくない」
と言い放ったという話。
あ〜そうですね「黒髪の真面目でおとなしい健気なかわいそうな子」のイメージで支援すべき若者を想像していたんでしょうね。そしたら髪染めてたからびっくりしたんでしょうね。
うんざりしませんか、こういう話聞くと。
都合のいいイメージを相手に抱いて、
そのイメージと合わないと、
「支援したくない」
「関わりたくない」
となる。
「アフリカのかわいそうな子には支援したいけど、近所のホームレスは汚いからやだ」
みたいなやつですかね。
支援にイメージバイアスがかかってしまっている。これだと、本当に支援が必要な人に支援が届かないんですよ。
本当に困ってる人って、
身綺麗にしている余裕も、
人のイメージに合わせてる余裕もないから。
震災の時を思い出してくださいよ。
豊かな皆さんには、ぜひ、
貧困の人によけいな道徳やイメージを押し付けて、余計に苦しめるようなことはしないでください、とお願いしたいです。
自分がそういう人に対して、
どんなイメージを持っているか。
一度、考えてみてください。
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