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デンマークの幼児教育で体験させるデモクラシー(民主主義)を考える。

前回に引き続き、今日もペダゴウ(社会生活担任)のお話を交えてお届けします。
子どもとの関わりで教えているのが「Democracy(民主主義)」です。

私たちは学校で教わったのはテストに出るデモクラシーですが、デンマークはユーザーデモクラシーという言葉もあり、日本のいうそれとはちょっとニュアンスが違ったりします。

今日はその辺りを紐解いてみたいと思います。


Democracy(デモクラシー)を体得する

Chiba:最初に伝えておきますが、デモクラシー、日本語で言う民主主義は言葉で教えるものではないのです。幼児期から遊びの中でも十分に教えられます。

幼稚園児は遊びたい盛りです。いわば、遊びが仕事なのですから。
読み・書き・そろばんを小学校と同じように教えるのには土台、無理があります。

人格形成の初期段階に無理やり読み書きだの習い事だのを詰め込まれると、情緒的な発達が締め出され偏った人間になってしまいます。

デンマークでは人格の80%くらいまでが6歳ころまでに出来上がると言われていますので、学校に上がる前は自然に遊びを主体とした人間育成の基盤を作ることが大事だと思います。

Sue:日本はその点、知識も礼節も遊びにとり入れることについては、とても長けていると思っています。

季節やイベントを体験したり、教えたり、歌や、制作、運動など、保育園・幼稚園によってはかなり差はあれど、先生方としては様々な場面を通していろいろなことを学ばせてくれます。

一方、私は「自分の意見を言う」「お友達の意見を聞く」「大勢の中で意見をまとめていく」という大人の社会で必要とされるコミュニケーション、また、折り合わないときに立ち直る心や、話し合う勇気など、情緒面はもっともっとたくさん時間をかけて、いっぱい失敗して、大人になるまでの間にじぶんなりのコミュニケーションを見つけるためにももっとやるべきだと思っています。そこに答えがないからです。


Chiba: 日本は「静かにして先生の話をよく聞きましょう」が一般的でしょうが、デンマークは「自分の意見をもっと話しましょう」が一般的です。

デンマークの教師(クラス担任)やペダゴウ(社会生活担任)は、この幼児教育を誰かに説明するときに、「子どもは2本の足で立つ」と言います。

右足は知識、左足は情緒(左右変えても構いませんが)この双方が両立してない子どもは人生を歩むのが困難になると予想されるからです。

言い方を変えると、教師は知的水準を上げるだけでは未来を生きる人間を教育をしている教育者とは言えないことになります。

ちょっと考えてみてください。

幼稚園から1年生に入って来た子どもが読み書きができ、算数ができたとしても、何らかの形で自分の言葉で語れない、自分の意見を伝えられないならば情緒面では未発達であり、発達が遅れていると言えます。

若年の親御さんで、自分を御することも大変だったりすれば、こどもに向き合って、しっかり育てられない人もいます。
その意味でもデンマークの幼児期・小学校低学年生にはベテランの社会生活担任が配置されているわけです。

Sue:私の友人がコペンハーゲンに住んでいますが、彼女は日本人なので、デンマークの保育園に預けることにやはり不安を持っていました。自分だって外国人だし、デンマーク語苦手だし。

でも、ペダゴウの先生が本当にベテランで初めてあった瞬間に、
「あぁ、もうこの人に預ければ絶対大丈夫だ」と直感で思えるほど、本当に安心感がすごいあったそうですよ。


Chiba: そうです。ぺダゴウは親に代わって、親の気持ちを汲んで育児支援をするわけですから。プロフェッショナルですよ。国がそのレベルを保証しています。どんな遊びを通して、どのように民主主義を体験させているかは、次のコラムのときにでも例を通してお伝えしていきましょう。

ところで、民主主義って、何となく・・・じゃないですか?

Sue:なるほど・・・・教育者である教師、ペダゴウ。その役割と連携はとても重要ですね。

さて、またもや話があちこちに入ってしまいましたが、、、先ほど、民主主義についてお話しされていました。

デンマークではとにかく大切にされている概念なのはわかりますが、私にはとにかくとっつきにくいというか、生活に馴染みがないというか。

デンマークは資本主義であり、民主主義ですよね。


デンマーク国民一人当たりの総生産GDP:
59770US弗 627万5850円 (1ドル105円換算)(世界第10位、日本25位) 出典IMF2020年10月14日

34年連続で国民の数も増加していますが、やはり教育現場だけでなく、私がデンマークに滞在している間でも、いつも会話の中でよく出てくるのは「Democracy(民主主義)」という言葉です。この言葉、日常茶飯事で皆さん使っていると聞きます。

でも、日本で日常会話にその言葉は出てきませんし、「主義」というとなんだか「偏ったイメージ」を持つ人も少なくありませんが、
もっと、デンマーク人の誰もが言っている「民主主義」ってなんなのか、わかりやすく噛み砕いて伝えてくださいませんか?

Chiba:そもそもヨーロッパ人が使ってるデモクラシーという言葉の語源はギリシャが発祥地で「主義」という言葉は入っていません。むしろ権利という言葉が入っているでしょう。主権在民たるゆえんですよね。

私の言葉で表現するならば、Democracy(民主主義)とは、 その国にある人々の各層に渡る生活に密着した主張を聞き、可能な限り実現してあげることでしょうね。
要するに人々の主張は「民意」ですから、民意を尊重することが主権在民・民主政体。で、これを日本では民主主義と呼んでるのです。

日本語の民主主義の「主義」を言い換えてみよう

Sue:Chibaさん、漢字が多くて目がチカチカしてきました笑

Chiba:はぁ〜!?(笑)確かに、私たちは学者ではなく、素人ですから、もう少し身近な言葉で考えてみましょうか。

「主義」という言葉がつくと、目の錯覚?なのか、混乱しやすいのかもしれません。では、「主義・国家」という言葉を「制度」に言い換えてみましょう。

デンマークは社会福祉国家だから、社会主義の国と思っている人もいますよね。これは「社会」という言葉がついているから連想してしまう方もいるのでしょう。

デンマークの経済は自由競争、資本主義の国です。
とすると、デンマークは「資本主義→資本制度」の国となります。

そして、デンマークは社会福祉国家です。
「国家」という言葉を「制度」と変えてみたらデンマークは社会福祉制度の国でもあることが理解できます。

デンマークの社会福祉国家は社会民主党が作り上げたとも言われていますが、最近は保守系の内閣と社会民主系の内閣とがおおよそ10年ごとくらいに交代してます。

保守であろうが革新内閣であろうが資本制度(主義)・社会福祉制度(国家)を維持していこうという姿勢に変わりがないことがデンマークの政体の特徴です。

Sue:デンマークは民主主義→民主制度、がよく働いている、ということですが、今回の新型コロナ、特にロックダウンなどで注目されているのが北欧の女性首相たちの決断力の速さとメッセージの伝え方です。
与党、野党がいるとなんだかぶつかって速さが求められないイメージがありますが、実際のところ、デンマークはどういう議会運営なのですか?


Chiba:コロナに対する緩和政策、緊急事態宣言(ロックダウン)のような場合でも、発する前に野党と話し合った上で実施しているのが民主主義です。
こっちはメッテ首相は政策をだす前に野党との協議をしっかりした上で実行しています。

10年ごとに政権が変わるけれど、国民全体に関わる福祉に対する考えに対しては細かいところの違いはあるにせよ、国家のありかた、経済のあり方という点では大きな視点では変わらない、ということは先ほど述べたことにつながりますね。


<次回に続く>

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