とあるマンション管理組合がEV充電器を導入する物語 第10話
これは、とあるマンション管理組合がEV充電器を導入するまでの、まちがいだらけの物語です。
なお、この物語はフィクションであり、実在する個人や団体とは一切関係ありません。あくまでエンタメの範囲でお楽しみください。
物語のプロローグはこちら。
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「では、相沢さん、お待たせしました。A号棟について傷んでいる場所と状態を教えていただけますか?あと、先ほどの雨漏りは何号室でしょうか?」
「え、あ、えっと、傷んでるのは、玄関のところとか、あと、さっき言った芝生が剥げて土が流れて来てるところとか。雨漏りは、えっと、あの人は何号室だっけ、えっとー、ほら、あの人・・・」
管理組合月例理事会の進行役である有田から、具体的な不具合箇所について質問された、A号棟理事の相沢は、答えることができなかった。
有田は、このタイミングで会議を主導することにした。
「わかりました。他の棟でも、同じように雨漏りとかされているというお話は出ていますか?」
他の理事たちは、うなずいているが、誰も発言はしない。発言すると、突っ込まれて、答えられない場合に恥をかくという認識をしたようだ。
よし。静かな間に会議を進めよう。有田はそう決意した。
「なるほど、皆さんも、傷んでいるところがあるとか、雨漏りしているお家があるという話は聞いてらっしゃるということですね。」
理事たちは、うんうんとうなずく。
「ではですね、改めて皆さんに、来月の会議までに、どこにどんな不具合があるのかを確認してきていただきたいと思います。例えば、今、お話が出た雨漏りや、ポーチなどですね、これを、建物ごとにまとめて来ていただければ、それを基に、現場の担当者を手配して、調査ができますが、いかがですか。」
ここで、また、相沢が声を上げた。
「え、ちょっと待って。なんで私たちが調べてこないといけないんですか?それは、管理会社がすることなんじゃないんですか?」
先ほど、見積りを取れと言われた件で機嫌を損ねていたのか、相沢はやけに攻撃的に切り出した。
「だって、ほら、私たち毎月、トアールコミュニティさんに管理料を支払っているわけでしょう?」
「相沢さん」
「だったら、管理会社さんの方でここが傷んでいますから修理しておきます、とかってなるんじゃないんですか?」
「相沢さん」
「だって、何のためにお金払ってるのかってなりますよね?」
「相沢さん!」
有田は、これまでも何度かしてきた説明をまた繰り返すことになった。
「相沢さん、他の皆さんも、聞いてください。これまでも、何回かご説明してきましたが、この、トアールマンションの管理の主体は、管理組合である皆さんご自身です。管理会社というのは、管理組合との契約に基づいて、委託された業務を行っています。管理費というのは、契約した内容を履行するためのお金です。これは、繰り返しますが、管理組合の皆さんと、私どもトアールコミュニティとの間の契約に基づいています。契約内容に含まれていることは、当然、やりますが、それ以外のことにつきましては、例えば、雨漏りがした、何かが壊れた、となった場合は、ご連絡をいただいて、調査をして、お見積りを出して、修理をするのかどうかを管理組合の皆さんでご判断いただくことになります。」
つづきは、こちらから >>> 第11話を読む。
(マンション管理組合についての記事はこちら)
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