この家におりたいならわたしの言う事ききや〜はじめての呪い〜

 わたしが覚えている、いちばん古い、人からかけられた言葉がタイトル。
 やばいね!

 わたしの育った家というのは、少々…かなり特殊で、父が入り婿、しかしわたしが幼いうちに祖母にいびり出され、わたしは祖父母と母に育てられた。
 この祖父母というのが…本当に仲が悪くてですね。
 玄関マットの方がまだ大事にされていたぐらいで。
 このはじめての呪いのときも、ちょうど喧嘩中だったわけで。
 まだ幼稚園にも行っていない、いたいけなわたしは、どうにか仲裁しようとしたわけです。
 ちょっとこまっしゃくれた感じだったかも、でもまだ3歳とか4歳ぐらいの話。なんとかしたかった。
 それが祖母の逆鱗に触れたのか、タイトルの言葉につながるわけです。
 庭に呼び出され、仁王立ちで夕日を背負った祖母に言われた一言。
 よかれと思ったわたしの行動は、どうやらこの絶対君主のお気に召さなかったらしい。
 足元が崩れるような不安感。さあっと血の気の引く感覚。自分がいちゃいけない存在のように感じる。
 これから幾度となく味わうその感覚の、はじめて経験したのがそれだった。
 祖母のお気に召す存在でなければ、自分は存在してはいけない―それがはじめての呪い。


 これが今どうなったかというと。祖母は認知症を患い、今は身の回りを母に面倒みてもらってやっと生きてる状態です。
 自分よりも圧倒的に無力な存在になり、母やわたしの手を煩わせないと生きていけない祖母。
 幼い頃はこれが逆だったんです。経済的に無力で、誰かに助けられないと生きていけないわたしと、夫もおらず、子どもの面倒をみてもらわないと働けない母。
 時を経て立場が逆転した今、ようやくあのときの仕打ちを、心のままに怒れるようになりました。

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