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再読はあまりしないけれど

月に15冊ほどの本を読む。
書店で。
図書館で。
読みたい本が視界にどっと押し寄せてくるのを遮れない。

だからというわけではないけれど、再読はあまりしない。
しないのだが、例外もある。

諸田玲子『楠の実が熟すまで』
江戸時代、公家の不正を幕府が摘発した”安永の御所騒動”に材を取った小説だ。
ヒロインは、不正を暴くためスパイとして公家の屋敷に乗り込む。
嫁として体を張っての隠密御用である。
きな臭い殺人事件もあれば、切ないロマンスもあり、最後は……。

くーっ。
琴線に触れまくりだっ。
特にヒロインの心情が。

物語の動きとヒロインの心の動きが見事に連動していて、読ませるのである。
さすがでございます、諸田玲子さん、大好きです!

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同じ事件を扱った小説に、平岩弓枝『遺り櫛』がある。
(角川文庫『ちっちゃなかみさん』所収)
こちらは短編。

諸田さん描くヒロインとはだいぶ違う造形となっているが、これはこれで良き。
長編と短編それぞれの魅力を味わうにも、読み比べは楽しい。

* *

たくさんの本に出合いたい、活字の海に溺れたい。
それが自分の欲求だが、ひとつの作品を一生をかけて精読するという憧れもある。
本がヨレヨレになるまで読み尽くしたい。
『楠の実が熟すまで』がそうした一冊になりそうな予感がする。

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読んでいただきありがとうございました。


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