恵みの島、奄美　1

２月下旬のある日曜日、午前11時。
夫はベッドで「眠れる森の美男」のごとく眠っている。私はオンラインでヨガのレッスンを終えたところだ。いつもの日曜日と同じような過ごしかた。でも私たちが今いるのは自宅ではなく、奄美大島のホテルだ。

そう、私たちは前日から奄美大島に来ている。年に２回ある私の連続休暇に合わせて、今年は奄美大島にやってきた。
奄美に来るのはこれが初めてだ。私には、寒い時に寒いところに行くような趣味はない。寒い時には避寒に行くに限ると考える。だから行き先を奄美大島にした。
なぜ奄美かというと、海がものすごく綺麗なイメージがあるからだ。沖縄の海も綺麗だ。でも奄美のそれは、少なくとも沖縄本島の比ではないだろう。そう期待したからこそ、奄美を選んだ。
しかし到着日は雨。飛行機では現地は小雨、とアナウンスされていたが、小雨というには降り過ぎている。
もっとも前日、関東では所によって雪だったから、贅沢は言えない。この時期、下手をすれば雪とぶつかって飛行機が飛ばないことだってあるのだ。雨くらいで文句を言ってはいけない。
それでも、雨だと海の色がダメなのだ。晴れていればとても美しいであろう海の色が、全然出ない。残念至極だ。４日間滞在する予定なので、その間に一瞬でも晴れて、本来の、なのかなんなのかわからないが、美しい海を見たいものだ。

私は、いろいろなものを見学しまくる旅行も嫌いではないのだが、のんびりする旅行も好きだ。何もしない贅沢、というあれだ。とりわけうちの王子様（夫のことですね）は、のんびり旅行が大好きだ。というかのんびり旅行以外は好きではないと言っても過言ではない。
だから先月妹と行ったシンガポールの激安弾丸ツアーは、まず彼を誘ったけれど、当然のようにお断りされた（だから誘いに乗ってくれた妹と行った）。仕方ないので彼との旅行先は、奄美大島のんびり自由旅行になったのだ。ちなみに、奄美は食事が付いていないことを考えると、実はシンガポールへの旅行代金より高い。そう考えると、シンガポールツアーはやっぱり安かった。

そうやって、せっかく来た初奄美なのに、私たちはどこにも行かずにホテルにいる。そして私はこんな文章を書いている。

でもそれこそが、のんびり旅行の醍醐味なのだ。海の見える部屋でヨガをやるなんて、最高じゃないか、昨日に引き続き、今日も晴れてはいないけれど、そして今いるホテルは、高い旅行代を払っているわりに、全然いいホテルじゃないけれど。
初めて奄美に来たからって、いろいろ観光しようとするなんて、のんびり旅行の達人からすると、邪道なのである。〈２へ続く〉