見出し画像

2021年の個人的な楽曲ベスト10

Wolf Alice / Smile

とにかくイントロの衝撃にやられたのが第1印象。ヘビーなギター、ベース、ドラムの一斉射撃のような破壊力。以前にも何度か聴いてましたが、ここまで突き抜けたエッジの効いたロックサウンドを鳴らす印象はなかったのですが、覚醒されたかのような振り切りよう。ラップのような気怠い女性ボーカルも、音を際立たせるためにいい意味で楽曲のバランスや世界観が成立していている。
是非ライブで生音を体感したい楽曲である。本国イギリスの方ではグラミー賞(最優秀ロック・パフォーマンス部門)にノミネート、ブリット・アワード(新人賞)、マーキュリ・プライズ、アイヴァー・ノヴェロ賞、NMEアワード9部門ノミネート&2部門受賞ってとんでもなくブレイクしてるんですね。その割に日本ではまだ知名度低いのが残念。


Little Simz / Introvert

2021年は色んな音楽誌で軒並み年間優秀アルバムに登場する新世代ラッパー。流行りのエモラップ、チルなトラック、ジャジーテイスト、オールドスクール・・どのタイプにも当てはまらないオリジナリティーの高さと堂々たる真摯なリリック。未だ米・英ではHIPHOPがチャート上位にくる大衆音楽として確立してきたが、自分の中では衰退というか興味が薄れつつあるジャンルで嬉しい登場である。
格式高い上品さと、ジャンルレスなサウンドアレンジが新しくモダン・クラシックと言われるのも納得。自身の血筋であるアフリカンスタイルのラップも見事に絡む。もちろん何を言ってるか歌詞は読み取れないが、選曲したこの壮大なイントロに力負けしない芯の強い魂のこもったラップスタイルがかっこいい。ポップミュージックに傾倒しないHIPHOPという意味では近年稀に見る存在でこれからも見守っていきたい。


折坂悠太 / 鶫(つぐみ)

YouTubeのコメント欄を見ると、M-1アナザーストーリーから感動したという声で辿り着いた人が多い。実際に番組を見ていたが、「夜が明ける」というサビの高揚と、苦労が実り新しいスタートを歩み始める芸人の姿が恐ろしいほどマッチしていた。一気に今までのバックボーンが肯定される人生の切り替わり地点。この曲を選曲した番組スタッフも鳥肌が立ってしまったに違いない。
形容しがたいが、独特の昭和感漂う歌声。さだまさしに通じる日本の原風景を思わせるような楽曲。忙しい日々の中で起き忘れた何かを思い起こすような。きっとコロナ禍の苦しい状況にもこの「夜明け」から見える希望に癒された人も多いはず。もっと売れてもいいのになと個人的には思う珠玉の名曲。


Kings Of Convenience / Song About It

シンプルで無駄がなく、アコギの音色だけで極上のメロディを奏でる最高峰といえばこのコンビ。昔からメディアでの評価が高く、否が応でもにも作品に導かれたのが前作のアルバム。最近の流行りや時流に全く流されず、ただただ心地よい最高の作品だったのは記憶に新しいはずなのだが、、今回の新作は12年ぶりという衝撃。その間に全く廃れず、私のiPodの一軍に居座り続けたのはそういった不変のメロディの強さたるもの。
イントロから体に染み渡る優しいアコギの音色。メロディだけでなく音の出方も実はこだわり抜かれているような飽きのこないクリアな響き。どこか一般的なアコースティックとは一線を画しているように思える。お風呂にでも浸かってゆったり何も考えず、時間を忘れて聴いていたい1曲。いい意味で力の抜けたボーカルとハーモニー。なぜか物足りなさを感じない、耳に寄り添う心地よさはずば抜けている。


The Fratellis / Living in the Dark

ザ・フラテリスといえば、iPodのCMソングに抜擢されて一時期は日本でもブレイクしたバンド。調べると日本でもアルバムが20万枚のセールスだって、2007年のようですが当時の感覚でも、かなり洋楽アルバムとしては売れてますね。そこから3回ぐらい活動休止してるようで、色々苦労したんですね(知らんけど)
そもそも私はそこまで好きでもなかったので、何の情報もなく久々に聴いた人である。聴いた印象では随分と作風も変わった印象。当時よりもポップさが増し、なんかキラキラしている。当時のファンからすると、がっかりな人もいるでしょうね。中でもキラキラ度合いの強い楽曲、タイトルの意味は暗闇の中で生きるなのですが、音は真逆をいくような煌びやかなギターに、どこかカントリー調な雰囲気の陽気なサウンド。とにかく底抜けに明るいロックとしては久々に出たヒットソング。


Charlotte Cardin / Meaningless

読み方はシャーロット・カルダン。カナダのポップシンガーで、今回の曲が収録されたアルバムがデビュー作みたいです。カナダではアルバムがチャート1位になったようですが、そんな情報ぐらいしか探せないぐらい日本では知名度低そうですね。
Meaninglessは日本語で無意味。タイトルからして明るくポップな歌ではなく、心のモヤモヤの中で戦う意志の強い女性といったイメージでしょうか。ハスキーで印象深いボーカルが耳に残り、曲中で随所に見られるボーカルの多重録音が声の特徴を見事に活かした加工で、楽曲のクオリティを一段階アップさせている。声を楽器のようにとらえたアレンジが素晴らしい。


にしな / ケダモノのフレンズ

曲名と同じようなアニメがあったので主題歌と思ってましたが、「ケモノフレンズ」とは一切関係ないみたいね。危なく知ったかぶりしそうになりました。アニメ自体全く知らないけど、何かしらのアニメ主題歌であってもおかしくないハッキリした世界観。使われるとしらエンディングでしょうか。ポップで明るいリズムに、どこか切ないループ音と歌声。
可愛い言葉と歌詞の世界の中で隠れてしまっているが、実はどこかヒップホップのようなトラック的サウンド。音楽の構成だけを聴いてると、小沢健二の今夜はブギーバックみたいな風にも聴こえてしまう...のは私だけでしょうか。そんな巧みさが垣間見れる。


Lake Street Dive / Hypotheticals

全く知らない若くもない5人組(失礼)。初めて聴いた時にはABBAの曲でまだこんな隠れた名曲があったと思いましたね。こんなグッドメロディーで、一瞬にして心晴れるようなもんは過去の名作としてしかあり得ない程のクオリティ。あまりにいいのでカバー曲?と錯覚。(実際にそうだったらすいません)いわゆるビートルズから始まる洋楽POPSの歴史から続く音楽で、まだこんな新しいメロディを生み出すことができるんだと思えるほど、見事なソングライティング力。
イントロでの女性ボーカルソロのワクワクさせる引っ張り具合と、期待を裏切らない心地よいメロディとともに流れるサウンド。小粋でカラフルでハッピーで、色んな要素がまるで虹を描くようにキラキラと降り注ぐごとく展開する。やっぱり誰かのカバーかな、この曲。できすぎて疑ってしまう。


Official髭男dism / Cry Baby

もはや誰もが知ってる髭男。この曲を初めて聴いたのは「東京リベンジャーズ」の主題歌である。その時はアニメを知ったタイミングが後発だったのもあり、一聴した時に何となくこの曲は髭男のまだ売れてない時の曲かと認識。あのPretenderの後からすると、あまりにもマイナー調で、ある意味インディーズっぽい攻めの雰囲気が感じられたのだ。いや、知らんがなというツッコミはさておき...
聞き込んでいくとそれぞれの楽器パートに見事に見せ場を作ったサウンド面でも聴きごたえのある楽曲。オープニングから分厚くうねるベースライン。ベース音好きにはたまらんよこれ。サビの切り替わりでの激しいドラミング。間奏に入り込んでいく時のおもうまいギターリフ。よく言われるのは転調の多さですが、それ以上に楽器で楽しませる姿勢がこの曲では感じられていい。正直、Pretenderを聴きすぎて飽き気味だった時に放つ楽曲としては、最高の展開である。ドメジャー路線を突っ走りながら、自分みたいなコアな層も掴める才能はミスチル、スピッツ以降のJ-POP王者と言えるかも。


Lastings / Deja Vu

今回初めて出会ったエレクトロユニット。まずネット上では英語での記事しかないので日本での知名度はかなり低そう...見た感じ何となくそう思ったけど兄弟らしい。出身はオーストラリア。ヴィジュアルも両者文句なしの面構え。何とかネット記事を翻訳して深掘りしてくと、驚くことに日本にルーツを持っており、この曲が収録されたアルバムは青森県の静かな漁村で制作されたとか。んー、このクオリティと青森が全くもって想像つかない。
全体をまとうクールな印象が寒い地域の影響で、空間の広がりがそう感じさせるような気もするが、どちらかというと都会的。ただ変なオシャレさはなく、この曲に限ってはストーリー性を持たせたサウンドである。とにかく一貫したクールさが心地よく響き、淡々として飽きさせない見事な音作り。歌詞は全く分かりませんし、まぁ読もうともしないんですが、Deja Vuという現象を偶然ではなく、ドキドキさせながら必然に結びつけるような曲。cool&beautyという言葉を楽曲、見た目ともに差し上げたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?