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特に意味はありません#2

サーチライトが曇天を照らしているが、その先端には決して目には入れてはならないものばかりだ。輝かしい光は点滅を繰り返して、銀河鉄道は大気圏を貫いて行った。私の口から出た吐息が白く、白く、霧のように。
夢も理想も希望も真心も懐かしさも全てが顔に、霧がかかってゆく。
まだ、まだだ!待ってくれ!そう叫ぶ私の声はもう出ない。
あの落ちてゆく日の中へ列車は吸い込まれていく。
わたしには帰るべき場所があるのか?
あの人との別れ、やがて進むべき場所があるのか?
終わりゆく一つの針がふたつ、明日に方角で一つに重なり、歩み始める。
過去へ戻りたいと願うほど,輝かしく、甘い蜜のようなものではなかった。血は乾き、人々は飢えている。光は人を貫き、闇は心を掬った。
私は行かねばならない。
そう、これは子供騙しのSFなんだと息をのむ。
目を瞑り、深呼吸をすれば私は戻らねばならない。
二度とない光を、思い出すことはないだろう。

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