お客様インタビュー・Yuta Cabezon Konnoさん(版画家)
日本を拠点に海外でもご活躍の版画家Yuta Cabezon Konno さんがご来店。
お皿を洗いながら耳を澄ましていると、お客様との楽しい会話が聞こえてきました。
お隣
…え、版画家さん?! どんな作品か見せてもらっていいですか?
Yuta
はい、今はこんなものを作っていまして…(スマホで見せる)
お隣
これ、版画? めちゃくちゃ細かいですね。
Yuta
銅版画です。版画の中でも細かい表現ができる手法です。銅版画はもともとイタリアで出来たもので、自分は日本で勉強したあと、本場イタリアの工房に勉強に行きました。
お隣
言葉とか大変だったでしょう?
Yuta
たまたまなんですが、大学が英米語学科で、第二外国語でスペイン語もとっていたんです。イタリア語はスペイン語と文法的にそっくりなので、なんとかなって。工房の会話は毎日そう変わらないので、辞書をひきひきですが二週間くらいで慣れました。
銅版画の基礎は日本でやっていたし、細部を補完するような感じで。
専門用語を覚えてしまえば、あとは何とかなりますね。
お隣
どのくらいの期間いらしたのですか?
Yuta
まず一年勉強して、そのあとアシスタントで残らせてもらい2年ほどいました。もっといたかったのですが、ビザの関係で帰国しました。帰国後もやりとりはあって、この冬にイタリアで個展を開きます。
お隣
すごいですね。…あの、ぶしつけですみません。版画家ってイタリアだと食べていけるんですか。日本では難しいと聞きますけど…
Yuta
状況は日本と変わらないと思います。
版画を売って食べていくのは難しくて、収入を得るには教える仕事に就く必要があります。
自分は海外や日本でWS(ワークショップ)を開催していますが、普段は週5日早朝に清掃アルバイトをして、日中制作しています。版画は光の加減が大事で、蛍光灯でなく太陽光で制作できるのはいいのですが…できればもっとWSをやったり、版画が売れるといいなと思っています。
お隣
海外のWSというのは、イタリア時代のコネクションがあるのですか?
Yuta
募集があるときに応募するんです。知り合いが呼んでくれることもなくはないですが、基本的には毎回書類ほ書いて送っています。日本は木版画の伝統があるので、木版画のWSは企画が通りやすいです。技法的に銅版画の多色刷りは時間がかかるんですが、木版画は比較的短時間で多色刷りが可能です。
きれいな色の版画を見るのは、すごく楽しいですよね。
はじめて海外でWSの講師をしたときは、15人の定員に40人の応募がありました。日本では考えられませんが…
お隣
25人は断ったんですか?
Yuta
頑張って全員に教えました(笑)。
版画は手順があって、それに沿って手を動かすと没頭できて楽しいんです。皆さん喜んでくれて感動しました。
自分も子供の頃学校でやった版画の授業がきっかけでこの道に入りましたし、とにかく1度体験するのはお勧めです。
お隣
これもぶしつけですみません。版画って何枚も刷れますよね? その分安くなったりはするんですか?
Yuta
いくらでも刷れるように思えますが、実は限界があるんです。銅版画は機械によって強い圧をかけて刷るので、何枚も刷るうちに線などが押しつぶされてしまいます。銅版画以外でも、やはり刷れる枚数は限られています。
とはいえ一枚絵よりは安くなる傾向があるので、最近はあえてする枚数を抑えて、価格を調整することもあるようです。
お隣
(スマホの作品をのぞき込み)いいなあ…イメージが膨らみますね。
Yuta
銅版画の余白が好きなので、自分の場合はあまり描きこみすぎないものが多いです。具象の心象風景をやりたくて。
高校生の頃から哲学とか詩に興味があって、哲学科に行こうと思っていたら、行きたい大学の哲学科は数学が必要だった。自分は文系で数学をやっていなかったので、特に目的はないけれど語学をやることになって…。
お隣
でもその語学に助けられて、詩的で哲学的な作品の個展が開ける。
よくできていますね。
Yuta
バイトしながらですけどね(苦笑)
(おわり・収録2019年秋)
Yuta Cabezon Konnoさん
1984 年生まれ。イタリアの版画学校 Il Bisonte で工房アシスタントを勤めた後、版画ワークショップと自身の作品の展示を国内外で行う。現在は版画と掛け軸など表装の技法も自身の作品制作に取り入れている。
ホームページ ※ここでYutaさんの作品をもっと見ることができます。
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