出不精旅日記(台湾) 2024.11.29 小走る中年
恒春のはじめての朝。快晴。
昨日の日記で書きそびれましたがホテルは
曼波·大宅門 精緻旅店 Mambo Boutique Hotel
広くて清潔、スタッフさんもフレンドリーで猫店長もいる。
目覚めて、シャワーを浴びて、お茶を飲んで(お湯とかティーバッグ、お菓子は1階のロビーで頂けます)、ちょっと読書して、さあお仕事。
「うう…ゲホゲホ…うぅ…」
天国なのに、うめき声?
「うっ…」
天国ではいびきは聞こえてもうめき声は聞こえないばなのですが…。
夫が起きてきました。
「なんだか調子が悪いんだよ。頭痛がする。それに喉に違和感がある。咳も出るし…」
それにうめいていましたよ。
「このところ変な夢ばっかり見るんだよ」
心配です。旅の体調不良は甘く見ない方がいい。
「今日はここでゆっくりしましょうか?」
私はそれで全然構いません。食料は昨日買った菱角もあります。
「いや薬飲んだから大丈夫! それに今日はあんまり予定を詰め込んでないからね。まずはのんびり街の散策だよ」
この人の「あまり予定をつめこんでいない」は、普通の人の「今日はあちこち回るから頑張らないと」だし、のんびりするといってのんびりしたためしもないのですが、とにかく出発。
まあ、私もおうち大好き、お部屋大好きとはいえ、はじめてのまちに興味津々ではあるのです。
この近くに民族音楽の博物館があるというので行ってみました。
爽やかな風が心地良い…。
人通りは少なめです。
ここ恒春は海の近く。夏場は水泳やダイビングの人達でごった返すそうですが、今はオフシーズン。
メインストリートは車やバイクでそこそこのの活気ですが、少し入ると犬や猫がとことこと歩いているくらいでのどかです。
図書室も併設されていました。
スタッフの方が英語で「どこから来たの?」と声をかけて下さり、少しお話できたのも嬉しかった。
日本の書籍は沢山翻訳されているので
「これ読みました~(日本語でだけど)」
「この作家は私も好き」
と話せるのは本当に楽しい。
ところで日本の作家名は漢字なのでそのまま表記されますが、カタカナの無い台湾では漢字でない名前は当て字の表記なのです。カフカは卡夫卡、阿加莎·克里斯蒂は…
そう、アガサ・クリスティ(^_-)-☆
背表紙を見ているだけでも興味深かったです。
心配していた夫の体調も大丈夫? そうですし(大丈夫と言い張っているだけの可能性もありますが、とりあえずは元気そう)
ランチは素食(台湾のベジタリアンフード。仏教徒が多いこともあり、美味しくて種類も豊富)かベトナム料理の予定でしたが、素食屋さんが混んでいたのでベトナム料理にします。
ここでもう少し食べても良かったのですが、夫が「人気の中華風ハンバーガーがあるから買いに行きたい、ジュースも買いたい」というので、それらを買って一端ホテルに戻ります。
食後に飲むタイプの風邪薬を飲んで、では少しお昼寝しましょうか…
うとうとしかけた時、外からけたたましい爆竹の音がしました。
何かしら…?
となりの人がガバっと起き上がります。
えーーっと、寝ていた方がいいと思いますよ。せっかくお薬を飲んだのだし…
「何だろう…祭りかもっ! フロントで聴いてみよう! 出掛けるぞっ!!」
えーーっ(´;ω;`)ウゥゥ
お昼寝しましょうよーー(´;ω;`)ウゥゥ
フロントに行くとスタッフさんが寝ながらスマホをいじっていて手を振ってくれます。
「出かけるの??(中国語)」
「この音は何? 何かの祭り?」
「うーん、よく分からないな (^_-)-☆」
「確かに俺達の日本の祭りのこと聞かれても説明できないよな(これは私に向かって日本語)。ありがとう!」
ホテルを飛び出して「何だろう、何だろう」と音のする方に小走る夫。
私は彼の白髪の目立つ頭を追いかけながら、思います。
子どもの頃は中年のおじさんってもっと落ち着いて貫禄があるものだと思っていたけど…同世代がどんどんおじさんになって…見ようによっては初老感すら漂っていて(もちろん自分もですが)…でもみんなそれほど落ち着いていないんだよね…。
中年の危機のまっ只中の人も多いし、氷河期世代もいるから経済的にも大変で、ジタバタしていて…うちも実際はすごく大変だけど…でもなんかこうやって今だに小走れる中年は悪くないかもね。
私達はみんな貫禄とは程遠い場所でうろうろしているけど、大変な状況の中でも頑張ってもがいてるし、こうして好奇心を失わずにいて…なんだか愛おしいね…。
眠ろうとしたところを起こされて頭がもやもやしていたせいか、謎の世代論的感傷に包まれつつ角を曲がると…
「何だか分からないけど、すごい人だな。警察もいるな」
「台北の凱旋パレードに続き、いいもの見れたね(はいはい、帰りますよ)」
「どっちに向かってるんだろう?」
「写真撮ったかな? 頭痛いの大丈夫? 薬飲んでるんだから、帰るよ」
「…」
返事しないんです。こういう時、返事しない人なんです…。
「やばい、カメラ忘れたわ。スマホじゃ限界があるから、一旦帰るぞ」
一旦って…そのまま寝て下さいよ…と思いつつも、どうせ言うことは聞かないとのでデジカメをとりにホテルに戻り、横になったままのスタッフさんににこやかに見送られつつお祭りを追いかけます。
お祭りの一行が去ると、もう夕方。
結局、案の定、かなり動き回ってしまいました。
さあ、部屋に戻りましょうか?
「戻るけど、夜はものすごく美味しいお粥屋さんがあるから出かけるよ!」
そ、そうですか…。とにかく体を冷やさないで寝て下さい。
夜に出かけたお粥屋さんは確かにものすごく美味で、女将さんが親切で、サービスで出して下さったお漬物もポリポリと美味しく頂きました。
あまりにも大盛の、大満足なボリュームなので、夫は女将さんに
「もっと値上げしなよ」
と言うと
「値上げなんてしないの、みんなにお腹いっぱいになってほしいだけ」
な、なんて素敵…☆
※店名・後程アップします。ごめんなさい。
ごほごほと咳をする夫とともに、ホテルに戻りました。
小走ったせいで風邪は治りませんでしたが、小走ったからこそいろいろなものに出会えた、豊かな一日が終わりました。
(つづく)
おまけ1
壁に囲まれた恒春のまちのざっくりマップ。
おまけ2
ここに来てはじめてオープンちゃんに尻尾があることを知る。