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「お隣さんと仲良くするのは難しい」と言うけれど(第一回)日本語版

※台湾のネットメディア「花蓮最速報」さんにこちらの中国語版(繁体字)が掲載されています。
媒体の性質上、台湾の読者の方々に話しかける文体になっています。

(以下本文)

前回は映画監督・酒井充子さんのインタビューを読んで下さりありがとうございました。酒井さんは現在台湾に住み、次回作を準備なさっています。完成が今から楽しみですね。

さて、私と夫は台湾が大好きで1年に2回は渡台します。
どうしてそんなに台湾に惹かれるのか?
何回も出かけるのか?
今回は私達が台湾が大好きになった、恋に落ちた瞬間のお話をしたいと思います。

それは私達の2回目の台湾旅行のことでした。
1回目は台北のみを散策して、それはそれで楽しかったのですが、どうも台湾には
「食は台南にあり」
「台南を知らずして台湾を語るな」

という言葉があり、本当に美味しいものは台南にあるらしい。
また台北は冬は気温が低いこともあるけれど台南は一年を通して暖かく、果物も安くて美味しいらしい。
そう聞いて、訪ねてみようと思ったのです。

宿はどうしよう…?
私達は高級ホテルには泊まりません。あまり高くなく、食事は地元の人と同じものを食べたいから素泊まりでよく、でも清潔なのがいいし、あまり不便なところだと観光しづらいし…。
そんな面倒な条件をクリアする宿を見つけるのは毎回大変なのですが、リサーチが大好きな夫が見つけたのが Lento Hostel でした。
「ここ、絶対いいよ!!」

訪ねてみたら若い男女、BくんとIさんがマネージャーをしていて、Iさんは英語も喋れます。
当時は夫も台湾華語がしゃべれなかったので、英語が通じるのは助かりました。

お手頃価格なのに部屋は広くて清潔、シャワーとトイレはもちろん、スピーカーもある(持参のポータブルCDプレーヤーを接続できます)。
フロントに行けば、二人が気さくに近場の美味しい店や観光スポットを教えてくれる。
壁いっぱいにBくんが描いたという台南の地図が書いてあり、それを示してくれるので初めてでもわかりやすかったです。

ホステルからは徒歩で行ける飲食店やマーケットがあってすごく便利だし、少し遠い場所もタクシーが安いから躊躇なく使えます。
また台湾はレンタサイクルが発達しているので、自転車であちこちめぐるのも楽しかったです。

いろいろな食堂や屋台を食べて回りましたが「食は台南にあり」は本当で、どこに行っても美味しく、また台北よりもずっと安い。
台南名物の小粒の牡蠣を使った「牡蠣オムレツ」は感動的な美味しさで、
「いつもなら同じところに2度はいかないけど…」
と言いつつ翌日同じ店を訪ねたほどでした。

果物は冬でも沢山売っていて、もちろん夏の方が多いのでしょうが、濃くて甘い、そして驚くほど安い。
私達は中でもパッションフルーツ(百香果)にはまり、山のように買ってはホステルの冷蔵庫で冷やしてもらい、夜な夜な食べ続けました。
半分に切って、中身を掬って食べて、半分に切って、中身を掬って食べて…。
甘酸っぱい美味しさが口いっぱいに広がり、この作業を永遠に繰り返してしまうのです。
とにかく毎日食べても全然飽きず、一時は東京でパッションフルーツ栽培ができないかとまで真剣に考えました。

ちなみに台湾の方に
「パッションフルーツ美味しいですよね!」
と興奮気味に伝えても
「うーん、他にも美味しい果物はいっぱいあるよ?」
という感じで、あまり感動を共有できません。
「それより日本のリンゴを食べたいなあ」
と言われたりして、その土地の良さは旅人の方が見つけやすいのかもしれません。

台南は食べ物だけでなく面白い観光地が多々あり、街並みは趣に溢れ、人がやさしく、動物がうろうろしていて(野良犬も野良猫も大概可愛がられていて、そこここで平和的にぶらぶらしています)、何日いても飽きない魅力が溢れていました。

「はじめての台南、本当に楽しかったね…」
大満足で迎えた旅の終わり。
あちこちを効率よく巡れたのはマネージャーの二人のお陰であり、チェックアウトの時に感謝を込めて
「ありがとう。楽しい結婚記念日になりました」
と日本語と英語のメッセージを残してホステルを後にしました。
台南の街をすぐ去るのはあまりにも名残惜しく、駅まで寄り道しつつ散歩することにします。

市場に寄り、その後、
「そういえば台湾名物のかき氷を食べていなかったね」
と道端でかき氷を食べていたら、Bくんが手を振りながらバイクで近づいてきました。
あら、忘れ物でもしたかしら…?
すると満面の笑顔で焼き菓子の大袋を渡され
「台南クッキー!!」

私の書き置きを持ってきていて、指をさし、
「結婚記念日なんでしょ、おめでとう!!」
彼は英語が話せないので、身振り手振りで「あちこち探したよ~」と笑っていました。
チェックアウトしてどこにいるかも分からないのに、わざわざ台南名物のお菓子を買いに行き、バイクで走り回って探してくれたというのです!!
私達は感激して泣きそうになり、夫はお菓子と彼の写真を撮りまくり、しかしBくんはホステルを長く留守にもできないのですぐにお別れしなければならず…。

Bくんはバイクに乗ると、手を振って去っていきました。
夫はしばらく無言で手を振っていましたが、

「俺は若い時からバックパッカーであちこち出かけてるけど、こんな体験ははじめてだよ。
台湾人、やばいわ~。俺、またここに来るわ…」

こうして台湾にハートを鷲掴みにされた私達は、頻繁に渡台することになります。
台湾人ってすごい、もっと仲良くなりたい!
台南だけでなく、他の土地も訪ねたい!
夫は台湾華語を猛勉強しはじめました。

(つづく)

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