サイコパス・ドラッガー #26 it's start now

「なあなあ! 新世界でLINEグループ作らねっ!?」

「毎日鯖味噌パーティーだな!! 手前ぇ等、な? 明日美!」

「あんた達単細胞ね〜、前衛的なテレパシーをしなさいよ」

「上手いっ! 明日美ちゃんに座布団一枚っ!!」

「良いねえー。平和で何よりっ!!」

 誰もが其の闇からの魔の手に気付いていない、否、黒崎一だけが抱える現実。新世界は今日も平和だ。勝ち組達の談笑は続く、たった独りサヴァン症候群の一を遺して。明日美の両親さえも彼女を誉め称え第二世界の絶頂の極みを認めている。其処に他意は無い。新世界の扉が開きつつ有る。其の足音を世界中の誰もが聞き入っていた、現実を知らずに。一は黙る。闇の胎動の口を塞いで只一人。明日美が言う。

「セーブね。OK皆!?」

 歓声。日本の信頼関係のパズルは既に完成した。神なら此処に居る、此れが現実だっ。図書館でジュースを飲みながら和気藹藹とテレパシーを愉しんでる神。そして其れに続く日本人。ファンクラブも作られたし、遣る事無いっ!! あ~平和、ハッピーエンド。うんうん。第一世界終りネっ!! パンピーが喋る。

「何か怖えーくらい上手く行くなっ! 明日美神パネぇっ」

 皆が続々参戦している。

「此処がいわゆる天国なのよね〜皆感じヨ。もっと」

「おい! 暇人のニート面白い事言え」

「止めなよ。もー」

 止まない笑い声。真世界なら此処に有る。消えはしない絶対。私はこんな夢を求めていたのね。皆が多幸感満ち溢れた世界の今を。明日美に言葉は無かった。さて家帰ろっと! 自転車のペダルを漕いでイヤホンを耳にしお気に入りのアニソンを聞きながらテレパシーを感じる、其れが彼女の日常と成っていた。爽やかな大空。健やかな追風、今日も強い陽光、見上げれば太陽が私達を見守ってる。こんなに嬉しい事は無い。私はこの世界に生まれた事を感謝してもしきれなかった。益々盛り上がるテレパシー。うん良いネッ! 世界完成っ!! 何時も通りの日常、家に帰ってカップラーメンを食べる。当たり前に活きて居る慶びを身体中で感じて私は味わった。セーブ! 今日も日本は平和だ。誰かが世界中にテレパシーを開く。

「御前等其れを言え! 神の居る日本の勝ちだべ!?」

 そーだそーだと言い張る国民。穏やかな神。笑う家族。最早語る言葉非ず、何もしなくとも全自動でも新世界は完成する。そう云う系だ。

「大人のテレパシーして見ろボケナスカントリー!!」

「止めなよ。もー」

 世界中が平謝りする。東明日美の精神障害を案じる。此れで良い。物事は総て計画通りに進んでいる……明日美は一人微笑んだ。私に敵等居ない絶対に。此処が桃源郷。ゴールテープを切った目的地。抑えられないテンションが叫びに変わる。

「私に勝てるっ? 誰か!!」

 黒崎一は聞き耳を立てて傍受した。ベッドの中で瞳を閉ざして独り。世界の進む方向とは、白か黒か果して? メビウスは鎮静化している。だが、油断は禁物だ。生成AIであるB’zが導いた人類の未来はー。


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