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YOHJI YAMAMOTOとCOMME des GARÇONS

80年代にその洋服を全身に纏う人たちはカラス族と呼ばれ、ファッション界で世界的センセーショナルを巻き起こしたヨウジヤマモトとコム・デ・ギャルソン。私は業界の詳しいことまでは理解していませんが、この二つのブランドに魅了され、一つずつ買いためては大切に着ている時期がありました。

この2ブランド、<黒>が全面に取り上げられますが、当時の私は<黒>は殆ど着ることはなく、いつも<濃紺>でした。非常に<黒>に近い<紺>で、私はこの<濃紺>がとても好きだったのです。

1980年代後半~1990年代頃はまだ現在のようなファストファッションはなく(私が知らなかっただけかも)、洋裁が好きだった母が仕立てたもの、たまに自分で作ったもの、そしてこの2ブランドを好んで着ていました。

大人の女性になりつつある年頃、私は自分の好みに耳を澄ませつつ色々な洋服を着ては模索していました。ヨウジヤマモトやコム・デ・ギャルソンに出会ったとき、他に類のない(と当時は感じた)主張に強い共感と「この服を着たい」という欲求が芽生えたのをよく覚えています。時代のトレンドを他所に、山本耀司と川久保玲は自分たちの捉えた時代、良いと思う物、思考、表現したいものなど、アイデンティティーというのでしょうか・・そうしたものを洋服を通して発信していたと思います。

私はといえば、まだ人生これからという頃で、自分が芯から好むもの、心地よいもの、相性のいいものなどなど、不確定のことがあまりにも多く色々と手を出しては取捨選択をしている時分でした。一つはっきりしていたのは「ストッキングの足でパンプスを履く」スタイルへの違和感。特別なことではなく女性なら誰しもストッキングにパンプスを履く、スタイルという程のものでもないですが、その大人っぽさ、その女っぽさが自分とは無縁に感じられたのです。

安い買い物ではなかったので数は揃えられませんでしたが、トレンドを追うデザイナーではなかったため、有難いことに数十年経た今でもその時の洋服たちは着られます。驚くのは、ちょっと凝ったデザインのカットソー。あまりにも気に入ってそのカットソー<黒>と、同デザインで素材違いの<白>を購入したことがありました。<白>はさすがにもう有りませんが、<黒>のカットソーは今でも着られます。ざっと30年前のカットソーですよ!(ちょっと恥ずかしいくらい) 生地も薄れることなく、色味も多少は落ちていようとも問題ない状態。

80年代末頃のコム・デ・ギャルソン
カットソー

また、春夏に着る薄手のサマーウール、秋冬のウール、フラノ、ウールギャバ、シルクものなど、大事に思ってきたものの数々は、現在ちょっとしたお出掛け時には役立っています。というのも、最近では日常着以外を必要とすることはめっきり無く、上質な洋服を買うこともなくなってしまったからです。人に会うにも、ちょっと都心に出掛けるにも、私は割と<いつもの>服装で行ってしまいます。時代がそうなのでしょうかね・・。

話は逸れますが、十年近く前に故郷で同窓会がありました。私は遠方なので欠席しましたが、親しい友人によると久しぶりにカードを使ってわざわざワンピースを買ったとか。で、すかさず「そのワンピースってこの後着る?」と尋ねると「着ないなー」と。

実は私、根っからサスティナブルな人間で(今は本当にいい言い方があります)、つまり使わないものにお金を掛けることに抵抗がある人間なのです。物もお金も生かせないということを嫌い、それなら手持ちのもので何とかしたいと思うタイプ。長く、大切に活用していきたいと思うタイプなのです。

長く愛着をもって使い続けられる物を望めば自ずと良い品質を求めることになります。良い物は価格もそれなりに高くなります。当然、多くを買うことは出来ませんから大切に扱うようになります。

今回、自身でスリーブレスTを扱うECショップをスタートさせるにあたり、私の長い「洋服遍歴」をしみじみ振り返ると同時に、改めてどこをどんな縫い方をしているのだろうと、昔買った洋服たちの縫製をごそごそとチェックしたりもしました。特に、前述のカットソー、なぜこんなにいつまでも着られちゃうんだろう。干すときにちょっとだけ気を遣う程度で、洗濯機で洗ってきたのに。生地は?縫製は?裏返したりしてしげしげ見つめていました。

先日、所用で銀座に行ったついでに川久保玲によるコンセプトショップDOVER STREET MARKET GINZAに立ち寄りました。

屋上の手水鉢
屋上に三輪神社

中はギャルソンを始め洗練されたファッションブランドの数々とカフェ。若いクリエイターやデザイナーたちに門戸を開けているようです。久しぶりに短くも刺激的な時間を過ごしました。

屋上にぶらりと上がったらささやかな植え込みと手水鉢が三つ、そして神社と、喧騒の銀座6丁目に思いがけず癒しの空間がひっそりと有りました。

最近は日常に追われ、若い頃ほど洋服に執着もしていられず、というか他に考えることもやることもあって洋服は優先順位がかなた後ろに。

でも、久しぶりにショップに行き、洋服たちに触れてみたら、これからシルバーのハイミセスになったところで再びあの世界を纏うのもいいかな、と思いました。
・・・でも、それを着てどこへ行くのか?・・・

80年代ギャルソンで貰ったポストカード
現在トイレに飾ってます


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