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山の神 操る重機 坂登る

 山の神様は女性だと言われます。そこから転じてなのでしょう。家庭の御台所(奥さん)のことを「山の神」と呼んだりもします。

 先日、出先で女性が操る重機が急勾配の坂道を登っていくのを見た。トップ画像のような「○パッチ」が押された、写真よりも曲がりくねって細くて、ほぼ45度角という地獄坂である。
「重機通ります。恐れ入ります」「ありがとうございます」
 ハキハキと温かな声で歩行者に声を掛けて、滑らかに重機を転がして行く。正に神業
 後ろ姿しか見えなかったから、年の頃は定かではないが、たぶん20代後半~40代前半ぐらいか。
(格好いいなぁ)
 重機を軽々と転がす爽やか系の山の神。そんな風にちょっと思った。

 昔も土木作業に従事する女性はいた。ただし、農家の中高年。本業の合間に現金収入を得るためにスコップで地面を掘ったり、ネコで土や物を運んだり、手作業である。重機を扱うなんてなかった。住基を扱うのは、もっぱら男性である。
 英国の産業革命時、日本でも炭鉱業が盛んだった頃は、炭鉱で穴へ降りて採掘に当たる女性もいた。その頃は、重機なんてものなかったから性別云々の前に手作業ガチ肉体だけが頼りの労働であった。そうそう土木作業員の「よいとまけ」なんてのもありましたね。
 「女は機械に弱い」という神話のせいだったのか、女に教育なんてという考えからか(重機を扱うに操作の知識がいりますもんね)、なぜか「力が弱い」とされる女性がガチちから仕事に回されるという不思議。なんだったんだろうね。今思うと。

 なんて思っていたら、日経新聞にこんな記事があった。

 紆余屈曲の末、子供の頃からの念願だった漁師になった女性の話だ。
「格好いいなぁ」
と、またしても思う。

 重機操縦の女性といい、漁師の女性といい、「女の仕事じゃない」と言われていた仕事に従事する女性が出てきた。良い時代になったものである。
女性の社会進出を阻む「ガラスの天井」という言葉があるが、破るべきガラスの天井にまで辿り着くのがまた大変。ガラスの天井までは、舗装のされていない険しく細く、地図のない獣道のような山道を地道に登っていくのだ。しんどい。そんなイメージ。

 私も子供の頃、農業をやりたいと思っていた時期がある。だが、その時代では農業というのは農家に生まれなければできないと思っていた。あるいは農家に嫁がなければ(男なら婿入り)ならないと。確かにあの頃は、少なくとも家族経営の小規模農業が主流の日本では、事実上それしかなかった。なら農家に嫁げばいいじゃんと言いたいところだが、運良く農家の男性を好きになるとは限らない。相手が好きになってくれるとは限らない。しかも、昔の農家の慣習に馴染めるかどうかという大問題もあった。まあ、私の場合はその前に健康上の問題で難しかったから、一般論としてだ。

 女性漁師の話だが、60㎏の網の重しを30㎏ずつに分けたり、初心者や女性にも道具を扱いやすいよう工夫もしている。漁業以外でも、こんな風に道具ややり方を改善することで、力が強くなかったり、身体が小さかったりする人が従事できる仕事は結構あるように思う。女性だけではなく、高齢になれば力も弱くなってくる。高齢化社会においても、こういう改善をすれば働ける人材があると思う。
 そう言えば、農業や介護の現場では、アシストスーツというのがありましたな。ただし、高額らしい。
 行政は、有識者とかいう机の前でしか活動しない人たちが集まって女性の活用を議論するとか、意識高い系キラキラ女子の啓蒙パフォーマンスに金出すより、アシストスーツの補助とか、マッチョ仕様の道具や機器の改良改善(日本のお得技じゃないの。KAIZEN)など、「現場」の「現実的」な効率化のために助成金を出して欲しいところである。
 てか、現実路線に早いとこ切替えにゃ、高齢化社会&人材不足がチョー高速進行中なんだから、まったなしだろう。

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