【番外編】20代の時に付き合った40過ぎのおっさんに三股かけられた話【後編】
前編はここから
雨に濡れてクンクン鳴いているなあと思いながら、深夜に解散した。Nは、次はAちゃんにも説明してくると言っていた。まあそれしかないだろうね。とりあえずAちゃんにメールをして、聞き取った話の概要を報告しておいた。矛盾する事を言った場合、AちゃんがNにツッコめるように。
もう一人いる…!
最初からキナ臭かったが、Aちゃんは早くも共同戦線から離脱する。同盟国としての価値は、第二次世界大戦中のイタリア並み。まだ開戦してすぐやん…というタイミングで、彼女は寝返った。
私がNと会って数日後にAちゃんから来た長いメールには、要するにこう書いてあった。説明しに来たNに会った瞬間に抱きしめ、泣いてしまった。彼を許してしまった。いろいろ考えたけど、今、Nと別れる選択肢は私にはなかった…。
慰謝料1000万の話は、どこいったんや…。
しかも、その夜どのような情熱的な展開になったかまで書いてあり、マウントにしてもやりすぎじゃねえですか、下品ですよ、姉さん…という内容だった。そしてその直後にはNから私に「説明がしたい」との連絡がきた。どうもAちゃんが「私と付き合うことをはちみつちゃんに自分で説明して!」と差し向けたらしい。
女、こわい。
とりあえずAちゃんはもう仲間ではないことはよくわかったので、現在までの登場人物に共通の別の友人Mに連絡して話を聞いてもらうことにした。Nと別れる別れないはもはや大きな問題ではない。とにかくこのカオティックな状況を誰かに聞いてほしかった。Mは私よりもNとの付き合いが長く、Nのことをよく知っている。きっと過去にもなんかやらかしているだろうから、悪口でも言ってストレス発散しようと思った。
次の休みに、新幹線に乗って少し遠方に住んでいるMに会いに行った。実はNと付き合っていたことそしてここまでの経緯を簡単に説明し終わったところでMの顔が曇りきっていることに気が付いた。尋常じゃなく。彼女は、意を決したように切り出した。
「その話、もう一人いると思う。。。。」
二股じゃなくて三股だった
Mの後輩が、少し前からNと付き合っていると周りに言いまわっていたらしい。その後輩ちゃんは「結婚したら~」「子供ができたら~」とウキウキな様子のようで、おそらくというか絶対に事実を知らない。しかも最悪な事に、私はその後輩ちゃんとも知人関係だった。どれだけ狭い範囲で関係を作るのか。大奥でも作るつもりなのか。それならばもっと殿らしくしっかりしてほしい。発覚しても堂々として「そなたたち全員に等しく寵を授けるので安心しろ」くらいに構えてほしい。私が最後にみたのはただの哀れな濡れ野良老犬である。
Aちゃんとのいきさつや、後輩ちゃんと私の関係も踏まえ、後輩ちゃんに直接アプローチするのは得策ではないどころか無益だと判断した。何を話せばいいのかわからないし、キャットファイトで取り合う気も全くしない。そこまでウキウキ気分な後輩ちゃんが私にどう対応するかもわからない。
いずれにしてもこの話で私の中でNに対する信頼はなくなり、野良犬に対する同情心も消えた。むしろそんな悪いチ〇コはちょん切って窓から投げ捨ててやりたいくらいだが、こんなくだらないことで傷害罪で捕まり実名報道されて、自分の人生を棒に振るのはごめんである。
友人Mにはお礼を言って帰路についた。
Nとの再対面
その後、Aちゃんから何度かメールが来た。「Nさんと付き合いを続けるのは私の判断で私のせいなので、責めるなら私を責めて!」というヒロインちっくなメールだった。その上で「私はNさんに支えてもらいたい。そして、私ははちみつちゃんを支えたい。」とまで言ってきた。…すごいヒエラルキーである。悪いが、私は三股男に騙され続けるヒロイン女子よりも下にいるとは思ってない。そんな子に私の何を支えてもらうというのか。
Aちゃんとこうなってしまった原因は、間違いなくNにある。Nはおそらく私とAちゃんに少しづつ違う説明をしているのだろうし、線引きをせずに関係を持ったのもNである。元凶はN。そう思ってきたが、ここまでくるともはやAちゃん自体もどうかしている。自分が主役のストーリーに、私を強制的に悲劇のわき役としておいておきたいような、謎の執着が見えた。Nからも「事情を説明したい」「改めて謝りたい」と何度かメールが来ていたが、会って何を話すのかわからず放置した。
それから半年ほど経ち、もともと計画していた海外留学が現実のものとなって見えてきた。一人暮らししていた家をいったん引き払うことになり荷造りをしていたところ、いくつかの本が足りないことに気が付いた。絶版になっているもので古書価格でもなかなかの値段がついている専門書が数冊足りない。Nに貸したままだったことを思い出した。
ちょうどNからメールが来た。「会って謝りたい」とまた言っていた。時間が経ってNの件も思い出に変えられそうになっていたし、留学直前の高揚感もあり、本を返してもらうついでに最後に会っておいても良いかという気持ちになった。完全な判断ミスだった。
席に座るなりNは、Aちゃんと結婚することになったと切り出した。いろいろあったけど責任を取ってAちゃんと結婚すると何やら説明していた。そしてそれを自分の口で私に伝えるように、Aちゃんからしつこく頼まれていたようだ。
Nは私に謝りたかったのではない。Aちゃんのマウント劇場の続きをするためにしつこくメールを送ってきていたのだ。Nにしてみれば、チ〇コをちょん切って窓から捨てかねない私と、会うなり涙で抱きついてきて情熱的な仲直りセックスをしてくれたAちゃん、どっちを取るか考えなくてもAちゃんだろう。私でもそうする。
そしてAちゃんは、どうしても「三人の女で取り合った男を自分のものにしました」という勝利宣言をしたいのだ。本当に、心底驚いた。同時に、他人の気持ちをここまで蔑ろにできる二人はお似合いだなとも思った。私が逆の立場なら、絶対にできない。人は自分と同じレベルの人間としかくっつかないと言われる理由がよく分かった気がした。
手元にあったコップの水をNの顔面に思いっきりかけて退席した。
あれから10年…
その後、私は留学も入れて7年ほど海外にいた。
狭い業界なので、Aちゃんが「○○で××をしているNの妻です!」という肩書?を使って界隈で自分の仕事につなげようとしている事、当のNは所属先の契約が切れて無職になり次の仕事がみつからない事などが知人経由で耳に入ってきた。全然うらやましいと思わせないでいてくれてありがとう…!という感じだった。
日本に帰ってきてアプリで会う人の中にとても気になる人がいた。何回か会う中で好きになりかけたところで、唐突にこの記憶がよみがえった。よく考えると、その人がとてもNに似ていることに気が付いたのだ。次はその話を書く予定。
人生って結構うまくできていて、あとで伏線が回収されたり過去の学びで今の危険が回避できたりするからおもしろい。
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