「平惟茂凱陣紅葉」跋
「平惟茂凱陣紅葉」は、先に翻刻した「崇徳院讃岐伝記」と同じ宝暦六(1756)年の10月に竹本座で初演された五段続きの時代浄瑠璃で、作者の顔ぶれも、近松景鯉が入っているほかは、同様に二世竹田出雲・近松半二・三好松洛・中邑閏助です。内容は王朝物と言って良いもので、天下を狙う阿曇諸任の野望を挫かんとする平惟茂(正しくは「維茂」ですが、ここでは浄瑠璃の表記によります)・柏木左衛門と、その周辺人物の苦衷を描いております。
平惟茂は貞盛の養子で鎮守府将軍にまでなった人物で、すでに「今昔物