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子どもの方がものしりな時代。学校や家では何を教えればいい? 【海外の小学校から】

こんにちはfinditsです。

9月が学年スタートの海外の学校ではそろそろ学年度末。
そこで、授業について印象的だったことを振り返ってみます。


結構難題!?小学生が向き合った課題たち

「動物を守るために、どんな対策がされているか調べ、あなたならなにができるか考えてください」

「火星について知りたいことを調べて発表しましょう」

「この現代アーティストの芸術作品に共通しているものはなんでしょうか?そして、どんなことを表現しようとしていると思いますか?」

この数ヶ月間で、息子の学校(海外のインター)で出された課題をいくつかピックアップしてみました。

もちろんいずれのテーマも授業で取り上げ、それをさらに深掘りして、レポートにまとめたり、グループワークでプレゼンをしたりするのは生徒それぞれで進めます。
子どもたちは全員iPadをもっているので、デジタルツールを使って作業することがメイン。課題や宿題などの連絡事項もGoogleClassroomなどでシェアされることが多いです。

こうしたリサーチが必要な課題の場合は先生からGoogle Classroomに参考資料リストが提示されます。動物保護ならWWFや、宇宙に関してはNASA、現代アートならTATE ギャラリーといった具合にさまざまなサイトがずらり。
生徒はそれらを参考にしてもいいし、自分でも検索してもOKですが、先生から提示されているリストはどれも参考サイトのリストはどれも信頼性が高く、一次情報をあつかっているものばかり。リサーチする際の資料のあたり方の勉強にもなります。

授業で基礎知識を習って、自分でリサーチして深掘りしていくという学び方は、ハマるととても楽しいらしく、夜遅くまで熱心に調べていることもありました。(ハマらないテーマのときは苦行)

動画で予習復習も

一方でこんなこともあります。
「次の授業のためにこの動画を見ておいてね」
と、動画のリストがずらりと並んだリストが送られてきました。
それは算数の次の単元の解説動画で、初めに見た時は、「さすがに授業で教えるべきでは!?」と、微妙な気持ちに。
ただ、子どもたちからすると、前もってみておくと授業で理解しやすいし、授業でわからなかったことがあっても動画を見返すとわかる、というメリットがあるらしい。
昭和の先入観でつい「先生、手抜きか!?」と疑った自分を反省しました。


私たち親世代にとって学校は、「先生から授業をしてもらうところ」でしたが、今の子どもたちにとっては「学び方を教えてもらうところ」になっているようなのです。

博士ちゃん大発生の時代に

そんなことを思っているときに、先日この放送を聴きました。

イエナプラン教育校、公立中高一貫のIB認定校を開校するなど、任期中に革新的な試みを実現した元広島市教育委員長の平川理恵さんが発信しているVoicyのチャンネルです。

「博士ちゃんの出現とスマホの密接なカンケー」というタイトルを見たとき、「スマホで調べた知識を身につけた子どもが博士ともてはやされていること」への意見とかそういうのかな、と想像しました。
スマホなどのデジタルデバイスで情報を得ることへの警鐘、といった類のお話かなと思ったのです。

いざ聞いてみると、その予想は見事に裏切られました。
詳しくはぜひ実際に放送を聞いていただきたいのですが、ごく簡単にかいつまむと、
「今の子どもたちは気になることがあったらスマホで調べてどんどん知識を増やしていく。だからものすごい知識をもつ“博士ちゃん”がたくさん生まれている。そういう子どもたちを今の教育は満足させられるのだろうか」
という内容。

その気になれば誰もが情報を得られる時代に、「大人は子どもより知識をもっている」という前提は成立しなくなりました。それは先生にしても同じ。
「先生から生徒への一方通行の指導」の限界は、多くの人が指摘しているところですが、平川さんが危惧されているように、現状の教育スタイルはせっかくの博士ちゃんたちの興味や知識を持て余すこととなってしまいそうです。
さらに言えば、「そんな余計なことを知ってるより、計算問題ができたほうが偉い」という、大人の価値観を押し付けて、子どもの興味の芽を摘み取ってしまうなんていうことも少なくないでしょう。

情報の適切な収集方法、テーマの見つけ方など、興味を深掘りする方法を提示することが、今の大人がやるべきことのように感じます。
小さな博士ちゃんたちが本物の博士なれるのか。その責任は私たちにあります。

"子供の教育は、過去の価値の伝達にはなく、未来の新しい価値の創造にある"
           ジョン・デューイ(1859-1952 哲学者・教育学者)