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【フィナンシェ話#11】投資してみたい、と言う子どもに親ができること

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。

 今回は中学3年生と小学4年生のお二人のお子さんをお持ちで、ご自身は投資顧問会社で日本株式の運用を行われている松下さんにお話を伺いました。ご家庭の中でどのようにお金や投資のことを伝えようとされているのか、ご紹介いたします。

■ 原体験は中学1年生の貯金から

――松下さんご自身は、以前から金融教育に関心を持たれていたとのことですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

松下さん:私が投資に興味を持ったのが、中学一年生くらいの時でした。祖母が郵便局に小さい時からのお年玉などを預けていて、「このお金を自分自身で管理して」と親から言われた、そこからですね。
 その時、何もしていないのに預けたお金100万円くらいが200万円くらいになっていたことに疑問を感じたんです。そこで、独学で本を読んだり、新聞を読んだりしました。当時は、10年で金利が8%程度のような時代だったんですね。

 親は投資をしたことも、関心もなく、「株だけ買ったらあかん」と言われていたんですが、色々調べて管理を任されたお金を投資することにしました。中学2年生で窓口の方に学生証を見せて、証券口座を開いて…というところから始めて。一人で行きましたね。
 当時は電話で売買する時代で、親にはバレないと思っていたのですが、売買報告書が家に送られてくるんですね。それで速攻でバレてしまって。でも結局は「好きにせい」と言ってもらえました。

――今でもそのような中学1年生はとても珍しいですよね。具体的にはどのような投資をされたのでしょうか。

松下さん:金融商品もありましたが、やはり日本の企業に投資するのが面白そうだ、というところで、どんな会社が良いんだろう? どう株価が動くんだろう? と考えていました。
 ですが、ちょうどバブルの最高値くらいの時期に投資を始めたので、何を買っても儲からない。知っている会社だろうと思って投資をしたら半分になってしまって。一方で、新聞で見た石炭の会社に投資したら、業績が良くなり3倍くらいになったこともありました。どのくらい儲けるか、という視点よりも、株ってきちんと調べたらこうなるんだ!とか自分の考えたことがその通りになって、株価も上がる、という点が面白かったですね。

 儲かりもしたし、損もしました。色々あって、回り道もしたという体験があるので、自分の子どもにはある程度ポイントを押さえて、投資のことを教えてあげたいと考えています。

■ 興味のきっかけは授業や優待

――中学3年生の上のお子様が、投資に興味を持ち始めた、と伺いましたが、何かきっかけはあったのでしょうか。

松下さん:子どもには直接投資をしなさい、ということは言っていません。でも、会社四季報をいつも読んでいるな…と子どもは小さいころから思っていたと思うんです。また、ある時は学校で「親の仕事」についてインタビューをする授業があり、子どもから「どんな仕事をしているのか?」「何を実現したいのか?」ということを聞かれました。そこで、中学校でのきっかけの話から、今現在も運用の仕事を続けている、と伝えました。

 すると、何か月かしてから「投資をしてみたい」と言ってきたんです。自身の経験として、回り道や無駄なことは避けてあげたいと思っていました。そのため、おすすめの本を何冊か紹介し、投資の対象には為替や債券、株など様々なものがあることを伝え、何に興味を持つのか?というところから始めることになりました。

――それはとても楽しみですね。下の小学4年生のお子さんは、松下さんのお仕事を理解されているのですか。

松下さん:お父さんは株の仕事をしているっぽい、というのはなんとなくあるみたいですけど。「あつまれどうぶつの森」でカブについては値段が上がったり、下がったりする、という認識をしているようですが、まだ分からないですね。
 先日、親戚からサンリオの優待券をもらっていった時のこと、「お友達のお父さんも同じ券をもっていたよ」と言っていたので、株主優待については理解しているようです。株を買えば株主優待をもらえるんだ、と。

 ■色々なものに興味を持つことが投資教育の出発点

――中学3年生のお子さんには、具体的にどのように教えていらっしゃるのでしょうか。

松下さん:まずは、色々なものに興味を持つように仕向けたいと思っています。たとえば、外を歩いているときに広い空き地がある。それを見ながら「ここの場所ってどういうふうに変わったら良いかな?」と投げかけてみる。また、レストランに行ったときに従業員の数が多いことに気付く。そうしたら「従業員の数が半分になったらどう回せるか考えてみたら?」と声をかけてあげる。このような会話を自然にして、物事を考えられるようになると良いと思っています。

 会話以外では、先ほどお話したような本があります。今はFACTFURUNESS(ファクトフルネス)を読んでもらっています。他にも何冊か用意していまして、「自分でも調べてみて、もし分からないことがあれば聞いてくれ」というスタンスを取っています。

――なるほど。そのように会話の中で自然と考えるきっかけがあると良いですよね。一方で、株式投資ということで考えると、知らない企業がとても多いということで、そこから発掘する大変さがあると思いますが、その点はいかがですか。

松下さん:本もそうですが、上の子は新聞も読み始めているんです。日経新聞ではないですが、企業のニュースもありますよね。そこでどんな会社か、ということに興味を持ち始めたようにみえます。先日電車に乗ったときに「これは武田の工場だ」と言っていたんです。
 また、学校でも社会人のOBの方が仕事について話をする機会もあるので、そういった場面で色々な業界に興味を持ってもらえると良いですよね。特に、生の声をなるべく多くあげられるとよいなと思っています。私自身も、もっと色々な職業や職種を経験しておけば…と思っています。子どもには、アルバイトでもボランティアでも良いですが、どんどん知らない世界に触れてほしいですね。

――今後、実際に投資を始めるのにあたって、原資はどのようにする予定ですか。

松下さん:まだ決めてはいないのですが、お年玉か、大学を卒業するまでの7年間のお小遣いを一気に渡してしまう方法もあるかな、と考えています。遊んで使っても、投資をして増やしても、自分で決めるということが良いかなと。

――これまで色々な方の金融教育について伺ってきましたが、お金の使い方をお子さんに任せる、という方が多いんですよね。

松下さん:そうでしょうね。仕事も任された方がモチベーションが上がるのも同じで。自己責任、というものもありますが、自分でやってみないと自己責任も分からないでしょうしね。
 ですので、自分で考えられる力を付けられるように、親からは日常の会話の中で色々な投げかけをして、興味を広げていって欲しいと思っています。


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 日常会話の中で、様々な投げかけをされているなど、皆さまの参考になるような点があったのではないでしょうか。また投資そのもの、というよりも興味の範囲を広げるために、投資のことを教えようとされているスタンスも、ぜひ真似したいところです。
 まだ上のお子さんには、投資について伝え始めたばかりだそう。ぜひ半年や1年後、ご家庭での金融教育がどのように進展したのか、またお話を伺いたいです。

 松下さん、お忙しい中ご協力を下さり、ありがとうございました!
(取材日:2022年2月16日)

 フィナンシェの会では、様々なバックグラウンドの方々に、「子どもとお金」のお話を伺っています。過去のバックナンバーは下記リンクよりご覧いただけます。


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