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外資金融ママがシリコンバレーの超有名ママの「TRICK」を読んでみた!【書評】

TRICK エスター・ウォジスキー=著 関美和=訳

はじめに

いわゆる有名大学やお受験での成功を謳った本は無数にありますが、そういった型にはまった「教育本」には飽き飽きしていました。そんなときに出逢ったこの本はどんな本よりもパンチが聞いていて、愛情に溢れていて豊かで幸せな子育てへの道を示してくれている気がしました。ここから先は面白さより、ガチ書評ですが、Twitter同様斬り込みながら私なりの感想を書いてみます。(初めての書評なのでお手柔らかにお願いします🙇‍♀️)

要約

シリコンバレーの超有名教師であり、とてつもなくパワフルで優秀な3人の娘を育てたエスター・ウォジスキー。

・長女:YouTubeの現CEO
・次女:カリフォルニア大学医学部教授
・三女:バイオベンチャーCEOでGoogle創業者セルゲイ・ブリンと結婚

彼女の教育法は、ユニークで愛と思いやりに溢れている。そして、これらは世界中のどんな親子でも取り入れられる大切なエッセンスが詰まった5つのポイントに分けて説明されている。

◆TRICK(トリック)
TRUST(信頼)
RESPECT(尊重)
INDEPENDENCE(自立)
COLLABORATION(協力)
KINDNESS(優しさ)

字面を読んだだけでは抽象的でイメージが湧かないが、本書ではエスターが娘と生徒たちと常に真剣にまっすぐ向き合うエピソードと共に、一つ一つを嚙み砕きながら伝えている。子供を本当の意味で羽ばたかせる教育法は人が本来大切にすべき点にも立ち返らせてくれる。

大切な言葉と書評

エスターの示す5つのポイントの内、KINDNESS(優しさ)に焦点を当てていく。辛辣ではあるが、多くの人が子供に優しく育って欲しいと望む一方で、どうもこの点が抜け落ちやすい気がするのだ。

サービスレベルや街の清潔さを見ても日本人の「素晴らしさ」は感じることが出来るのに、電車の優先席は常に「優先されなくてよさそうな方」でいっぱいだし、階段前で困り果てたベビーカーと赤ちゃんと大荷物を抱えたお母さんに手を差し伸べられない人は多い。

忙しなさでいっぱいいっぱいになり、自分自身を優先してしまう。他者を思いやること、社会をよくすることを意識して生きることは思っている以上に難しくなっているのかもしれない。

優しさの欠如はどこから?
エスターは上記に挙げたような問題点に通ずる、優しさの軽視を指摘している。

「過保護と過干渉が今どきの子育ての主流になる中で、やさしさは大切なものと見なされなくなっている。」(本書P.321)

「多くの親は勝つことだけに目が行っている。こどもを成功させることが親の目標になり、親は自分の助けがないと子供は成功できないと恐れている。完璧でなければ人生がダメになると思い込んでいるが、それが子供の害になるばかりか、親の不安と自身のなさをいっそう悪化させている。」
(本書P.321)

これを読んではっとさせられた人は少なくないのではないか。

世界中で競争が激化し、心の余裕がなくなっている。自分自身への自戒も込めて言うが、受験などの競争はもちろん大切であるものの人生の本質ではない。優しさをないがしろにしながら得る競争での結果というのは、後々思っている以上に大きな犠牲を払う可能性をはらむ。

勝つことばかりに目が行くとどんなことが起こるのだろう。

自分中心の子どもたち
日本の現状をエスターの指摘と合わせながら見ていこう。

「残念なことに、自分のことしか考えない子どもたちがますます増えてきていると感じる。自分がどこの大学に入りたいか、自分がどこに旅行に行きたいか、自分が何を買いたいかばかりを考えている。」(本書P.355)

「子供たちは、自分が世界の中心だと勘違いして育ってしまう。親が運転手のようにどこへでも子どもを送り迎えし、子どもは1番になることが何よりも大切だと教えられて競争をさせられ…...いつでも1番でないと人生に失敗したような気持ちにさせられている」(本書P.355-356)

忙しない日常を送っていると、自ずと自分のことばかり考えるようになる。子どもだけでなく、大人だって同じだ。
かつて、競争がもう少し穏やかなものであったときはもっと「優しさ」は身近だったのかもしれない。しかし競争ばかりを意識していると他者を思いやることましてやコミュニティ全体を優先する余裕などなくなってしまうだろう。

自分を中心とした小さな世界しか見えないことを良しとしていたら、恐らくエスターの子どもたちのような柔軟な発想は生まれず、長い目でみて子どもの可能性に限界を作ってしまうのではないか。

十把一絡げにしてはよくないが、ここでまた受験を例に挙げる。点数で序列のつく世界で戦う中で自分との闘いを覚えるかもしれない、人との競争での勝つ喜び負ける悔しさを知るかもしれない。更には絵にかいたような「エリートへの道」が開かれるのかもしれない。これはこれで間違いなく得ることあるわけだが、この価値観に染まりすぎたまま年を重ねると人とのつながりや、関わり、貢献、奉仕といった人生を豊かにする「幸せになる方法」や「他者への優しさ」を見失いかねないことも十分に理解する必要があると思う。

「他者への優しさ」なんて、きれいごとじゃない?そんな意見もあるかもしれない。けれど、私は本書をとおして「優しさ」が引き出すポテンシャルに気付かされることとなった。

優しさはどんな力を秘めるのか
きれいごとではなく、社会では他者への思いやりや優しさから創造されるものに人々はより共感し価値を感じるようになってきている。社会が成熟し、技術の発展も進み、先進国では特に何不自由なく快適な生活ができることが普通になってきたからかもしれない。

例えば、一般的に日本のような手厚い産休制度のない米国で長女のスーザンはグーグル社員の人生をよりよくするために有給産休を実現させた。女性には18週間の有給の産休育休、男性にも12週間の育休が与えられているという。また保育所も作ったという。

「グーグルは社員への優しさに注目している優良企業のお手本だ。経営陣が純粋に社員の健康や幸福を気にかけていて、仕事に情熱を傾けられるような職場で働きたいと、誰もが思っている。……社員に無料で食事を提供し、昼寝の場所を作り……だからこそ、常にアメリカでもっとも働きたい会社のナンバーワンとして評価されている。」(本書P.325-326)

グーグルのみならず、昨今人々を引き付ける企業の多くは数字や結果以上に「優しさ」を持ち合わせ、社員が真の意味での「幸せ」を見つけられるよう
な工夫をしている。

私自身もGoogleのオフィスにお邪魔して、ごはんを頂いた際には、こんな場所で働きたいなぁと思わずにはいられなかった。ビュッフェ形式の美味しいごはんをその日の気分で自分で選んで、それも無料食べられるのだ。

おわりに

スーザンの例からも見て取れたように、革命的な存在、ディスラプターとなるには人よりも何か卓越した発想ができる必要があるのではないか。
技術や知力も大切かもしれない、しかし現代では多くのものが優秀なロボットに代替可能なものとなっていく。そんな中でもどうやっても置き換えられないのが人が人として寄り添う力ではないだろうか。

「優しさ」とは私を含め多くの人が子に望むはずなのに、大きなかたちで還元できる人はほんのわずかだ。親としてどうやってその「優しさ」を子に伝えるか、本書にはたくさんのヒントが詰まっていた。

私自身も今一度シャキッとした気持ちで、恥ずかしくない大人でいられるよう心がけて子供とも向き合いたいと思った。






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