経済的自立の定義 (リバイバル版)
本NOTEでは、経済的自立を
「人に依存せず、かつ自分で働かなくても食べていける状態」
と定義する。
一生食べきれないチーズの山を見つけたネズミ
大量の賃貸不動産をもち、生活費を上回る賃貸収入がある金持ち父さん
自身のビジネスを多数所有し、生活費を上回る配当金収入があるユダヤ人の大富豪
等が分かりやすい経済的自立の例である。
一方、
1年間かけて世界中を旅行するために貯金した人
社会人になった後で、ドクターをとるために3年間分の生活費と学費を貯めた人
ボランティアをフルタイムで5年くらい本気でやりたくて、10年の社会人生活で5年分の生活費を貯めた人
もその期間の間は、経済的自立していると言える。
前者の例は、生涯に渡り働かなくても食べていける状態を示し、本NOTEではそれを「生涯・経済的自立」と定義する。
後者の例は、特定の期間の間は働かなくても食べていける状態を示す。本NOTEではそれを「期間限定・経済的自立」と定義する。
この2つの経済的自立について、具体的な人生のケースに当てはめて見ていこう。
★ケーススタディ1:旅行好きのサラリーマン 神宮寺 明さん(男性40歳)の場合
家族構成は、奥さんと子どもが2人。
子どもは高校2年生と中学3年生。今年、下の子が受験だが、屁理屈ばかりいって、いつもだらだらしているので、奥さんがピリピリしている。
神宮司さんは旅行が大好きで、旅行するために仕事をしているようなものである。今年は受験後の春休みにフロリダのディズニーワールドへ行き、全世界のディズニーランドの完全制覇を達成しようと考えている。
過去、旅行にお金をつぎ込み過ぎて、金融資産はほぼ0である。投資の経験もない。最近ふと、「旅行が仕事だったらなー」と考えることがある。
神宮司さんが来年から心を入れ替えて、手取り収入の30%を投資に回し、平均利回り2%で運用したとする。
この場合、「生涯・経済的自立」を実現するためには、何年かかるでしょうか?
A.5年以内
B.10年~30年
C.50年以上
答えはなんとなくわかると思うがCである。
このペースでやっていくと、61年間かかってしまう。そのころには神宮司さんも100歳を超えていて、「ばあさん、これからは死ぬまでお金の心配はいらないぞ!」といっても、少し遅い感じがする……。
それでは、少なくとも退職前の60歳までに「生涯・経済的自立」をしたいと考えた場合、どうしたらいいか?
方向性は2つである。
①超節約コース →手取収入の68%を投資に回す。平均利回りは2%で運用。
②博打コース →手取収入の30%を投資に回す。平均利回りは6.5%で運用。
食べ盛り、学び盛り、遊び盛りの2人の子どもを抱えて、超節約して経済的自立を目指すのは、家庭の幸せという観点からは本末転倒である。また、投資初心者の神宮司さんが平均利回り6.5%を実現しようとすると、間違いなく手練れの人にカモられ、逆に資産を減らすことになるおそれもある。
それでは、神宮司さんはどうしたらいいのか?
ここで出てくるのが「期間限定・経済的自立」である。
神宮司さんが最近よく考えるのは、こんなことである。
「今仕事ものってきたし、あと10年くらいはしっかりやって、それなりのものを残そう。でもその後は、5年くらい人生の夏休みをとりたいな。その間、旅行に関わって自由にやれると楽しいだろうな」
「神宮司さん、その夢叶います。」(朝倉未来氏風)
当初の予定どおり、手取り収入の30%を投資に回し、平均利回り2%で運用する。この場合、11年後に「5年間期間限定・経済的自立」を実現できる。
51歳で今の仕事を引退。そこからの5年間は、お金の心配をすることなく、好きなことがやれる。その間、思う存分、旅行に携わったらいい。そして5年後(=今から16年後)はおそらく、旅行に関わる仕事をしているだろう。もし稼げなかったら、元の仕事へ戻ればいい。
5年間、自分が心から好きなことをやった人は、確実にその前より価値が上がっている。
★ケーススタディ2:夢をもったセラピスト 如月 凛さん(女性25歳)の場合
如月さんは大学卒業後、ずっと大手のマッサージ店で働いている。
体育大学出身で、大学時代は部活に命をかけ、筋肉や食事についても詳しい。
マッサージでは一人ひとりの状況に合わせて、独自の技を創り出すのが得意で、お客さまに合った施術をしてくれるということで、リピーターも多い。ただ、その場で発明した技をあとで忘れてしまうことも多いので、今後は技に名前をつけようかと考えている。
いろいろな友人がいて、その中のひとりにデータ分析の専門家で投資のプロでもある綾小路 英虎さんがいる。英虎さんから投資の基本的な考え方を教えてもらっていて、投資には抵抗がない。
最近感じているのは、マッサージだけだとお客さまの体をよくするのに限界があることである。筋肉もうまくつけないといけないし、柔軟性も必要。食事も大事だし、お酒ともうまく付き合っていく必要がある。「このあたりを全体的にサポートできたら、もっともっとお客さまのパフォーマンスを上げられるのに!」と考え込むことが増えた。
英虎さんからは、「それだったら、エグゼクティブ向けに、仕事のパフォーマンス向上を狙ったサービスにすればいいんじゃない。エグゼクティブは仕事のパフォーマンスが上がるんだったら、けっこうなお金払うと思うよ」とアドバイスされた。「そうか、自分でやってみようかな」と、ちょっと思いはじめている。
「でも、やっぱりお金が心配。お金の心配なくチャレンジできたらいいなー」
「如月さん、その夢叶います。」(朝倉未来氏風)
彼女は夢に向けて節約生活を送る覚悟をしており、手取りの50%を投資に回す。英虎さんから伝授された投資スキルを使い、平均利回り4%で運用。この場合、5年後、「5年間期間限定・経済的自立」を実現できる。
このタイミングで子どもを産んで、子育てをしながら、新しいサービスを小さく試せばいい。5年間いろいろ試せば、いけるかいけないか、きちんと判断できる。5年後いけそうなら、そのサービスを大きくしていけばいいし、もしダメそうなら元の仕事に戻ればいい。
5年間、自分が心から好きなことをやった人は、確実にその前より価値が上がっている。
経済的自立の具体的な年数
以上2つのケースで年収の話が出てきていないことに、気づいた人がいると思う。具体的に計算すればわかるが、経済的自立を実現する年数に年収は影響しない。影響するのは、「手取り・投資比率(=手取りのうち何%を投資に回すかの比率)」と「投資の平均利回り」の2つだけである。つまり、経済的自立はすべての人に開かれている、ということである。
この2つの変数を用いて、「生涯・経済的自立」が何年で実現できるかを示したのが次の表である。これが世の中でいわれるFIREの年数であるが、決して甘い数字ではないことを理解する必要がある。
次に、いくつかの典型的なケースで「期間限定・経済的自立」の年数を見ていく。
平均ケースでも、「11年働いて5年好きなことをする」「20年働いて10年好きなことをする」といった生き方が実現できることを理解してほしい。一方、頑張らない場合は、やっぱりダメである……