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丹後ちりめんとは? ③ 京都、丹後地方、羽衣天女伝説から続く2000年の絹織物のストーリー。


日本で一番古い羽衣伝説のある、京都北部、丹後地方。

山で水浴びをしていた天女の一人が、羽衣を隠されて天に戻れなくなってしまい
そのまま村に住んで、お米やお酒作り、養蚕、そして機織りを伝えて、村が裕福になるという話。


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(標題の写真とこちらは京丹後市、天女の里、乙女神社に展示してあったものをお借りしています。)


私が学生の頃、学校の敷地内で突然発掘作業が始まりました。

どうやら2000年くらい前の、古代の遺跡の場所に学校が建っていたらしく、
少し前まで自分がテニスをしていたテニスコートでいきなり発掘が始まったのです。

大学の研究生らしき人と、近くに住む発掘アルバイトのおばちゃんたち、
だいたい3〜4人くらいで夏の暑い中、丁寧に作業をされていました。


しばらくの間、私は授業中に窓の外を眺めながらワクワクする毎日、
発掘作業から住居跡と陶器の器などが見つかっていました。


それから今まで、
丹後のいろんな場所で、集落や古墳の発掘作業がどんどん進み、古代の鏡や装飾品などたくさんのものが出土して、
丹後は海の向こうからたくさんの渡来人がやって来た、2000ほど前にとても栄えた場所だったと言うことがわかってきました。

最近は丹後王国、と呼ばれ、観光でも知られています。


丹後は本当に古墳や遺跡がいたるところに。
例えば機織りをしている窓の外はこんな古墳の風景だったりとか。

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友人の家の畑の中から突然鉄の塊が出て来て、実はその場所は古代の製鉄所だったりとか、

こちらがその鉄の塊。手の平に乗るくらいのサイズで、決して錆びることはありません。

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丹後の海の向こうは大陸です。

朝鮮半島へは直線距離では400kmくらい、大阪から東京くらいまでの距離でしょうか。

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最近、浜辺にはハングル文字や中国語の入った漂流物が流れ着いています

昔は人工的な漂流物などなかったのですが、
今ははっきりと人間の作ったプロダクトの漂流物。
どこから来たのかがすぐにわかります。

漂流物とはいえゴミなので決して良いことではないのですが、
それらが自然に流れてきたということは、
その昔、船に乗って海流にのり、
自然に丹後にたどり着くことができた、ということでもあります。



羽衣天女も大陸からやってきて丹後に住み着いた、
そのうちの一人なのかも、説。

天女は新天地での生活のため、お米や野菜の種などの他に、
衣食住の衣、絹の原料となる繭、蚕を、そして養蚕や織の技術を持って、海を渡ってきたのでしょう。

渡来人の大陸の故郷も、
もしかしたら絹織物の産地だったのかもしれませんし、
そして天女のまとっていた羽衣は、
海を渡る前に自分で織った絹織物だったのかも。。。


麻布しかなかった古代、
繭から紡いだ絹の糸から作られる布は薄くて光沢もあり、
それはそれは美しくて、この世のものとは思えなかったでしょう。

山奥にもともと住んでいた村人は、そんな美しい布を見て、そして大陸の豊かな生活の中で育った、洗練された見た目の女の人を目にして、

思わず羽衣を隠してしまったのかもしれません 笑


そしてその羽衣天女は稲作や絹織物で村を裕福にしたのち、
豊受大神として丹後の多くの神社に祀られることとなります。

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このようにして丹後では養蚕と絹織物が始まり、
奈良時代には朝廷に献上されるようになりました。

地域の特産品、自慢の農産物やプロダクトを届けるようなイメージですね。


当時の布が奈良の正倉院に今でも保存されています。

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(公益社団法人京都染織文化協会のHPより)


平安時代の十二単は丹後の絹織物だったのかもしれません。
戦国時代のお姫様も。
江戸時代のお姫様や商人の娘さん、吉原の花魁の衣装も

白い繭から作られた光沢が美しい絹織物は
丹後から全国に広まっていったのだと思います。

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そして丹後に祀られていた豊受大神のその後、

今から約1500年前の西暦478年に、当時の天皇から今の三重県の伊勢神宮に招かれ、

食と産業の神様として
今の伊勢神宮外宮に鎮座されることになります。

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こちらの案内が三重県の伊勢神宮、外宮の入り口にあります。

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丹波国、というのは古代丹後の地名です。

今では日本海側の小さな田舎町ですが、
古代は大陸からやって来た人々が行き来する
賑やかな国際都市だったのかもしれません。

今でも秋祭りなどの神社の祭事では、
古代から受け継がれる踊りなど芸能などで、
海の向こうの文化や、古代の空気を感じさせるものが多くあります。


丹後ちりめんは300年の歴史ですが、
丹後の絹織物としては約2000年の歴史。

1000年後の未来、羽衣天女もたらした丹後の絹織物はどのようなストーリーが続くのでしょうか。。


未来に繋がるようにするには、

私たちも今、ちょっと頑張らないといけません。

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