喋らない子たち

ピアノの生徒の中であまり喋らない子がいます。
過去の記録では小学一年生で入会して、六年生で退会するまで、ただの一度も声を聞いたことがなかった子が最長記録。
初めのうちは決まったテキストを進んでいましたが、メキメキと上達して、だいぶ弾けるようになったところで、そろそろ弾きたい曲があるのではないか?と思い
「何か弾きたい曲ある?」と聞いたこともありましたが、ただ首を横に振っただけでした。無言で6年間通う間にブルクミュラーを終わったくらいだったか?
その後中学に入ってからは合唱コンクールの伴奏をするようになったと聞きました。

中学一年生の男子
全然喋らないわけではありませんが、やはり首を縦か横に振るだけです。
大仏様のようなおすがたにマスク。ほぼ表情は分かりません。
本人「必要な時はしゃべる」とお母さんには言っているそうで、まさに必要最低限。でもピアノは黙々と弾いてきて、この子もまた合唱コンクールの伴奏を引き受けてきました。
自分で立候補したの?と聞いたら、その時だけ
「弾きたい人って先生が言った時、手をあげたのが僕だけだった」と、、
普段は、返事はなくとも注意したところはすぐに直して弾くのでレッスンは成立しているし、最後にわからないところある?と聞くと、首を横に振り
自分で練習できる?と聞くと、首を縦に振って終わるのです。
そのペースで小6の時エリーゼのためにを、そして中1で花の歌を美しく演奏し、
大仏様のような彼の奏でる音は教室でも大評判となりました。

小6女子、学校では口を聞いたことがありません。
ピアノは始めたのも遅かったこともあり、両手で弾くのが苦手ですが、ジブリの曲が大好きで、右手で旋律だけ弾いて、伴奏を弾いてあげるととても嬉しいようでした。レッスンでは初めのうち口数少なかったのですが、最近は普通にしゃべるようになりました。ピアノしか受講していないし、他に友達がいるわけではないので、私と一緒に通っている妹以外とは口を聞きませんが、それでも自分から発表会に出ると言ってくれました。
基本恥ずかしいのか、あまり顔も上げないし、猫背なのですが、こちらもあまりそれを指摘せず、人前で演奏するチャレンジ精神だけでも応援しようと出てもらった発表会ですが、終わってから次の日のレッスンに来て
「今度は左手も弾く」と!そして教室で本番の動画を一緒に見た後、お母さんから
「猫背なのを気にしていました」と連絡がありました。
向上心もあるし自分も客観視できていることにびっくり

まあ、喋らないからと言って向上心がないと思うのは偏見ですが、なかなか本人の気持ちがわからないと、対応に迷うこともあります。でも人とのおしゃべりが苦手な子でピアノが好きな子がこんなにいるとは、何か彼らの心に共通に作用するものがあるのかもしれません。
言葉を発しない分、演奏することが自己表現なのでしょう
科学的根拠は分かりませんが、とにかく私の教室で見られている現象なのです。
ピアノが音楽が彼らの心を解き放っているとすれば、その音は幸せに響いてくれますね


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