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ソニー創成期を辿る史料

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世界的企業となったソニー創成期を辿る、おすすめの史料をご紹介。
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記事一覧

日本の磁気記録技術の開発史の決定版! 〜 『日本の磁気記録開発 - オーディオとビデオに賭けた男たち』 中川靖造 著(ダイヤモンド社 1984)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (56) 企業戦略の視点から、日本における磁気記録技術の進歩の歩みを辿ったドキュメンタリー作品。 著者は、週刊誌や月刊紙の取材記者として活躍しフリーライターとなった中川靖造 (なかがわ やすぞう) 。 本書の他にも『次世代ビデオ戦争』、『日本の半導体開発』や『海軍技術研究所』といった日本の科学技術関連の著書をいくつか残されています。 「裾野の広い磁気記録開発史からみれば、ほんの一側面でしかない」 と、著者本人が語っているとはいえ、お

SF作家 星新一によって描かれたVTR普及後の未来の話 - 『ビデオコーダーがいっぱい』 星新一著(SONYニューズ 1965)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (50) 一般家庭にビデオを普及させていくという思いからコンシューマ・ビデオ(Consumer video) の略から「CV」と名付けられ、数々のコストダウンのアイディアと、それらを組み合わせた努力により、ソニーより世界初として誕生した家庭用ビデオテープレコーダー『CV-2000』。 このVTRが発売された翌年1965 (昭和40) 年1月に、ソニーの社内向け冊子『SONYニューズ』No.85にこの『CV-2000』をテーマにした「ち

日本を代表する企業の創業者・経営者達の原点に触れ「真の教育」を問う 〜 『情熱の気風 - 鈴渓義塾と知多偉人伝』 二宮隆雄 著 (中部経済新聞社 2004)

平成15 (2003) 年から平成16 (2004) 年にかけて、335回にわたって中部経済新聞に連載され大きな反響を得た、歴史小説家、時代小説家の二宮隆雄 (にのみや たかお、1946 - 2007) による『情熱の気風 ~鈴渓義塾と知多偉人伝~』では、多くの知多半島出身の企業創業者や経営者、経済人、教育者などの偉人たちの物語が紹介されていますが、中でも特に注目される箇所は、トヨタ自動車、ソニー、敷島製パン (Pasco) の創業期を探り、この三大企業の切っても切れない深い

ソニーフロンティア精神の象徴〜「モルモットの精神」を持つ「金の卵を産むニワトリ」が産んだ 『ビデオムービー』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (43) 1958年 (昭和33) 年8月17日の『週刊朝日』に、ソニーの後から出発したが、今ではトップのトランジスタメーカーとなっていると、東芝のトランジスタ工場を紹介する際、 「なんのことはない、ソニーは東芝のためにモルモット的役割を果たしたことになる」 『週刊朝日』1958年 (昭和33) 年8月17日号より と、「初めてトランジスタをラジオに使用する冒険、それに伴う犠牲はソニーに任せて、成果の方は大資本の方で頂戴する」という意

技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語 〜 『電子の世紀』 林芳典 著 (毎日新聞社 1966)

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (41) 1965 (昭和40) 年11月より、100回に渡り毎日新聞紙上で連載された『電子の世紀』は、技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語を紹介し、1966 (昭和41) 年5月に書籍として発刊されました。 著者の林芳典 (はやし よしのり) は、毎日新聞経済部の財界担当記者で、自身でも「科学技術には縁遠い」と語っていますが、この本については「技術上の記述が正確なのには感心した」と専門家からお墨付きをもらったエピソードが残って

元祖ウォークマン? 「街の声を聞こう!」街頭録音ブームを先駆け 〜 横山隆一の4コマ漫画『デンスケ』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (17) 1949 (昭和24) 年から1955 (昭和30) 年にかけて毎日新聞で連載された、漫画家・横山隆一 の4コマ漫画『デンスケ』で、主人公の デンスケ が肩がけのテープレコーダーを使って、街頭録音を行う話が掲載されていました。 1951 (昭和26) 年4月、日本初の民間放送としてラジオ16社が予備免許を受け、9月には中部日本放送 (現CBCラジオ) と新日本放送 (現毎日放送) がラジオ放送を開始したことを皮切りに、全国で民間

ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者が残した名著 〜 『ソニー技術の秘密』 にまつわる話を

■ ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者1946年 (昭和21)年に井深大、盛田昭夫により創設され、現在では世界的な大企業としてその名を世界に轟かせている ソニー株式会社(Sony Corporation) その創業期より数々の「世界初」「日本初」の製品を誕生させ、ソニー創成期の基礎技術を確立した、伝説の技術者がかつて存在していました。 1950 (昭和25) 年に発売された、国産初のテープレコーダー『G型テープコーダー』。 1955 (昭和30)年に、ト

「遠慮のない批評」で綴られたソニー経営史研究のバイブル 〜『S社の秘密』 田口憲一 著 (新潮社 1962)

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (37) 1962 (昭和37)年10月に発売された書籍『S社の秘密』 は、おそらく最初のソニー経営史研究本で、その後ソニーについて語られる多くの関連書籍の「参考文献」には、必ずというほどリストされている本でもあります。 著者は、産業経済新聞の論説委員を務めた、経営評論家の 田口憲一(たぐち けんいち)。 あとがきに自身で書かれているように、「遠慮のない批評」でやや辛口な印象を受けますが、とてもニュートラルな視線でソニーの販売面での分析

盛田昭夫の言葉から、社会人としてのあり方を学ぶ〜「学歴無用論」 盛田昭夫 著 (文藝春秋 1966)

ソニー創業20周年、銀座ソニービルが開館 (2017年に閉館) した 1966 (昭和41) 年 に文藝春秋より発刊された『学歴無用論』は、ソニー創業者の一人 盛田昭夫 が45歳、ソニー副社長の時に書かれた最初の経営書でした。 “この本が出版された頃から日本では学生運動が盛んになり始めていた。その背景の一つとして「学歴主義」の弊害が取りざたされた。学生たちは、学歴によって「日本帝国主義」の尖兵として、あちこちの企業に振り分けられることを拒否するという趣旨の発言を繰り返した。

テープレコーダが重要な役割を持つようになった時代を伝える名著 〜 『磁気録音機』 多田正信 著 (オーム社 1953)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (24) オーム社より出版された 多田正信 の著書『磁気録音機』は、国産初のテープレコーダー「G型」が発表されて僅か3年後、1953 (昭和28) 年に出版され、未知の機械であったテープレコーダーの本格的な専門書籍として、東通工のみならず日本中の技術者に愛読された名著でした。 著者は日本電気株式会社 (現NEC) より、技術開発部門のトップとして東通工に入社し、後にソニー取締役を努めた 多田正信。 “本書は、この磁気録音の揺らん期ともい

盛田昭夫によるテープレコーダー解説書 〜 『テープ式磁気録音 - テープコーダーとはなにか? 』 盛田昭夫 著 1950 (昭和25)

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (13) 1950 (昭和25) 年当時の日本では、放送局等ごく一部での輸入された物を除いて、「テープレコーダー」の使用方法どころか、存在そのものが、一般的にはまだ認知されていませんでした。 当然、国産初のテープレコーダーとして開発された東通工 (現ソニー)製の『G型テープコーダー』も、一般消費者から見ればまだまだ「未知の機械」にすぎなかったのです ソニー創業者の一人盛田昭夫は、約40kgの大きな筐体の『G型』テープレコーダーを自ら担い

問合せ殺到!? テープレコーダーの認知度を高めた、東通工 (現ソニー) 初の ″宣伝広告” 〜 『毎日グラフ』 1950 (昭和25) 年3月15日号

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (10) 松竹映画女優 西条鮎子 が表紙を飾る『毎日グラフ』1950 (昭和25) 年3月15日号では、東京通信工業 (現ソニーの前身、以下 東通工) 初の”宣伝広告”として当時開発中だった国産初のテープレコーダー『G型』開発状況の取材記事が「ものをいう紙」というタイトルで紹介されました。 ” 毎日新聞社が発行している『毎日グラフ』の昭和25年3月号には、A型、G型、ソニ・テープなどの開発状況の取材記事が掲載されました。 東通工にとって初