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技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語 〜 『電子の世紀』 林芳典 著 (毎日新聞社 1966)

「ソニー技術の秘密」にまつわる話 (41)

1965 (昭和40) 年11月より、100回に渡り毎日新聞紙上で連載された『電子の世紀』は、技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語を紹介し、1966 (昭和41) 年5月に書籍として発刊されました。

著者の林芳典 (はやし よしのり) は、毎日新聞経済部の財界担当記者で、自身でも「科学技術には縁遠い」と語っていますが、この本については「技術上の記述が正確なのには感心した」と専門家からお墨付きをもらったエピソードが残っています。

そんな本書ですが、

「日本エレクトロニクス技術の夜明け」

と称される、1897 (明治30) 年12月に1.8kmの無線電信機による通信を成功させた 松代松之助 (まつしろ まつのすけ) の物語から、国産初の「写真電送機NE式」開発の 丹羽保次郎 (にわ やすじろう) 、

世界で最初に「電子式テレビジョン」の開発に成功した「日本のテレビの父」と呼ばれる 高柳健次郎 (たかやなぎ けんじろう) による「高柳式テレビジョン」。

さたに、世界中で普及した「八木アンテナ」の 八木秀次 (やぎ ひでつぐ)。

そして磁気録音技術には欠かせない「交流バイアス方式」発明の永井健三 (ながい けんぞう) による、磁気録音研究からソニーのテープレコーダー、トランジスタ開発まで、技術立国日本の基盤を作った技術者たちの開発物語が描かれています。

第10章にあたる「モルモット」と題された章では、ソニーのトランジスタ開発と、1973年 (昭和48) 年に「ノーベル物理学賞」を受賞する 江崎玲緒奈 によるトンネルダイオード(またはエサキダイオード)という新しい電子デバイス誕生の物語を中心に、

「ソニーは大企業のためにモルモット的役割を果たしたことになる」

と、初めてトランジスタをラジオに使用する冒険、それに伴う犠牲はソニーに任せて、成果の方は大資本の方で頂戴するという意味合いの皮肉に対し、井深大 の

「誰もやれない技術を、誰よりも早く開発する」

という「モルモット精神」で世界を目標にした開発物語が描かれています

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国産初テープレコーダーの開発者・木原信敏の開発物語はここでは含まれてはいませんが、同時期にソニーの内部で開発が進められていたトランジスタ開発の物語は、木原が手掛けるトランジスタラジオやVTRといった製品に繋がり、別の側面から当時の開発状況を知ることができる一冊でもあります。

また「発明の喜び」と称された後書きには、丹羽保次郎、八木秀次、永井健三、井深大 ら、技術立国日本の基盤を作った偉人たちの寄稿文が掲載されていて、読み応え満点です。

文:黒川 (FieldArchive)


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