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元祖ウォークマン? 「街の声を聞こう!」街頭録音ブームを先駆け 〜 横山隆一の4コマ漫画『デンスケ』

『ソニー技術の秘密』にまつわる話 (17)

1949 (昭和24) 年から1955 (昭和30) 年にかけて毎日新聞で連載された、漫画家・横山隆一 の4コマ漫画『デンスケ』で、主人公の デンスケ が肩がけのテープレコーダーを使って、街頭録音を行う話が掲載されていました。

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1951 (昭和26) 年4月、日本初の民間放送としてラジオ16社が予備免許を受け、9月には中部日本放送 (現CBCラジオ) と新日本放送 (現毎日放送) がラジオ放送を開始したことを皮切りに、全国で民間放送局が認可されだし、放送用テープレコーダーの需要が激増。

「街の声を聞こう」

という趣旨の番組が流行ってきたこともあり、「街頭録音」をする風景が街のあちこちで見掛けられるようになっていたのです。

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これが話題となり、東通工 (現ソニー)の技術者・木原信敏によって開発された肩がけ可能な『M型』テープレコーダーは通称『デンスケ』と呼ばれ、当時の街頭録音ブームの先がけとなります。

『デンスケ』という名称は商標登録され、それ以降のソニー製の街頭録音機は長きにわたって『デンスケ』の愛称で呼ばれたのでした。

ポータブルマシンは、一つの弱点を持っていました。持ち運びながら記録再生をすると、本体が揺れてテープ走行スピードが変化してしまうのです。キャプスタン駆動を用いますと、駆動源のモーターなどからの回転からくる細かな数ヘルツ以上の振動が、テープにスピードむらとして伝わってきますので、それを取り除く手段として、フライホィールを用いました。
 このフライホィールは、据え置き型の機械には非常に有効な手段なのですが、テーブルから持ち上げて機械全体を揺さぶってみると、そのゆっくりした周期で、記録や再生した音がワウワウと揺らいだ音になってしまいます。これは「ワウが出る」とか「ワウが発生する」と言われている現象で、デンスケ型の機械では、横山隆一氏の漫画のデンスケくんのように、駆け出しながら音を採ることは、あまりお勧めできないことでした。


ソニー技術の秘密』第3章より

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この、デンスケ型の機械で問題となった、振動による「テープの回転ムラ」が引き起こす「ワウが発生する」という現象については、「本体が揺れる方向と逆方向にフライホイールを制御する」という「アンチローリング方式」の考え方により、木原自身の手により発明された「ワウ・フラッター・キャンセラー」という仕組みを使用し後日無事に解決しています。

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この「ワウ・フラッター・キャンセラー」は、30年後の1979年 (昭和54) 年に発売され、世界的ヒットとなる再生専用カセットプレーヤー『TPS-L2 ウォークマン』にも小型化され搭載。

デンスケの「街頭録音」から生まれた技術は、自由に持ち運べるだけではなく、

「散歩をしながら音楽を聞きたい、音楽を気軽に持ち運びたい」

という全く新しい音楽文化へと引き継がれ、世界中の若者たちを巻き込み広く浸透していったのです。

文:黒川 (FieldArchive)



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