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問合せ殺到!? テープレコーダーの認知度を高めた、東通工 (現ソニー) 初の ″宣伝広告” 〜 『毎日グラフ』 1950 (昭和25) 年3月15日号

ソニー技術の秘密にまつわる話 (10)

松竹映画女優 西条鮎子 が表紙を飾る『毎日グラフ』1950 (昭和25) 年3月15日号では、東京通信工業 (現ソニーの前身、以下 東通工) 初の”宣伝広告”として当時開発中だった国産初のテープレコーダー『G型』開発状況の取材記事が「ものをいう紙」というタイトルで紹介されました。

毎日新聞社が発行している『毎日グラフ』の昭和25年3月号には、A型、G型、ソニ・テープなどの開発状況の取材記事が掲載されました。
東通工にとって初めての ″宣伝広告” であり、しかも発売前の商品の発表ですから、大変話題になりました。
すでにこのころから、東通工は話題を先取りする会社だったのでしょう。


ソニー技術の秘密』第1章より

記事に使用されている写真の中には、入社2年目の若き技術者だった木原信敏が組み立てた『簡易試作テープレコーダー』や、開発中の『G型』、試作機止まりとなる『A型』などの貴重な写真を見ることができます。

そして記事の内容は以下のようなものでした。

これは最近日本で大量生産に写ろうとしている「ものいう紙」ともいうべきテープ録音機 (マグネティク・テープ・レコーダー) である。
「ものいう紙」は1935年頃ドイツで発明され、戦後アメリカに渡って改良され、今では立派な実用機になっているが、日本でも時を同じくして、東京工大の星野愷教授らや東京通信工業の技師たちによって研究され、日本独特のテープ録音機がこのほど実用機としておめみえした。


『毎日グラフ』1950 (昭和25) 年3月15日号

ここで紹介されている 星野愷 (ほしの やすし) は、1948年(昭和23年)に、日本で最初の塗布型磁気テープを作製し、音声の記録を行ったといわれる工学博士であり電気化学者で、井深大、盛田昭夫 とも交流があり、東通工が開発していた日本最初の磁気テープの生産技術の確立に寄与した一人でした。

この録音方法はいたって簡単で、テープに十分研究された磁性塗料が塗ってあり、このテープをヘッド (電蓄のピック・アップに相当するもの) に軽く接触させながら走らせ、マイクロフォーンでしゃべると、それがすぐ録音されてしまうのだから、丸でおもちゃのようなかんたんさである。

『毎日グラフ』1950 (昭和25) 年3月15日号
学校、議会、裁判所など、どこで使ってもこんな重宝なものはないが、更に進むと「ものいう雑誌、新聞」が出来る可能性もあると製作者はいっている。米国では一足先にその実験も終わり、円形の紙に録音して手紙代わりに郵送しているということだ。日本でも「ものいう紙」が一般に利用される日も近いことであろう

『毎日グラフ』1950 (昭和25) 年3月15日号

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新聞社発行雑誌での宣伝はさすがに効果的で、なかなか売り込めなかったテープレコーダーが、毎日グラフに掲載されたのを機会に、全国から問い合わせが殺到します。
値段を聞いて尻込みするお客も多かったものの、その中のいくつかは契約ができ、商品として売れていったようです。

この記事をきっかけに、東通工は1950 (昭和25) 年5月に新聞、通信、放送の関係者を招いて、大量生産に入ったテープレコーダーの製造現場を公開し好評を得、需要が増加するにつれて販売網の整備が必要になることから、八雲産業を総代理店として、8月より本格的市販を行うようになるのです。

販売苦戦を強いられた国産初のテープレコーダー『G型』のお話はこちら↓

文:黒川 (FieldArchive)


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