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その輪の中に入りたい

気に入っているひとが、知らない誰かと仲良くしていると、「むむむ」「もやもや」「釈然としない」という感情がわいてくる。

相手が人間なら「そう・・・きっとすてきなひとなのね」と切り替えられても、菓子となるとそうはいかない。

人混みの中でも、自社の紙袋はおのずと目に飛び込んでくるくらいだ。

すれ違いざまに、心の中で「あまたのお菓子の中から、当社をお選びいただきありがとうございます」と深々お辞儀する。

もはや商品と一心同体、メーカー勤めの至福の時。

だから、某演出家が差し入れに選んだ(らしい)かわい子ちゃんが気になって仕方なかった。

ひいきびとが、ひいきにするお菓子。

誰よその子!いや菓子!!

といったところだろうか。

そもそも、この演出家にあまりかわいらしいお菓子のイメージがないので意外だった。

『sweet7』や、『振り子とチーズケーキ』など、菓子をタイトルに据えた作品はある。

『ノケモノノケモノ』では、グッズでたべっ子どうぶつとコラボしていて、そのときも臍を噛んだような気がする。

もう9年前(の画像)

演者として舞台に出ていらした頃は、作品の前や最中には甘いものは食べない、という話をどこかで読んだからかもしれない。

ご本人のシュッとしたフォルムや、ストイックな姿勢もあいまって、雲やかすみやどんぐりを食べて生きているような印象。

だから余計に気になってしまった。

かわいらしい動物が穴から顔を出したタイプのドーナツはわりとよく見かけるが、このメーカーははじめて見た。

販売者はカタログギフトの会社で、直営店は存在せず、オンラインでの販売が主体。

某演出家もお取り寄せしたのだろうか。

ネットで買う前に実体が見たい。
調べたら、某雑貨屋で取り扱っていそう。

雑貨屋でぇ~??と思いながら最寄りの店舗へおもむくと、かわい子ちゃんは店先の一番目立つところに置いてあった。

うさぎもいるのか

手のひらサイズの小ぶりなリングに、コロンとしたクマとウサギがちょこん。
耳のかたちのクオリティが高い。

つぶらなひとみは遠くを見つめていて、目が合いそうで合わない。

クマのまるみがかわいい

クマとウサギがおのおのフレーバーを自己申告、ふきだしがマンガのような雰囲気。

\いちご/とのこと

ドーナツ生地はふわふわしっとりやわらかいので、クマとウサギがYogiboに埋もれているようにもみえる。

かわいらしい。でもちょっとシュール。

目が合っているのかいないのか

某演出家は、森にアトリエをかまえているという。そういえば、鼻兎(はなうさぎ)というキャラクターもいて、過去にマンガも出版されていた。

「ちいさな森のドーナツ」「森ののんびりおやつ」というワードが琴線に触れたのだろうか。

自社商品も、ひいきびとの視界に入りたい。その感性にささりたい。

このドーナツが差し入れされたのは、先日おこなわれた『回廊』という作品。

ここ数年、表舞台からの引退や、エンタメ市場のシュリンクなどいろいろなことがあったため、ひさびさの新作長編である。

配信がメインだが、収録のため、実際の劇場でもわずかながら上演された。

幸運にもチケットが取れ、なんの報いか最前列で、舞台まで1メートル。

コンビ時代のコントに「遠いよりは、近いほうが、圧倒的にいいもんね!」というセリフがあった。

近すぎて、圧倒的に演者のヒザがよく見えた。

考えさせられつつ、小学生男子感をまとった内容の満足感は言わずもがな。
姿こそ見せねど、演出家本人がすぐそこで見守っていらっしゃるのは明白だった。

そしてカーテンコール後、拍手が鳴り止んだのに、わたしもふくめ微動だにしない観客。

規制退場に慣れすぎて、何らかの指示を待ってしまったのだと思う。

劇場スタッフさんの「し、終演しましたので、どうぞお帰りください??」という困惑した声で、最後に波のような笑いが起きた。

「回廊」だけに、またここからループして何か始まるのでは?と思わせる演出だとしたら、なかなかの策士だ。

ありうる。

「回廊」だけに、差し入れもドーナツだったのだろうか。

ありうる!

鼻兎は、現在Twitterで月1~2回ほどアップされている。

過去の投稿を見返していたら、本のキャラクター(=ご本人の分身)がドーナツを食べながら釣りをしていた。

ただ単にドーナツがお好きなのかもしれない。

うち、あいにくドーナツは出していない。

また臍を噛んだ。ループ。

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