自慢のフルーツポンチ
ついに手に入れたぞー。
近江屋洋菓子店のガシャポン、大人の手土産コレクション。
去年は取扱店が少なく逃してしまったが、ありがたいことに再販していた。
2回目で目当てのフルーツポンチを引き当て、気が大きくなって3回目をまわしたら、いちごサンドショートまで出た。大満足。
歴史を感じる紙袋も、ファンシーな包装紙も、オーガンジーのリボンの透け感も、見事に再現されている。
そういえば、前回近江屋洋菓子店を訪れたとき「次はフルーツポンチを赤子のように抱いて帰る」と宣言していた。
気づけばもう、1年以上経っている。
ガチャも手に入ったことだし、そろそろ行こうかな、でも19時閉店だから会社帰りだと品薄かな、と逡巡していたある日。
また、あの人が背中を押す。
江口のりこさんが、テレビで近江屋洋菓子店のコーヒーゼリーを紹介しているではないか。
前回訪れたときと、まったく同じシチュエーションだ。
ちなみに、江口さんはこの日も飄々と笑いをとっていた。ちょっぴり素っ気なく見えても、わざとらしさや裏表のないところが好きである。
そして、このポストも追い風になった。
たっぷりご用意なら、時は今。
できるなら、クリームたっぷりのコーヒーゼリーも食べたい。放送の翌日だし、さすがに厳しいか。
御茶ノ水駅から転げ落ちるように坂をくだり、汗だくで閉店20分前に到着。なんと、まだざっと10人は並んでいる。
相変わらず無機質でクラシックなショーケースに、コーヒーゼリーは…残念ながらやっぱりない。
フルーツポンチは…ラスト3個!
しかし、前に並ぶ人がひとり、ふたりと残りわずかなフルーツポンチを連れていってしまう。
早歩きしたせいなのか、買えるか買えないかの瀬戸際のせいなのか、動悸と汗が止まらない。
あとひとり。前の人の注文に耳をそばだてる。
心の中で大きくガッツポーズした。
うしろにはまだ列が伸びていたが、今日はわたしのものだ、あしからず。
贈答用ならガチャと同様のラッピングをしてもらえるそうだが、お値段が違うため、自宅用にした。
約4000円と引き換えに受け取ったそれは、ひんやりと、ずっしりと重く、凜としている。
プラスチック容器なのに、なんという重厚感。
ついに手に入れたぞー!!
高さ約15㎝、口径約10㎝はあろうか。
全体を良い角度と明るさで写せる場所は、台所のシンクの上しかなかった。
生活感のある背景でフルーツポンチには不釣り合いだが、決して風呂場ではない。
ガチャのフルーツポンチと比較すると、こんな感じだ。
皮付きのりんご、グレープフルーツ、ルビーグレープフルーツ、青肉メロン、赤肉メロン、ぶどう、マスカット、バナナ、オレンジ、キウイ、パイナップル、ドラゴンフルーツ。
とにかく種類が豊富だし、ひとつひとつ手作業で詰めているだけあって、彩りのバランスがとてもきれいだ。
360°、どこからみてもうつくしい。
モノクロのドラゴンフルーツが、いい差し色になっている。
バナナやりんごがまったく変色していないし、パイナップルやりんごのカットサイズも、隙間なく詰めるために計算されている気がする。
職人技とはこのことだ。
ガチャのほうも、極力色かぶりしないようにひとつひとつ詰めていったのだろうか。
容器のふちギリギリまで、蓋の空間ギリギリまで、あふれんばかりに詰まった果実たち。
近江屋洋菓子店の製造部門のみなさんは、テトリスや収納ボックスの使い方もきっとお上手なのだろう。
そのおかげで、盛り付けるときも上から順番にすくっていけば、まんべんなくいただける。
3人前くらいかな、と見積もっていたのだが、取り分けても取り分けても減らない。
とくに、グレープフルーツとパイナップルとメロンはもりもりだ。
全種類をひとつずつ盛りつけても、ざっと約6人前はある。製造日から5日間日持ちしてよかった。
グレープフルーツ・オレンジ・パイナップル・キウイは、持ち味の酸味を残しつつも、キレのよい甘さのシロップが染み込んでいる。華やかでさわやか。
メロン・皮付きりんご・ぶどうは、シロップに浸かっていたとは思えないほどシャキシャキだ。ぶどうは種なしなのでサクッといける。
バナナは青臭さが全然なく、甘くてとろり。
シロップの中でモヤモヤにならないのが不思議だが、それも鮮度や追熟を計算して仕入れや製造をしているのだろう。
はじめましてのドラゴンフルーツは、シャリッとやわらかい食感で、淡泊なクセのない甘さ。彩りだけでなく、味でもいいアクセントになっている。
貴重品だというのに、次から次へとぱくぱく食べてしまった。食べ終わった後も、しばらく喉がフルーティーで心地よい。
果実の鮮度を保ち、その魅力を際立たせているのが、この透明なシロップだ。
スッキリした甘さで、そこに果実の様々なうまみが染み込み、これだけでも飲める。
翌日になると、果物の果汁とシロップがお互いに染み混み合って、よりまろやかになった。
日々刻々と変化するフルーツポンチ。
フルーツポンチが、こんなに味わい深く、奥深く、感動するものだったとは。
近江屋洋菓子店自慢のフルーツポンチは、食べたことを自慢したくなるフルーツポンチでもある。
いろんな意味で、頻繁には買えないけれど。
そういえば、江口さんは番組で「明日は整体に行きます」と仰っていた。
前回は、近江屋洋菓子店を「よく行く整体の近くにあるお店で~」と紹介されていたので、この日、もしかしたら訪れていたかもしれない。
コーヒーゼリー、買えただろうか。
次回は、わたしもコーヒーゼリーを連れて帰るのだ。
手に入れるぞー。
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