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小説について考える記事

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だいたい軽めのエッセイになりますが、小説論や創作論と少し絡めて書いています。
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#日記

「素粒子」を読む。成功者も落伍者も、愛だけは手に入らない。

(性的で露悪的な表現が含まれます)  いい加減に布団をきれいに洗濯しなければいけないな、…

味生大昂
4か月前
31

小説書きの同士に、改めて薦めたい本はない。しかし……

 おすすめの本はありますか?  noteに限らず、ネット上でありとあらゆる人が「名刺代わりの…

味生大昂
7か月前
44

「宙返り」を読む。理屈を超えた、瞳のちから。

 謝罪会見というのは、気が重いものである。  いや、実際に聴衆を集めて謝罪会見をしたこと…

味生大昂
1年前
33

「サージウスの死神」を読む・物語の主人公は呪われている

 佐藤究の「サージウスの死神」には、ギャンブルに取り憑かれている破滅的な主人公が登場する…

味生大昂
1年前
25

人生のためにならない話も、漬物樽に入れておく

 この日はお昼のおやつを食べるために、駅前のマクドナルドに向かっていた。天からスポイトで…

味生大昂
1年前
31

なんの専門分野も持たない、子供が主人公の小説は「軽い」のか?

 読み始めた小説が、例えばいきなり食事中の雑談から始まると 「これって、エンタメとしては…

味生大昂
1年前
23

初期の中村文則が描いていた当事者性

  「私」ばかりの中村文則の小説  ふつう、「私は、私は、私は」という風に自分の話しかしない人は煙たがられるし、小説にして読んでいても面白くない。延々と続く内的独白は読んでいて読者が辛い。殻にばかり籠もっていないで、きちんと他人とのあいだに対話を成立させましょう、というのが小説の執筆法における常識である。異議なし。モノローグからディアローグへ、だ。  しかし何事にも例外はある。初期の中村文則の小説は自分の内面について思い詰める話ばかりだが、なぜかとっても面白い。孤児院で

(現在編集中)共通のルールの下で争う物語

 僕は受験勉強をほとんどしなかった人間なのだが、たとえ生来のズボラな劣等生であっても、他…

味生大昂
2年前
10

やる気のない疲れた探偵

 このあいだ久しぶりに探偵小説を読んでいたら、僕の内で、物語の主人公像というものへの見方…

味生大昂
2年前
17

これまで読んできた言葉を忘れたくない

 長く本を読んでいると、何かのきっかけで「この小説家さんはもういいかな」と思う時がある。…

味生大昂
2年前
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僕が仰ぎ見ているモノスゴい小説家3人

 今は午後18時46分です。  ガスコンロでシチューの鍋を温めて、もう少ししたら食べよう…

味生大昂
2年前
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風景描写の3つめのタイプを考えた

 風景描写には主に2つのタイプがある。  1つは人物のこころの動きを、雨や雪や花鳥風月とあ…

味生大昂
3年前
8

風景描写の2つのタイプを考えた

 小説の風景描写が好きか、あるいはそんなものは飛ばしてストーリーを進めてくれ、と思うかで…

味生大昂
3年前
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真夜中の散歩中に見たもの(ドストエフスキーと貧困について)

(読まれる方にとって不愉快な表現が多々あると思います。ごめんなさい)  ドストエフスキーの描く街の雰囲気が好きだ。  たしか高校生の頃だったが、ドストエフスキーの「罪と罰」や「悪霊」に出てくるペテルブルクの描写に「リアルだ」という感じを味わっていた。 雨が上がったばかりの路上の油臭さとか、家の前に捨てられた卵の殻のわきを鼠が走っていく描写とか、場末の酒場で汚いおじさんが演説しているときのどんよりした空気なんかを「リアルだ」と思っていた。 この感触を手がかりに、常に他の文学作