目を閉じたらこの世界全てが消えたから。
孤独感と、それを埋めるかのように溢れる性欲。
きっと私みたいな人は、沢山いるだろう。
冷たくなった風が体温を奪う。
「また会いたい」
そんな風に言う、もう二度と会わない男。
プライドが高くて見栄っ張りなその男は私にタクシー代、そう言って爽やかに一万円を渡す。
無愛想なタクシー運転手
スマホ画面が光る。
今から会えない?
気づいたら、セックスの為のアプリになったそれを消す。
20時13分。
ギリギリ間に合う。
タクシーで向かったそこはずっと私が行ってみたかった、夜の遊園地だった。
煌びやかで、さっきまでお腹なんて空いてなかったはずなのに屋台の匂いに釣られて緩くなる。
チケットを持つ私はワクワクと、興奮に包まれてさっきまでの孤独感と虚無感が無かったものみたいに思えた。
コートと、長い髪が風で靡く。
近くの売店のビールを買うと、プラスチックカップにビールを手動で注ぐ。
何杯飲んだか、
視界が歪み、イルミネーションが歪んだ視界の中でとても綺麗だった。
閉店間際の遊園地で輝くメリーゴーランドは、私を酔わせた。
夜に不釣り合いな明るい音楽と、機械がギシギシと重なって音を立てる。
大きく目の前に広がったメリーゴーランド。
数人の家族。
子供の黄色い声。
目を閉じると、まるで世界から音も光も何もかもが消えたように思えた。
そこで私の意識は途絶えた。
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