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2020年に映画館で「AKIRA」を観る奇跡

シネコンが本格的に営業を再開した最初の週は、ほとんどのスクリーンが過去のヒット作の上映だった。

郊外のTOHOさんが、ヒット作とは言えない林遣都の過去作を、何故かモリモリ上映ラインナップに入れてくれていて、全国の湖民はもうTOHOさんに足を向けて寝れないです!有難うございます!!!

じゃなくて(笑)

その中でもいちばん嬉しかったのか「AKIRA」。
映画館で観たのなんて、1988年の公開当時以来じゃないだろうか。

2020年のオリンピックと競技場

これは語られ過ぎて、作品未鑑賞の方でもご存知かもしれませんね。
作品舞台は2019年、翌年にオリンピックを控えている(そして開催が危ぶまれている)という。
まさに今じゃん!という、予言のような設定。

しかもAKIRAが保管されていた場所が競技場が、国立競技場。
当時メイン会場になりそうな所と考えたときに、国立競技場だったんだろうけど、その通りメインスタジアムとして改装されたのだから、偶然にしても気持ちは高まってしまう。

作画が手描きのクオリティではない!

30年以上経っても違和感の無い…いや、今だってこんなに綿密に描き込まれているアニメはそこまで多くない。

しかもこの当時、CGなんてものは存在しないわけで、つまり全ての作業をアニメーターの皆さんが一枚一枚手描きでセルを描いて仕上げたもの。
動きが滑らかなのは勿論、走るのも、バイクを飛ばすのも、全てのスピード感が凄い。

バイクなんて、走った後にテールランプの残像が残るんですよ。あんな演出は初めて観ました(当時)めちゃめちゃカッコ良かったな~!
金田がバイクを横滑りさせて止めるシーンが有名ですが、あのタイヤが擦れる煙の角度も、テールランプの揺れと共に計算され尽くしてる。

色彩も素晴らしい。
退廃の匂いがする薄暗いネオ東京。そこに、金田の赤いバイクがめちゃめちゃ映える。映えるけど浮かない。ここが素晴らしい。

AKIRAを封じ込めている球体の鉄っぽい質感もとても好き。
あれが浮き上がってくるところも気持ちがうわーって持って行かれる。

そして鉄雄、クライマックスの全てを飲み込み飲み込まれていくシーンの絶妙な動きと変わっていく色合い。
画面いっぱいに映し出されるあの複合体の色はとても重要。
あれが毒々しい色使いだったら、逆に美しすぎたら、切なさも恐怖も、動揺そのものが全然違うものになってしまっていたと思う。

キャラクターの口の動きと声優さんの声を合わせる為に、声優さんの芝居に合わせて作画してるのも、相当珍しかったんではないでしょうか。
少なくとも私は、そんなアニメを観たのは「AKIRA」が初めてだった。

だから15万枚の作画が描かれたと聞いた時は、納得したと同時に眩暈がしました。そりゃ3年かかりますよ。10億円かかりますよ。

音楽が唯一無二

テーマソングも有名ですよね。
もうあの曲を聴いただけで、体中から熱があふれだすような謎の昂揚感に包まれる。

あの独特の音の響き、最初に聴いた時は音楽というよりは、どっかの民族の儀式でも始まるんか?!って印象でした。
でもこれが「AKIRA」の世界観、ネオ東京にめちゃめちゃ効いてくる。

劇伴と映像がここまで一体化し、高め合っている映像作品はなかなか無いし、それを30年以上前に完成させてるんだからもう意味が分からない(褒めてます!)

最後はスタンディングオベーション

こんな凄いものを、30年以上前に作ろうとしていた大友克洋は頭がおかしいし(めちゃめちゃリスペクトしてます!!)それを形にした各部のクリエイターの皆さんの労力は、心身ともに壮絶な現場だったんだろうな…

改めてスクリーンで鑑賞して、手が腫れるまで拍手してスタンディングオベーションしたいし、この作品に関わった皆さん一人一人にハグしたい気持ちでいっぱいです(迷惑なファン)。

4月に発売された4K Blu-ray特装版は、我が家のテレビが4K対応してない上にしょぼいスピーカーしかないので購入を断念したのですが、いつかテレビを買い替えれ観れる日の為に、買っておけば良かったかも!と、今全力で後悔しています。

観たことない人は、観た方がいい。
2020年、このタイムリーな時期に公開された奇跡を目撃して欲しい。
時代が「AKIRA」に追いついた今だからこそ、観えるものがあると思う。

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