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SS置き場

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単発のショートショート。以下のリンクに改稿履歴を残しています。 https://github.com/Fe2O3-neko/ShortShort
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#SF

妖怪の正体─3

妖怪の正体─3

名無しは月を間近で眺めていた。地球周辺と同様に、月の周りもとても賑やかに感じられる。様々は電波が飛び交い、絶えず情報を交換している物質が存在する。ここに、あの妖怪たちのいう「神様」という知性体が存在するのだろうか。
名無しには光学的に物を見る器官がない。かわりにあらゆる量子のやりとりを認識できる。地球にいたあの古い木やキツネも、少量ながら同様の分子を纏っていた。その上位存在というからには、同様の分

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妖怪の正体─2

妖怪の正体─2

月のない夜は星の明かりだけが頼りだが、ケヤキの近くには街灯が設置されていた。真っ白な光が煌々と辺りを照らし、葉や幹にくっきりとした影を作っている。

「こんな明るいところにいたら怖いやつに見つかっちまうかも」

約束どおり新月の夜にやってきたキツネは、落ち着きなくケヤキの影に身を潜めている。連日降り続いていた雨は、さっき空から降ってきた光によって消滅した。今、ケヤキの上空には夏の星空が広がっている

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