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海が大好きな癌末期の患者さんの海を見に行く1泊2日の旅行同行③


今回は旅行前日の最終打ち合わせについて記したいと思います。

最終打ち合わせ

下見を終えたその足でAさん宅に訪問しました。目的は体調の確認と必要物品の確認です。Aさんはベッド上で臥床しておられました。夕方の情報番組を観ておられました。私がAさんに挨拶をしていると横にいる娘さんが「明日連れて行ってくれる人よ、海を観に行ってホテルに泊まるんよ」とAさんに話しかけました。
Aさんはベッドサイドにいる私に手を伸ばして握手をしながら
「嬉しいのぉ、よろしくお願いします」と言われました。握手するその手は大きく力強かったです。
私は「この力強さなら1泊2日いける、いや連れて行ってあげたい」と直感で思いました。
奥さんが
『毎日、夕方のテレビの情報番組を観ながら
「出かけてみたい、コレが食べてみたい」
とよく言うんよ』と教えて下さいました。
明日は大好きな海を見に行けるからご機嫌のようで笑顔が見られました。

物品確認

まず第一に確認したのは訪問診療医師の紹介状です。万が一、旅行の最中に体調が変わった時に使うために医師が記入し奥さんに渡すことになっていました。
「コレですよね」と奥さんが言いながら私に手渡してきました。紹介状と書かれた封筒を手に取り確認しました。封がしてあるため開けて中身を確認してすることはできませんでしたが、内容は先に記したMCSで後から確認しました。
他には内服薬や携帯酸素、酸素残量、オムツなど確認しました。
必要物品チェックリストも含めた旅行の行程表を作成していましたので、その用紙を使いながら物品チェックしてもらうように手渡しました。
行程表を作成した理由は、複数人が行動を共にする時には誰が見ても一目瞭然の表があったほうが便利だからです。
私は家族旅行の時にも行程表を作成したので抵抗無く作成しました。特に出発時間や到着時間などタイムスケジュールは大切です。今回は癌末期のAさんなので体調不良になることも前提に余裕をもったスケジュールとしました。
スケジュールも物品も奥さん1人では不安でしたが、娘さんもサポートして下さるので複数人で確認出来て安心感は高いです。

夕飯にイカの刺身!?

 奥さんと娘さんと一緒に旅行の行程を確認していると奥さんが「弁当だけじゃ寂しいわね、せっかく行くならお父さんが食べたいモノを食べさせてあげたいんだけど」「夜中にイカの刺身が食べたいと言う時があって、困ったんよ。夜中にイカの刺身なんてどこにもないよねぇ」「あちこち手分けして探し回ってみたけどどこにも置いて無かったんよ」と言われました。
私は奥さんとの事前の電話打ち合わせで刺身の話しは聞き取っていました。そして、Aさんは若い頃からよく食べる、食べるのが好きな方だったとのことでした。
ちなみにお酒は飲まず煙草も吸わない人でした。
 私は海が見えるホテルに宿泊することもあり、海の幸を食べるのもいいなと思いました。まして癌末期には食欲は衰えがちです。食べたいものがあることは良いことなので、私は「どうにかイカの刺身を食べさせてあげたい」と思いました。
もともとホテルの夕飯はお部屋で食べる弁当にしていました。理由はAさんがホテルのレストランに食べに行けるかどうか分からなかったからです。ご自宅のように部屋のベッドで食べるほうが現実的でしょう。ホテルの夕飯にはホテルの弁当が2種類用意してありました。1つは肉メイン1つはカキフライメインでした。どちらも刺身はついていません。
そこで昨日、私はホテルに刺身が準備出来ないかと電話で確認してみました。返答は生物は提供していない、ルームサービスも休止中だとのことでした。
そのことを奥さんと娘さんに伝えてみました。しかし奥さんは諦めきれない様子「どこかで買って持ち込むしかないわねぇ」と言われました。
そこで私は昨日ネットで調べていたお店を紹介しました。それはホテルの近くの宇品あり、魚屋さんがやってる惣菜屋さんでネットで評判のお店でした。グランドプリンスホテルからは車で10分くらいの場所にあります。奥さんは「良さそうならそこに注文出来ないかな?」と言われました。早速私は電話で確認しました。結果、イカの刺身を中心にした刺身の盛り合わせを注文することが出来ました。(これは旅行前日の夕方の話しで、とにかく急な話しです。)
 Aさんは食欲はありますが、食べる量は少ないです。しかし人生の終盤に食べたい物があったなら一口でも食べさせてあげたい。待望の家族旅行に行くなら尚更、Aさんに多少の贅沢はさせてあげたいのではないでしょうか。
そんな奥さんの気持ちもよく理解できました。
ということで夕飯には大好きなイカの刺身が準備されることになりました。

私はAさんと握手をしながら、明日の訪問を約束してAさん宅をあとにしました。


以上が旅行前日の打ち合わせです。
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