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1028円のご褒美。

強制プロポーズと両家顔合わせを無事に終えた夜
我々は子持ちシシャモを焼いて、日本酒で乾杯した。


二人の新しいお家には魚焼きグリルがある。
魚好きのタミオ君に食べさせたくて、シシャモを買ってあった。

しかしシシャモはグリルよりオーブンより、フライパンで焼くのが一番美味しいらしい。魚焼きグリルデビューもしたかったけど美味しい方がいい。あと何より始末がいい。クッキングシートis最高。


お父様の誕生日祝いも兼ねて買ったケーキをみんなで食べたから、我々はお腹が空いていなかった。

それでも解散したのは17時半。本来なら夜ご飯の準備を始める時間だし、【明日は二人とも仕事】という事実だけで 私は本能的にいろんなことを急いでしまう。早く寝られるように逆算して、お腹も空いていないのにご飯を炊いてタミオ君に止められた。

ご飯はいいじゃない、炊けても食べなきゃいいんだから。

フライパンで焼いた子持ちシシャモを肴に、日本酒をちょっとずつ入れた。
タミオ君はこたつでシシャモを齧りながら
私は夜ご飯の焼うどんを作りながらフルーティーな日本酒をちびちびやる。キッチンドリンカーというやつじゃん、かっこいいな(自分)。


そしてもう、分かっちゃいたけど、タミオ君は寝た。

シシャモを2匹だけ食べて、寝た。
少量とは言え飲んだ日本酒のおかげで深く深く寝ていて、再生されていた海外の映画を私に止められても気付かないぐらい寝た。

明日の仕事に支障がないギリギリのタイミングまで待ってみたけど起きないので、先にご飯を食べた。このタイミングで私は母にお礼の連絡をしている。

遅く帰ってきても一緒に食べていたご飯を、初めて別々に食べた。すぐ傍で深い眠りに落ちているタミオ君に作った焼うどんは、自分の分をお弁当に入れて、私は炊いたご飯と残り物の食べなきゃいけないおかずを制覇した。

おかずを捨てなくて済んだことに満足して、一緒にご飯を食べられないことには大してショックを受けなかったりして。私も今度はシシャモを肴にして、手の平サイズの湯飲みに日本酒をもう一杯注いだりした。


私がご飯を食べ終わるころ、タミオ君は目覚めた。
あっためなおした焼うどんを美味しそうに食べた。
タミオ君が食べている間に、自分の食べたお皿と台所を片付ける。後から聞いたけどタミオくんも焼うどんとともに日本酒を一杯おかわりしたらしい。

言ってよ~
ご飯も別々だったんだから呼んでくれたら一緒に飲んだのに~
ってなった。

一緒にお風呂に入る約束をしてお湯を張ったけど
ちょうどその時に放送されていた番組がなかなか面白くて一緒に見ていたら、いつもは寝る時間の22時になってしまった。

私は出張も控えていて健康維持に必死なので、番組の途中で先にお風呂に入る。すぐに追いかけてきてもらう予定だったのに、洗い終わってあったまって、もう熱くて我慢できなくなってもタミオ君は来なかったので単独でお風呂を出た。

すれ違いレベルでタミオ君がお風呂に入ってきたけど、もうあったまり過ぎて一緒には入れなかったので 断念。


せっかく二人ともお休みの貴重な夜なのに、ご飯も晩酌もお風呂も別々。


タミオ君が食べ終わったお皿は、洗いやすいように水に浸かっていた。ありがたかったけど【なんだ洗ってくれたわけじゃなかったか~】なんて思いながら洗った。

お皿を洗うことぐらい全然いいんだけどさ
やってないならお風呂間に合うように来てくれたら一緒に入れたのに~
ってなった。



別々ではあったけど
二人ともおなかいっぱいになって、あったまって、一緒に布団に入った。


それぞれが布団の中で携帯をイジッていた。
『何見てるの?』と聞かれたので、見ていた画面を見せた。

私が見ていたのはカバン。
時々使っている海外の安いサイトで たまたま送料無料キャンペーンをやっていたので、ちょっとだけキレイ目コーデで使えるようなのを探していた。

今まで唯一持っていたキレイ目なカバンは、かつて貢がれた数少ないメーカーものだったので先日買取アプリの箱に詰め込んでしまってなくなった。大した金額にもならなかったけど、良い思い出もなかったので手放した。

そして私は1028円のバッグを手に入れた。


『御子ちゃんは大事に物を使うんだから、安物じゃなくて良いものを買って長く使ったらいいよ。』
と言って、タミオ君もその場で一緒にカバンを探してくれたけど

『安けりゃ気に入ったのをいくつか手に入れて気分で変えることもできるし、勿体ないから大丈夫だよ。』
なんて言いながら、結局1つしかゲットしなかったけど。安物でも大事に使えば長持ちするし充分だ。

色や形はタミオ君にも相談しながら選んだけど
良いモノを打診してくれたことと、一緒に探してくれたことに礼を述べて、一緒に眠りについた。


***


翌朝、いつものようにお互いが準備して
私より早く出動するタミオ君を送り出すとき

『なんか寂しい。寂しいな。』と口走りながら、名残惜しそうに家を出た。


こっちのセリフだぞ、と言いたい気持ちもあったけど
私が寂しかったのは前日の夜で
朝はちっとも寂しくなかったので
(でも結構そういうもんだよね、夜は魔物だし朝の力すごい。)

寂しいか、大丈夫大丈夫。と宥めながら見送った。

なぜタミオ君が寂しがっているのかわからないけれど、どうも確認したところ帰ってきてからも寂しさが継続しているようで 昨晩は多めに寄り添った。
もしかすると私が出張を控えているからだろうか。

気にせず行ってこい、と口では言ってくれているけれど。

前日、送料無料のタイムセールに飛び込むためにいつもより夜更かしになってしまったので 何度となく眠気と戦った。今日は早寝しようと約束していたけれど、お互いの寂しさを埋めるかのように交わるなどした。

早寝も大切だけど、相手と向き合う時間も大切。

時間を有効に使えるように計算して動くことも大事だけど、たまにはゆっくり時間を気にせず一緒に寛いだり寄り添ったりすることも忘れたくない。


出張に行くことだけじゃなくて
私が毎日せかせか効率重視で動いてしまうのも、寂しさの原因かもな。

そうじゃなきゃ、お腹が空く時間にご飯もできないし
洗濯物も洗い物も たまってしまうし
夜更かしが続けば体調だって崩してしまう。


自分の健康も大事だけど、タミオ君にも元気で健康的に過ごしてもらいたい。


バランスが難しいな。

仕事もしながらお母さんしてる人ってどうやって生活してるんだろう、と改めて思うな。

子供が大きくなってたり旦那様が協力的だったりすれば負担も減るケースだってあるかもしれないけど

仕事もして、家事もして、子育てもして、夫婦関係も良好に保つなんて、体も使うけど頭もどんだけ使ってるんだろう。

私は薬で完全に生理を止めてるから、女体の周期に伴う身体的・精神的な波もほとんどないんだけれど
健康な女性なら、それに加えて月一で生理は来るし、場合によっては身体もしんどかったり心もしんどかったりするわけで、そんな中で今日のご飯は何を食べようとか、天気が悪いから洗濯物が乾かないとか、明日は何のゴミの日だとか、考えながら仕事もするとか。

どうにかなっちゃうよね。
週一でいいから丸一日寝かせてあげてほしい。


何の話。


とりあえずそういうことを考え出すと
自分がいかに恵まれていて、落ち着いていて、贅沢で平和な暮らしをしているのかがよくわかる。

コタツで寝ているタミオ君を見ながら 洗い物をする自分がそれでも幸せを感じられるのも、ありがたいことだな。


でも頑張ってる自分へのご褒美も たまにはいいかな、と思って
1028円のカバンをポチりました。

いつもボロボロのリュックを背負っている。
もう10年も使ってる、リサイクルショップで買った変な柄のリュック。
派手なリュックは暗い夜道も目立つから、仕事帰りも安全なんだ。最高だろ。


でもちょっとお出かけする時とか
タミオ君の実家にお邪魔する時なんかに背負っていける奴じゃない(今は妹に借りてる)から、普通に使える無地のショルダーバッグが欲しかった。


イイのじゃなくてもいいから、ちょっとキレイに見えるやつ。
人と違う方が本当は好きだけど、年相応の大人に見えて欲しい時も、ある。


不在配達にならないようにまた頑張ります。

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