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子供を産まない選択

葛藤をかっ飛ばして、恋人と大切な話をしました。

きっかけは意外な出来事で。

先日恋人タミオ君がお休みだった日、パン屋を経営している私の友人がお誕生日だったので一緒にお店にお邪魔した。

その友人は私の中で親しいレベルトップクラスの同級生。お店を起ち上げた時から 縁の下の力持ちとして一緒に奮闘してきた。(自画自賛)

タミオ君も時々そのお店のパンを食べていたので、ずっと行きたいと言ってくれていた。念願の初同伴襲来。


そこでたまたま遭遇したのが別の同級生ユキちゃん(仮名)

ユキちゃんとは中学校卒業以来一度も会っていなかったが、なぜか年齢関係なく私の友人と共通の知り合いだったりママ友だったりしてお互いの存在は人生に何度となく登場しているという不思議な子だった。

ユキちゃんとは苗字が一緒で、中学の頃は名前がプリントされていた体操服を忘れてはユキちゃんに借りに行くという程度の仲だった。
同じクラスになったこともないし(だから貸してもらえたんだけど)、当時体育の先生は厳しくて有名な怖いマダムで、初対面にも関わらず快く体操服を貸してくれた優しい人、それがユキちゃん。

ユキちゃんは大きかったけど、私は小さくてガリガリだったので、貸してあげることはできなかった。私が借りた体操服はあからさまにブカブカだったので、恐怖のマダム先生にはバレてたかもしれない。



そんなユキちゃんのことは、共通の知り合いを通してお互いの近況だけを知るという日々が数年続いていたが、ついにパン屋で遭遇した。奇しくも初めて恋人タミオ君を連行した日に。

中学の頃はとても頭が良くて真面目でおとなしいイメージだったユキちゃんは、とてもよく喋った。まるで私のようだった。

パン屋の友人が「アンタ達は絶対に合うと思ってたよ」と言うのがずっと信じられなかったけど、結果的に納得するしかないぐらい ほんの数分の時間がとても楽しく感じられた。


ユキちゃんは、これまで会わなかった約20年間
とんでもなく波乱万丈だったそうだ。
何一つ教えてもらえなかったけど。

『結婚する気があるなら1日でも早い方がいい。』
『結婚指輪に給料3か月分なんて必要ない、その分生活費に回せ。』

と、初対面のタミオ君に説得していた。


タミオ君は もともとの口数少ないキャラクターを全力で発揮し、パン屋の入り口に棒立ちとなってニコニコ笑って聞いていた。



後日、ユキちゃんから『テンションが上がりすぎてしまったが、あの二人はあの後私のせいでケンカになったりしてないか。』と、パン屋に確認があったそうだが大丈夫だ。

結論から言うと




ユキちゃんも1日でも早い方がいいって言ってたし、結婚しようか。

という話になった。



『おい待て、またそういう勢いで口走るのよくないぞ。』


年頃のオナゴに対して、軽はずみに結婚を仄めかす発言をする行為は法律で罰した方がいい。



そしてチャンスとばかりに切り出した。
その前に私は話したいことがある。


次の診察で薬を変えてもらおうと思うんだけど、どう思う?

御子


薬を変えてもらうということは
子供を作らないと決めて完全に生理を止めること。

私としては割と意を決して聞いたものの、彼の反応はアッサリしたもんだった。

付き合う時に、子供ができないかもしれないことは教えてもらってたから最初からずっと受け入れてきたし、全然そのつもりでいたから大丈夫だよ。

タミオ


次の薬を飲み始めるまでは猶予があるし、今すぐ答えなくてもいいよ。

私は自分のせいでタミオ君から 親になる という選択肢を奪ってしまうことに責任を感じているし、タミオ君の家族をガッカリさせてしまうかもしれないことをとても申し訳なく思ってる。
同級生の妊娠報告もあって、頑張れば可能性はあるかもしれないのに頑張らないって決めることが正しいのかどうかわからなくて、早く伝えたい気持ちと 言ってしまえば絶対そう言ってくれるだろうとわかってたからこそ、未来の幅を狭めてしまうのが辛くて言えなかった。

御子


本当に欲しくて頑張るならいいけど、頑張らないのが申し訳ないと思って頑張るのは違うよ。
御子ちゃんが思ってるのとは逆で、御子ちゃんのおかげで未来の道が開けたし、広がったと思ってる。
御子ちゃんと出会うまでは ずっと一人でいると思ってたし、御子ちゃんという存在ができたことがもう最大の幸せなんだから罪悪感なんて気にしなくていい。
二人で一緒にできることたくさんしよう。
おいしいもの食べたり、旅行したりすればいいし、自転車デートもいいね!
どうしても子育てがしたくなったら、養子縁組を考えてもいいじゃん。
まずは早く一緒に住む家を探そう。俺はどんな部屋でもいいよ。御子ちゃんの住みたい場所に一緒に行く。俺は御子ちゃんの尻に敷かれたい。
そのタイミングで籍入れちゃえばいいんじゃない?結婚、するよね?

タミオ


する。



嗚呼、なんたる愛情。

え、でも、今のプロポーズ?


ちょっとツッコミどころは多々あるものの、ニコニコ笑って私を抱きしめたり頭を撫でたりしながらそんなことを言うタミオ君に

子供を作らないと決めた場合の利点を全力でプレゼンしました。


薬を止めたことによる予測される不調(心の乱れ,生理周期の乱れ,体の不調,お肌の不調)により、私自身に降りかかるストレスも然り
生理が再開することにより 出血多量や心身の不具合が起こるため、タミオ様にも余計な迷惑や心配をかけるリスクが発生します。
出血については、約2年間服用していた低用量ピルのおかげで病状が改善している可能性もあるので、その再発具合は未知数ですが
そのような不調がないことで、心身共に穏やかでいられます。

そして何より、いつでもできます(エロイこと)

出血最中はもちろん、生理前の精神的拒否エリアも含めると、月に半分は対応不可能になる可能性があり、これまでのことを考慮するとその半分がいつ訪れるかわからないという予測困難なサイクルが始まります。

生理が来ないって、最高かもしれない。

子育てや不妊治療にかかるお金に困るより、お互いに仕事が続けられて、心身共に余裕をもって暮らした方が、穏やかに平和に優しく過ごせると思うんだ私は。全力で。

御子


既に【子供を持たない選択】に賛成してくれているタミオ君に対してのプレゼンにしては熱が入りすぎました。


若干面白おかしくも書き殴っているが
私は例の如く泣きながら話しているし、タミオ君も貰い泣きしてくれていた。




子供ができる喜びとか、自分自身はもちろん周りの家族や友人のみんなも感じてくれるであろう幸せとか、子育ての楽しみだったり、愛する人の子孫を愛でる気持ちとか
この決断を下したことによって手放さなきゃいけないことも、もちろんたくさんあると思っている。

ただ、自分たちが幸せだと感じられる選択ってのは、必ずしも一般論と同じわけではなくて

ずっと望んでいた、本当は最初から叶っていたのかもしれないけど私が勝手に違うかもしれないと不安になっていた、【ゆっくりでもいいから同じ方向に進みたい】という願いが ちゃんと手の中に納まった気がした。



ご両親に挨拶出来る時に、どう伝えたらいいかわからないんだけど
私の中では『二人でそう決めましたのでよろしくお願いします』というより、『そう考えてますがいいですか』という気持ち。
ダメです って言われてしまうことも想像はしてるけど、それはそれで仕方ないと思ってる。

御子

両親は、ガッカリはするかもしれんけど
きっと 俺がそれでいいと思ってるならいいよ って言うと思う。
会う前に、俺から少し話しておくね。

タミオ


年度末で休みが合わせられないこともあって、おうちにお邪魔する予定は現実的に計画できないままだけど

きっと私の中ではそこが一番のネックで
タミオ君本人の気持ちよりも気にしていることと言っても過言ではない。


タミオ君本人の気持ちですら、こんなにちゃんと伝わっていて心から幸せを感じられているにも関わらず、罪悪感から抜け出せずにいるのに

もしタミオ君のご家族が、我々の決断を快く受け入れてくれたとしても、私は素直にそれを喜んで受け止められるのか不安だ。



今、世の中には ≪DINKs≫ という言葉があるらしい。

Double Income(夫婦2人の収入)、No Kids(子どもがいない)の頭文字を取った言葉「DINKs(ディンクス)」。子どもを作らない選択をした共働きの夫婦のこと
https://diamond.jp/articles/-/261176

Diamond Online


二人で決めたことだとは言え
私自身が望んで導いた結果である以上、申し訳ない気持ちは一生消えないだろうな。

ご両親にプレゼンはできないけど(主に後半)
二人でも幸せに暮らせます って、言いたい。







お互いの気持ちがちゃんと繋がっていることを実感した翌朝

目覚めたタミオ君は布団の中で私をぎゅーーーーーっと抱きしめながら言った。


今が一番幸せ。
こうして今一緒にいられることが、何よりも幸せ
出会えて良かった。ありがとう御子ちゃん。

タミオ


寝言か戯言か本気かわからないぐらいの、その言葉に
私はまた朝から枕を濡らしながら聞いた。


このままでいいんだよね?

御子

『いいよ』と笑って頷くタミオ君に

わかった。
ありがとう。

これからは自信持って 尻に敷くね。

御子

って伝えたら、笑ってた。



出逢えて良かったな、私も。




子供ができないことよりも
それを両親に話して反対意見が出ることよりも

新しい薬が私の身体に合うのかどうか
別の副作用がないのかどうかが心配だと言ってくれる恋人に

今後も変わらず、更なる愛を捧げて
大事にしたいと思います。

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